▼side Another act2:イチャイチャⅢ
「それはそうと、本当に良いの?妹ちゃんのこと」
照れを誤魔化すように話題転換。
魔王は何事も無かったように話す。
「天界的にもやっちゃ駄目なことをやったし、人界の存亡に関わる存在から奪ってる訳だからね、俺が手を出さなくても天界の奴等が見つけ次第存在ごと消すさ」
「それは……、良いの、だけれども……。貴方の気持ちはどうなの?」
「何も思わないね。そもそも物心ついた頃から敵視されてたし、俺は俺で、最初は嗜める為に言葉で尽くして行動で尽くしてみたいにしてたけど、それも意味が無いとわかってからは動かなくなるまで甚振ったりもしたからね。
愚妹に関しては本当にどうでも良いね。
幸せになるのも滅びるのもアレ次第だよ」
「そう……」
魔王の言葉に寂しさを覚えつつ、イギライアは視界の片方を見詰める。
そこではサースがちょうどギルドで報告を終え、大山のダンジョンに転移した直後だった。
「彼の腕は治してあげないの?」
「俺が関わった修行で彼がしたら治すけど、俺とは関係無く動いて負った怪我は一切治さないって約束なんだよ。
暗黙の了解の方が正しいけど。
だから彼は今、時間が有る時は此所に来てるみたいだね」
「彼、不思議な存在ね。在り方としては私に近いのかしら」
「人間は良いことをすることを徳を積むって言うらしいんだけど、その徳を積み続けた先に何かを極めた者を仙人というらしいよ。
これに則って言えば彼は仙獣だね。『生きる』ということを極めた獣。
生きるも死もって突き詰めれば1つに行き着く。だから彼は人界の存在なのに自然と天界の奴等と同じことが出来るし、だから彼の知識を身に付ければ確かにサー君の腕は治るだろうね。だから彼の行動は間違ってない」
「……話し戻っちゃうけど、それも世界が?」
「だと思うよ。だから歪められた魔力量以外はサー君が望めば何でも彼の思うようになるんだ」
「……傲らないのは貴方が居るからかしら」
「それも、世界がってことかもね」
「何でも有りね」
「それが『世界が産み出した英雄』ってことだよ」
「……つまり私達は、彼という英雄の描く英雄譚を特等席で視ている傍観者ってところかしら」
「1番美味しい場所だよね」
「そうね」
それから2人はサースの話題でまたイチャイチャし始めた。
その中でイギライアから「私ばかりじゃなくて彼の相手もしてあげて。そうした方が私も更に楽しめそうだから」と言われ、サースが廃城へと移動しようとするのを察知するまでイチャイチャし続けた。




