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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第二章:違和感
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激動の一ヶ月


 時はあっという間に過ぎ、行事当日。

 この1ヶ月の間に色々な変化が有った。



 1つは魔王との修行。当然上級生達との事が有るため俺の修行時間が減ると伝えると、班での訓練のあとに何故か魔界へと連れて行かれてそこで永遠と戦わされた。

 それも魔王以外の魔族や魔界の魔物達とだ。

 その戦闘内容は、もはや戦闘ではなく蹂躙と呼ぶに相応しいほど一方的なものだった。


 具体例を1つ挙げよう。元々人界に出現する魔界の魔物の危険度というギルドランクは、魔界の魔物の中で1番弱いと呼ばれているキラーホーンラビットという額に鋭い角が生えて目も鋭く肉食の魔物が居る。コイツのランクがSだ。

 わかるだろうか。最低レベルが人界でのSランクだ。当然俺は為す術無く体に何回もいくつも穴が空いた。

 本当にあの角が俺の体を貫き、何度も肺や腹や腕や脚に穴が空いた。

 キラーホーンラビットは基本的に首や心臓目掛けて跳んで来る。その脚力はドラゴンの鱗すら容易く破壊するほどの力を持っていて、そんな脚から繰り出される突進は人族の体など簡単に貫通してしまう。

 なんとか体を捻ったり、限界レベルまで身体強化をした状態で急所を避けることで即死は免れたが、その度に体に穴が空き、動けなくなったところでキラーホーンラビットが処理されて回復される。

 これを何度も繰り返した。


 そうやって精も根も尽きたあとに待っていたのは、魔王の配下の魔族達との模擬戦という名の虐殺だった。

 当然実際には殺されてはいない。本当に手を加えなければ確実に死ぬって状態にまで追い込まれて、その状態で本当に死ぬ直前に回復される。そして回復したらまた戦う。これを何度も繰り返した。


 地獄だった。今までの魔王との1対1の修行が物凄く生温いと言えるほど何度も死に掛けた。

 今までの修行を仮に本当に死ぬ1歩手前程度だったとしよう。今回のこれは心臓を抜かれて、血が体から抜けていくのを感じながら死ぬ状態とほぼ変わらなかった。というか、模擬戦では本当に何度か心臓に穴を空けられた。なんなら抜き取られた。そこで本来であれば確実に死ぬ訳だが、死ぬまでには猶予が有る。この猶予の間に魔王が俺を蘇生してまた本当に死ぬ直前まで追い込まれるってのを繰り返した。


 もう1度言おう。本当に地獄だった。魔王の治療が遅ければ、本当に俺は死んでいたんだ。アレを地獄と言わずなんと言うってぐらい地獄だった。


 ただその甲斐有って、命に届く攻撃とそうじゃない攻撃ってヤツが判断出来るようになった。それに、そこまで殺られても俺の心が折れなかったことで魔王の配下の魔族の何人かと友好的な関係が築けた。


 1人は側頭部の辺りから後ろへと伸びる立派な角が生えていて、肌は全身紫で黒目が赤色で白目が黒色で茶目が黄色、背中から6対12翼が生えた半裸の魔族ルシファー。


 1人は4対8翼の朱い肌をした竜人族の男で、恐らくアバラの隙間と思われる部分が魚のエラのようになっていてそこから蒼い火を吹かしているサタン。


 1人は、魔物の中にはラミアという蛇の下半身に人族の大人の女の上半身を持つ種類が有る。本人曰く、そのラミアの祖にして蛇達の祖と名乗る人間部分だけ見れば物凄くスタイルの良い女のレヴィアタン。


 1人は鳥の獣人族のように人に似た肉体に、背中から大きな翼の生えた後頭部にもう1つカラスのような見た目の双頭の頭を持つマモン。


 この4人と特に友好的な関係を築けた。

 ただなんと言うか、マモン曰く俺を認めているのは頭の半分だけだそうで、もう半分は認めないと言われた。理由はわからないが、マモンの片方の頭に俺の何かが反応したんだろう。


 他の3人についても、どうやら俺の何かに強く惹かれたらしい。

 何に惹かれたのかは教えてもらえなかったが、彼等曰く俺の在り方や感じてる物は彼等それぞれの美的センス的にとても美しいらしい。訳がわからん。


 他に3人ほど相手をしてくれた魔族が居たが、1人はそれはもう嫌々魔王に言われたから戦ってくれたって感じの奴で、1人は臭くて太った全身緑色の肌をした奴で、1人は腰から蠍の尾を生やした全裸の奴だった。

 この3人には名乗られなかったし、呼称を含めて彼等のことを呼ぶことさえ拒否された。これも理由はわからないが、魔王に頼まれない限り俺と関わる気は一切無いと宣言されたから、まぁ関わることは今後ほぼ無いだろう。


 そんな彼等に散々殺されまくってボロボロになって身動きが一切取れなくなったら、魔王の手によって寮の部屋へと帰される。ご丁寧に俺の血や泥が付いて穴も空きまくった服も体も綺麗に元通りの状態にされた状態で朝食用の飯まで用意された状態で帰されて寝かされる。

 気付けば翌朝で、何故か疲れも残らず朝に自然と起きる。

 確実に魔界に居た時間を考えれば体内時計的に1日は経ってる筈だが、本当によくわからない1ヶ月を過ごした。



 1つは上級生達やクソ野郎との訓練である程度の連携が取れるようになったこと。


 俺は総魔力量が他人より少ない。正確には少なかった。今は魔王のおかげでかなり増えて人並みぐらいにまで増えたが、クソ野郎は論外として同じ班の上級生達よりも総魔力量は少ない。だから必然的に俺が前衛として戦った。


