表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第六章:選択
312/689

「なるほど日記か」


 俺が首都へと戻ったその2日後の朝にガラギス達は帰ってきた。


 俺が先に帰ってきていたことに文句を言われたが、転移で帰らないお前等が悪いと言えばそこで転移の存在を思い出したらしく、使える者は歯噛みし、使えない者は尚も文句を垂れた。


 学園へと戻り事の顛末を報告すれば、やはりこちらでも色々言われた。


 しかしギルドで帝達に言われたような俺が居るのに何故捕り逃したみたいなものではなく、何故低ランクなのに討伐までやったんだという内容だった。

 これに関しては謝り以後繰り返さないことを反省文として書かされる程度の罰で済んだが、そもそもそんな高ランクの依頼を請けさせたのが悪いと文句を言っても悪くないと思う。



 ギルドと学園、2ヶ所への報告を以て俺達の課題は達成扱いとなり俺達の班は解散となった。


 解散と同時にウィリアム・パリスは早々に何処かへと去って行った。


 モナーク・グリアも最初こそエギル・ラークに2人きりで出掛けようとか声を掛けていたが、彼が彼女の話を一向に聞こうとしなかったため見切りを付けたのかウィリアム・パリスに続き何処かへと去って行った。


 ガラギスはモナーク・グリアの次に去って行った。

 「また稽古を付けてくれ」という言葉と共に。


 エギル・ラークとイリア・グリーラの2人は、今後も俺に暇さえ有れば模擬戦で良いから相手をして欲しいと俺が交換条件を出すまで強請って来た。

 エギル・ラークは純粋に強くなる為に。イリア・グリーラはエギル・ラークへの恋心と自身の鍛練の為に。

 あまりにしつこかったから、学園の有る間の早朝、俺が1日の準備運動として行う自主鍛練の間だけならという条件で彼等の願いを聞くことにした。

 早朝とはどのくらいかと聞かれたため陽が顔を見せたらと答えたら口角を痙攣させていたが、「明日からお願いします」と言われたため今後彼等が姿を見せれば相手してやることになるだろう。



 この上級生下級生の班での課題が早く終わった班は、他の全班の結果が報告されるまで授業は無い。

 そのため俺は、早々に廃城へと転移した。



 ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 廃城へと転移すれば魔王が待っていた。



 「やぁお帰りサース。待ってたよ」



 初めて会った時のように玉座に座りながらあの時と似た言い回しで帰りの言葉を告げてくれた魔王へ、挨拶代わりのトラトトの投擲を見舞いながら、キラーホーンラビットの角を素材に創った剣で魔王に斬り掛かる。



 「ただいま魔王」



 先に投げたトラトトは刃の部分をまるで紙でも摘まむかのように指で挟むことで防がれ、続く俺の斬り掛かりも摘まんだトラトトを軽く振るわれることで簡単に受け止められた。



 「イギライアのことはもう良いのかよ」


 「彼女がサースの相手もしてあげてと慈悲深いことを言ってくれたからね。久し振りにこうして相手をすることにしたんだよ」


 「イギライアには感謝だ、なッ!!」



 鍔迫り合いの状態で交わした会話を切り上げ、鍔迫り合いをしても敗けることは必至なため斬り上げによってトラトトを弾き、左腕先の短剣に水を纏わせ魔王へ突きを見舞う。

 だがそれもトラトトの柄の中心で受け止められ、代わりとばかりに俺の左右頭上から直剣の形をした破壊属性の物と思われる魔法を射出された。


 後ろへ退がることでこれを避け、退がり際に短剣からトラトトに付着させておいた水を使ってトラトトを包み、魔王の手から無理矢理トラトトを奪い返す。


 これに魔王は抵抗すること無く、呆気なくトラトトを手放した。


 手許に帰ってきたトラトトと入れ違いになるように右に握るキラーホーンラビットの角剣魔王へと投擲し、トラトトの三叉部分近くを握る形で右手へと持ち替え、投擲した角剣へと追い付き、そのまま水の左腕で握り突きを放つ。


 これもまた右手で摘まむことで防がれたが、トラトトに水を纏わせ1本の水の槍へと換え、掴まれる前にトラトトによる突きに合わせて水量を増やして後ろへと後退し、水圧による圧殺を仕掛ける。



 「良い工夫だね。攻撃と離脱を同時に行うのは格上との戦いに於いては大切なことだ。基本はしっかりしているね。


 だけどそれだけじゃ足りない」



 言葉と共に、大量の水を含んだ槍は魔王の右手による叩きによって破裂し消滅した。


 魔力を感じなかったため、魔王の純粋な身体能力だ。


 相変わらずの化け物っぷりだなまったく!!



 「理不尽が過ぎるんだよ魔王!!」


 「そんな俺に君が並び立つのはいつになるんだろうねサース」


 「ッッ!! それを!言うなッ!!!!」


 「あはは、顔を真っ赤にしちゃって。可愛いよサース」


 「ふざけやがってぇぇ!!」



 その後もあの手この手で、魔王が知らなさそうな創った武器や戦法で攻めたが、結局は成す術無く全て真正面から捻り潰された。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 「なるほど日記か」



 声に気付き顔を上げれば、そこにはマー君が居た。



 「人の日記を覗くのは趣味が悪いよマー君」


 「聞いても教えてくれなかったじゃんサー君」


 「そりゃ進んで見せたい物じゃないだろ日記なんて。しかも自伝だぜ?見られるならせめて自分が死んでからだって」


 「確かに一理有るかも。だけど9ヶ月前から夜の鍛練をせずに書いてるんだ、気になっても仕方ないだろう?」


 「だったらせめて本人の前で盗み見るんじゃなくて本人が居ない時に頼むよ」


 「じゃあこの前の内容や続きはサー君が天寿を全うしてから読まさせてもらうよ」


 「是非そうしてくれ」



 続きを書く気は失せ、完全に筆を置いてこの自伝を宝物庫へと仕舞った。


 宝物庫に仕舞うと同時にマー君が口を開く。



 「書いてる所が書いてる所だったから敢えて改めて聞くけど、本当に良かったんだね?」



 マー君の言葉に深く頷く。

 あの時の言葉を改めてマー君に伝えることで、改めて宣誓とする。



 「俺は1度人類の文明を滅ぼす。その上で生き残った人類と一緒に少しでも人間の醜さが生まれない世界作りに人生を捧げる。


 だからマー君。俺の行く末を見守っていてくれ」



 俺の宣誓を聞いたマー君は哀しそうなカオをしたが、そんなカオをするだけで不必要なことは何も言わなかった。



 「言われなくても特等席で見守らせてもらうよ、サース・ハザード……」




 これにて第六章:選択が終了となります。

 ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございます。

 この後いくつかの幕間を挟み、その後第七章の更新とさせていただきます。


 明確に定めた未来への選択。これより今作はクライマックスへ向け本格的に動き始めます。



 今後とも拙作『魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺』の応援を言葉にせずともしていただけると嬉しいです。


 それではまた!






 P.S.拙作の更新状況は@arakikara_creat(荒木空_クリエイト)のTwitterアカウントで発信しております。


 最近は私生活の問題で発信することが出来ておりませんが、「あれ?今日の更新いつだ?」となられたら、こちらを確認していただけると嬉しいです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