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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第六章:選択
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▼side Another act5:レポート


 『天界歴30000年 主神たる我々の王、その王や我々を含めた全ての存在が信頼と敬愛するお姉様が双子を出産される。

 御子は先に生まれた方を上、後に生まれた方を下とした。

 これを書く私としてはお姉様の御子というのは筆舌に尽くしがたい存在である。況してやお姉様や主神たる我々の王以外手も足も出なかった何の血筋も関係無い特別な力が有る訳でも無いただの魔界の男風情の種から成った御子というのが何よりも苛立ちを加速させる。


 天界歴30497年 みこさまが、おねえさまが、かわいとうとすぎて、しあわせでしねる。


 天界歴32014年 御子様方に個性という物が明確に生まれ始めた。

 まず兄で在らせられる方は憎き魔界の男風情の血を色濃く受け継いだらしく、その風貌や強さは幼いながらもあの男を思わせるほど強力で、それを無闇矢鱈に振り翳されたら主神たる我々の王とお姉様以外に止められたり嗜められる者は居ないだろう。

 しかしこの御子様は気性がとても穏やかで、何よりとても賢い。賢いなどと私ごときが口にするのは本当に烏滸がましい話だが、それ以上にこの方を表す言葉が見つからないため他に言いようが無い。

 その見た目と実力に似合わず、御子様は主神たる我々の王を初めとした全ての天界の民の権能である創造と破壊の創造の方だけを継承された。

 元々純粋な主神たる我々の王の眷属であれば創造と破壊の両方を生まれ持っている。その為御子様方がいずれ創造と破壊のどちらかか、もしくはその両方を継承されることは無かったため継承事態に問題は全く無かった。

 しかし創造。見た目と実力では兄の御子様は破壊の方を継承されると主神たる我々の王もお姉様も我々も、御子様方を知る我々全天界人が思っていた。だが現実はその気性同様とても平和的なもので、よく創った物を自慢気に紹介なされ、兄の御子様が気に入られれば創った物を賜れる。

 その時の仕草やお顔が眩し過ぎて、何度鼻から忠誠心を溢れさせたのか数えられない天界人は数えきれないほどに居るだろう。

 これを記す私もそうであるし、お姉様ですら目尻が下がり時折目頭と鼻を押さえて天を仰ぐ姿を見るし、主神たる我々の王についても兄の御子様相手ではただの好々爺へと変わる。

 兄の御子様はまさに魔性の存在だ。あの方は本当に危険な存在である為、厳密な監視が必要である。尚監視が必要と考える者は私以外にも数多居ることは必然と言えた。

 兄御子様尊い。


 (この先は固まった血により読める箇所が極端に少ないため詳しい内容を確認することが出来ない。)


 天界歴44006年 おかしい。お姉様がご出産され生まれたのは双子の筈であり兄御子様の他にもう1人居た筈なのだが、誰ももう1人のことを覚えていない。

 兄御子様と以前に私が書き記しているため兄御子様の下に弟御子様か妹御子様が居られる筈なのに、何故か主神たる我々の王やお姉様以外の天界人はその存在を記憶から失くしている。この日誌の私のまるで何かを隠すように溢れ出て内容が読めなくなった日誌もその奇妙さに拍車を掛けている。

 しかし兄御子様が創造であったことと我々のこの状況から推察するに、その弟御子様か妹御子様は破壊の方を色濃く受け継ぎ、そして力の制御を覚える前にその破壊を以て様々な物を破壊為さったのだろう。

 創造も大変難しいが、破壊も取り扱いが大変難しい。

 本来破壊は創造で失敗したことを無かったことにするために生まれた力だ。それ故に破壊は文字通り何でも壊してしまう。この破壊に抗うには魔力や天力で抗うしか無い訳だが、本来であれば兄御子様と双子と考えればまだまだやんちゃ盛り。力の制御が出来ていないとしてもこれほどの規模にはなっていない筈である。となれば、弟御子様か妹御子様も兄御子様と同様に天才であらせられるということだ。

 破壊により破壊されたモノはもう2度とは元には戻らない。例えば剣。これを破壊されれば剣を失うが、創造で破壊された剣を再現出来る。しかしそれは本来の剣とは全くの別物であり、そこに培われた剣が重ねた時というモノと同じモノは存在しない。

 故に我々はこれまでの弟御子様か妹御子様の存在と思い出を取り戻すことが出来ない。しかしそれでも可愛い御子様である。これからの時間を大切にし、これからの時間と思い出を作れれば最高の栄誉である。

 願わくば、そのまま兄御子様とお近付きになりたい。


 天界歴170704年 どうやら長く私は肉体を失っていたらしい。

 主神たる我々の王から語られたことによると禁忌を犯した愚か者が居るらしい。そしてそれは我々がお姉様とお慕いしていたらしい天界人の子供が行ったらしい。

 そのお姉様という者やその子供達をこの日誌を読む限り私自身も痛く可愛がっていたらしいし、我が肉体が失くなっていた理由も恐らくだがそのお姉様とやらの下の子供により破壊されたためだろう。

 何もかもがらしいやだろうなどと曖昧な言葉になってしまうが、実際今の私にはそのお姉様もそのお姉様の子供達のことも知らない。だからこれ以上の表現が出来ない。

 主神たる我々の王の語られたことによると、主神たる我々の王とお姉様とやら以外の全ての天界人はこのお姉様とやらの下の子供によって破壊されたらしい。そしてお姉様とやらは子供の罪の償いと我々他の天界人の肉体の蘇生の為に自ら主神たる我々の王へとその魂を差し出したらしい。

 魂が消失すればその者は完全な死を迎える。つまりもうそのお姉様とやらが我々の前に現れることは無い。

 子供の躾もマトモに出来ない女を慕っていたのかと思うと怖気が走るが、目から溢れる涙を思えば本当にその女のことが私は大好きだったのだろう。

 記憶には無いが、もう1度会って話してみたかった。


 天界歴170710年 なんだあの整った顔立ちの全ての天界人達を魅了している漆黒の男は?そして誰だその男に抱き付き泣いている女は?

 理由はわからないが彼等から目が離せない。何より目から溢れる涙と何故か流れる鼻血が止まらない。奴等はいったい何者だ?


 天界歴170720年 おねえさま、しゅき。みこさま。


 天界歴183880年 お姉様と御子様の破壊力は危険である。そのあまりの破壊力に13160年の記憶が無い。日誌への記録もマトモに出来ていないことから、お姉様と御子様の破壊力により何もかもを駄目にされていたのだろう。

 あの2人は危険だ。厳重で厳正な監視が必要な存在だ。この日誌を書き上げた後、主神たる我々の王へと彼等への監視したい有無を訴状しなければ!!


 天界歴183881年 もうにどと、おねえさまとみこさまにきがいをくわえません。あいがぼうそうしてしまいすみませんでした。


 (以降の内容はお姉様と御子様への愛しか綴られていない)』


 とある天界人の日記より一部抜粋。



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