 というか、そもそも俺達のパーティーというか班のメンバーは全員それぞれがそれぞれで自己完結していた。

 当然俺は超近距離を主軸に中距離でもたまに戦う戦い方。

 クソ野郎は何でも出来る。強いて言えば盾役が苦手で攻撃が得意って感じのどの陣形でも活躍出来る戦い方だ。

 そしてチャーラルは当然と言うか、遠距離1択。ただ戦い方は物凄く巧みで、仮に俺達が居なくても魔物や人間が近付く前に仕留めてしまえる実力が有った。

 イリコスは意外なことに盾役だった。彼曰く、戦士長や隊を任される者には民や隊を守る重要な役割が有る。だからマハラ帝国の優れた戦士ほど盾を含めた盾役としての戦い方は必須らしい。

 そしてエンラジーは、こういう言い方はしたくないが、クソ野郎の下位互換って感じだった。どの距離でも戦えて、パーティーの穴を埋めるような戦い方をしていた。


 こんな5人が集まれば、当然各々やることは決まっていて、必然的に連携しなくても自然と普通に戦えていた。

 ただやっぱり、普段気にせず1人で戦っている俺は他人と一緒に戦うって環境は経験が無かったためかなり新鮮だった。例えばチャーラルが攻撃系の魔法を撃つまでに時間を稼がないとならない。そして準備が出来れば彼の魔法に当たらないように避けないとならない。そういった機微は実際にパーティーを作って戦わないとわからないことだったから、良い経験になった。



 1つはアバズレ共。

 これは後から聞いた話がほとんどだが、特にストゥムに着いていたメイド。アイツはアカバ王国から新しくやって来たメイドと執事が持ってきた書状を寮のロビーで渡されて、その場で泣き崩れて終いには発狂していたらしい。

 要領を得ず的も得てない訳のわからないことを叫んでいたらしいが、聞き取れた単語から実家にも類が及んだらしいことを小耳に挟んだ。そして天涯孤独になったようだ。

 そこで本来であれば、そもそもそれはそれでおかしな話だが、もしも泣き付くのであれば、本来であればストゥムに泣き付くのが普通の筈だ。しかしストゥムの元メイドはクソ野郎に泣き付いたらしい。そんな彼女に対してクソ野郎は「実家や国が決めたことを僕がどうこうすることは出来ない……かな」と言ったらしく、その言葉で心が壊れたのかその場で倒れたそうだ。

 そこからは詳しくは知らないが、ストゥム曰くアカバ王国の修道院に送られたらしい。自業自得だな。


 レオポルドの妹の方もなかなかだったそうだ。

 マハラ帝国から来た老メイドが彼女の部屋へと押し入ったそうだ。最初は奴も叫びながら文句を垂れていたそうだが、老メイドだと認識した途端、レオポルドの妹は絶叫しながら自室の窓に手を掛け飛び出そうとしたらしい。

 しかしその前に老メイドに拘束され、そのまままる1日絶叫が止まなかったらしい。

 そして出てきたレオポルドの妹は、髪以外の全身の毛という毛を抜かれ服という服を露出を極端に控えた物に代えられ、風呂からトイレまで四六時中その老メイドの監視下で過ごしているらしい。

 レオポルド曰く、その老メイドは何歳かもわからないほど昔からマハラ帝国の皇族の世話をしているらしく、現皇帝を含めてマハラ帝国の皇族はみんな頭が上がらないらしい。本人が望まないため実権は無いが、望めばマハラ帝国は実質的に彼女の国と言えるほど影響力が強いらしい。

 正直本当かよって思った。


 俺の元班員という意味での残りの2人もそれぞれがそれぞれの実家から色々言われて、本人達から愚痴られたらしいクラスの女曰く一生家の監視付きか修道院に入ってその後の一生を過ごすかを迫られているらしい。


 全体的にそうだが、アバズレ共は本当に自業自得だと思う。というか馬鹿過ぎだ。


 そしてレオポルドとストゥムだが……、レオポルドは例の老メイドが今後は居るということでまた頭を抱えていた。俺にはよくわからないが、俗に言うジュギョーサンカンとかいうヤツに近いのだろう。模擬戦の時や授業間の休憩時間には息抜きに付き合ってやろうと思った。


 ストゥムはなんと言うか、灰になっていた。

 もちろん比喩だ。もちろん比喩だが、まぁ、そういうことらしい。

 これも俺にはよくわからないが、初恋の相手だったそうだ。そして彼女が幸せならって思って仕事を放り出して他の男に現を抜かされても受け入れていたそうだ。しかし今回の件で、自分がもっと早くに注意しちゃんと諫められていたらここまで酷い結果にはならなかったんじゃないかって後悔しているらしい。

 初恋は敗れ、初恋の相手は不幸のドン底へと堕ち、残ったのは悔恨と悲嘆と初恋の燃えカス。

 ストゥムにも当てれるだけの時間を当てて早く立ち直れるように励ましてやろうと思った。



 そんな激動の1ヶ月を過ごし、今日。

 俺達は班のメンバーで学園の授業の有る時間にギルドに来ていた。


 上級生達との合同訓練が本格的に始まる。




 ルシファーの見た目は描写されている通りで、角は後頭部から頭の線に沿うように体の前面の方へ伸びてる角をイメージしてください。それがおデコの端、側頭部から体の背面側へ伸びてるイメージです。


 サタンはガルツベルンというキャラを検索してみてください。アレに描写したような相応の翼が生えてます。


 レヴィアタンは言うこと無いです。アナタの思うラミアを思い浮かべてください。それが最も限りなく正解に近い今作のレヴィアタンです。


 マモンはペストマスクを正面と後頭部で被ってるイメージでOKです。人格が変わると首が540度回転します。180度でも360度でもなく540度回転します。



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