「お前達は本当に理不尽だな」
スケルトンが闘技場の隅で身を縮こませながら骨を鳴らす。その横ではルシファーが魔王の『玩具』になっていて、魔王が満足するまでは放置しておくのが賢明そうだった。
魔王がルシファーを絞めてるその横で、ルシファーとはまた違う肉塊が徐々にその姿を人型に近付けつつある。
その肉塊へと近付き軽くポーションを掛けてやれば人型への再生速度が増し、肉塊がサタンだとわかる程度にまで再生したところでサタンがいきなり闇属性の魔法を放ってきた。
「何すんだ」
「久しいな人間。また強くなったらしい」
「せめて完全に再生してから仕掛けて来いよ」
「この程度の捌けない奴は俺からすれば死んで良いゴミだ。お前はゴミではなかった。それで良いではないか」
「お前達は本当に理不尽だな」
「人界の猿共からすればお前も十分理不尽な存在だと思うぞ人間」
「俺はまだまだだ」
「ほーう」
放たれた魔法を手に魔力を纏わせて掴み、なんとなくスケルトンの方へと投げておく。
前々からこの技術事態は出来たが、サタン達規模の魔法を掴むなんて芸当はこれまで出来なかった。今回出来たのはスケルトンがさっき散々見せてくれたからだ。
本当にあのスケルトンは近接戦闘に於ける学びの尽きない相手だ、一通りやって余裕が有ればまた相手してもらおう。
「ふむ。して、今回はどのような用件でここを訪れたのだ人間?」
「あぁそれな。実は久し振りにサタンやルシファー達に揉んでもらおうと思ってな」
「ほぅ!その片腕で?」
「この片腕でだ。傲慢に思うかもしれないが、もはや人界にはほとんど敵が居ない」
「いや、実際に手合わせはしていないがその認識は客観的事実だろうさ。少なくとも両腕だった時よりもお前の闘気は俺達に近い物になっている。腑抜けた人界の獣共相手ではもはや物足りないだろうさ」
「……驚いた。そこは素直に評価してくれるんだな」
「当たり前だろう。お前は直向きに己を高め続けている。最後に会った時はまだまだ鼻垂れ小僧といった程度だったが、この短期間にお前はこちらの領域に爪先だけとはいえ踏み込んだ。
強者にはそれ相応の敬意は払う。あそこで魔王に絞められてる馬鹿よりも礼儀も知っている。ならば相応の態度で接するのが俺の流儀だ」
「……ホント、世の中認めることはしっかり認める。サタンみたいな奴等が大勢居れば良いのにな」
「そう怒るな。お前の怒りは確かに美味だがそう簡単に怒れば質が落ちる。怒るのならもっとその怒りを練り高めよ」
「覚えていたらな」
「ハハッ、こやつめ」




