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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第六章:選択
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▼side Another act1:ウィリアム・パリスの選択Ⅸ


 時間が経ち、船を漕ぎながら起きていたウィリアムの肩に手が置かれた。


 驚きウィリアムが振り向くと、そこにはガラギスの姿が在った。



 「お疲れ」



 言ってガラギスはウィリアムの向かいに座り、魔法で土の椅子を作ってそこへ腰掛けた。



 「まだ時間では無い筈だが?」


 「まぁ、お前と2人で話したいことが有ってな」



 ガラギスの言葉に怪訝な表情を浮かべるウィリアム。

 眉間へ皺が寄るが、それ以上の行動や言葉が出て来ない。

 そしてこういう時言葉に詰まるか頓珍漢なことを言い出すことをガラギスは経験上知っていたため、ウィリアムの返答を待たずに続きを話し始めた。



 「俺達の班の代表はサースで今は俺が仮の纏め役だからさ、今回の実習についてパリス目線の話を聞いておきたいと思ってな。

 もちろん俺とお前の交代の時間までで良いから少し付き合ってくれよ」



 眉間へと更に皺が寄ったが、それ以上を考える頭がウィリアムには無い。

 その事を自覚し、その事に苛立ちを覚えるウィリアムだったが、話が進まないと偉そうに「続けろ」とだけ返した。



 「依頼の内容については、まぁ、今はいいか。

 それより聞きたいのは、お前の対人経験というか対人能力についていくつか聞きたいと思ったんだよ」



 ガラギスの切り出しにウィリアムは一気に不機嫌になった。

 ウィリアム的にはいきなり「お前はコミニュケーション能力の無いクソ野郎」だと言われた気分になったからだ。


 もちろんそんなことは一言も言われてないし、ガラギスの口調はとても穏やかだった。

 しかし頭に血が昇ったウィリアムにそんなことは関係無い。

 だからウィリアムはそのまま感情のままに叫んでガラギスへ文句を言おうとした。


 これまでであれば今頃叫んでいただろう。

 だがウィリアムはそこで空の色と目の前の焚き火の存在を思い出し、「クソッ」と感情を吐き出しながら薪用の枝を力任せに折って焚き火へと投げ込んだ。



 「そう、パリスのその成長についても聞きたいと思ったんだ。

 自覚してるかは知らないけど、少なくともこれまでだったら今のやり取りだけでパリスは怒鳴っていたよな?なのに今は我慢出来た。


 それがなんでなのか気になってさ」



 ガラギスの続く言葉に再び頭に血が昇る。しかしそれも、今度は近くに置いていた杖でガラギスの足を叩くことで発散し、怒鳴るのを我慢した。


 そしてこのまま話さなければずっと繰り返し聞かれるとでも思ったのか、徐に理由は話し始める。



 「…………我が家の家訓に、『夜に森の中か森の近くに居る時は緊急事態以外で大きな音を立てるな』ってのが有るんだ」


 「随分具体的だな。それはいったいどういう意味で出来た家訓なんだ?」


 「……知らん。だが家訓を守らず嫌な想いをしたことは何度も有るが、家訓を守った時に嫌な想いはしたことがない。むしろ良いことの方が多かった。だからキサマを感情のままに罵りたいのを我慢しているんだよ」


 「家訓が有ったことにも驚きだけど、それをしっかり守ってるってのも驚きだな。


 ホント、こうして話してみないとわからないことって色々有るよな……」



 そう溢すとガラギスは両腕で体を支え傾き、体を満点の星空へと向けた。


 その様子に流石にバカにしているわけではないと判断出来たウィリアムは、逆にこう質問した。



 「いきなりなんだ。何故急にこんなことを聞いてきた」



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