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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第二章:違和感
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「子持ちか」


 ギルドに入ってまずやったことは、俺以外は依頼を選びに依頼書の貼られている掲示板を見に行くことだった。彼等に請ける依頼を任せたわけだ。


 表向きの冒険者ランクは俺とクソ野郎が1番下でDランク。1番上がチャーラル達上級生のBランク。だから必然的にCランクの依頼を請けるのが本来学園側から指示された内容だ。

 だけどこの1ヶ月で俺達のDランク組の実力が思いの外高かったらしく、この1ヶ月で何回かBランクの依頼を請けて問題無いと判断して、その事を学園側と相談した結果Bランクの依頼を請けることになっていた。


 Bランクを請けても問題無いのは、俺からすれば当然と言えば当然のことだった。

 チャーラル達上級生は日頃からBランクの依頼を請けてるから当然適正ランクだ。俺は俺で毎日死に掛け、休日にはこの世界のBランクやAランクの魔物とも戦っている。クソ野郎にいたっては紛いなりにも総帝だ。この面々でBランク依頼を達成出来るかと問われればちゃんと根拠に基づいた自信を持って出来ると答えることが出来る。


 だけど本当にただのDランクなのは俺だけだったため、俺自ら「依頼は良さそうなものをセンパイ達が選んでください。俺はどんな依頼でも良いんで」と言って彼等に任されることにした。


 そうして1人時間の空いた俺が何をしたかと言うと、いつものようにポーションの納品だった。

 いつも通り納品所の受付に行って、契約通りの数を納品する。そしていつものやり取りをした後、俺は受付の人にとある物を見せる。



 「これは…なんでしょう?」



 通常ポーションというのは明るく薄い黄緑色をしているが、俺が今回見せたのは見るからに体に悪そうな透明で濃い水色をしたポーションに似た液体だった。それを受付の机の上に15本置く。



 「これは試供品だ。実際に使ってみた感想を聞いて、その効果次第では今後はこのポーションも卸したいと思ってる」


 「いえ、ですからこれはなんのポーションなのかとお伺いしています。ハザード様は既に効果の高いポーションを毎日納品してくださっているのでその信用は我々もしていますが、流石に得体の知れない物を急に渡されても困ります」


 「ごもっともだ。そうだなぁ……、ちょっと顔をこっちに寄せてくれないか?今の時点ではあまり大きな声では話したくないんだ」



 受付の人はこちらを訝しみながら顔を寄せて来てくれた。

 だからそんな彼女へ俺は耳打ちする。



 「まだ実験台が自分しか居ないから詳しい効能はわからないが、これは魔力を回復させることが出来るポーションだ」


 「まっ!!??!??ギルドマスターを呼んできますので少々お待ちくださいッ!!!!」



 受付の人はそれだけ言うと15本のポーションを持って奥へと走って行ってしまった。

 半ばこうなるのではないかと考えていたが、魔王が居ては余計に話が進まなそうだったため今のタイミングで話したんだが、それも失敗だったかもしれない。

 ただ渡したい物はギルド側へ渡せたし、俺の目的は達成したため、隣の席の受付の人に依頼が有るからと伝えて班のメンバーの所まで戻った。


 戻ると最初にエンラジーが声を掛けて来た。



 「そちらは終わったんですか?何やら職員の方が慌ただしく奥へと駆けて行くのをお見掛けしましたが……」


 「良いんですよ。確かに話したタイミングは俺にも非が有ったが、そもそも昨日の時点で今日のこれからの予定はギルド側に伝えてた。それを無視して奥へ行ったんだから知ったことじゃない」


 「……何を話したのかは知りませんが、後で色々言われても知りませんよ?」


 「その時は残念だがポーションを卸すのをやめないといけなくなる」


 「……少々お待ちください。職員の方に言伝をお願いしてきます」



 そう言うと急ぎ足で空いてる受付の許へとエンラジーは向かった。

 それを見つつ、チャーラルに何を選んだか確認することにした。



 「これを請けようと思うんだが、ハザード君はどう思う?」



 そう言って見せられたのはBランク依頼のスネークコング3頭の討伐依頼だった。


 スネークコングというのは、胴体が動物のゴリラで尻尾が蛇の体の魔物で、その剛腕から繰り出される怪力と蛇の口から吐き出される毒が厄介な魔物だ。

 通常コイツ等は1匹で居ることが多い。例え同族でも会えば基本どちらかが動けなくなるまで喧嘩をする獰猛な種だ。

 しかしある時期ある期間だけ複数で行動する時が有る。



 「子持ちか。はたまた発情期や産卵期か。またなかなか厄介な依頼を請けたな」



 スネークコングは普段はとても獰猛だが発情期や産卵期に入ると、他の個体への獰猛さは変わらずむしろより過激になるが、番となったオスとメスと生まれるスネークコングの子供同士はそれはもう甘々なカップルを端から見るのと同じぐらい甘く優しい物になる。しかもその関係はどちらかが死ぬまで一生続く。

 そしてその子育ては赤子が1匹でも十分生きていけると親が判断するまで自然界では珍しく手厚く行われる。

 冗談でも理想の夫婦像はスネークコングのような夫婦関係になって、スネークコングのように子供を優しく育てたいと例えられるほどコイツ等は1度群れると情の深い関係を築く種だ。


 そんなスネークコングが複数体見つかるということは、俺が言った通りだろう。

 産卵を終えた家族のスネークコング達ならまだ楽だ。纏めて狩れば良いだけの話だからな。でももしまだ番を見つけてない発情期の個体達ばかりだとすれば?それも最悪オスだけだったりメスだけだったりすれば?探し出すのが物凄く面倒になる。最悪数日は掛かるだろう。


 そんなことを考えている間にエンラジーが戻って来る。そして二言三言話し、俺達はギルドを出た。


 1ヶ月前のあの日から、このメンバーで居る時にはよっぽどのことが無い限り口を開こうとしないクソ野郎と共に。



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