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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第二章:違和感
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班決定


 俺達の班が実質的に解散し魔王から手痛い指摘を受けた翌日、俺を含めた班の面々は再び風紀会室へと呼び出された。


 仕方なく昼休憩の際に風紀会室へと向かえば、そこには俺とクソ野郎だけが居た。



 「今回の呼び出しはどう言った要件で?」


 「君達の参加する班について話そうと思って来てもらった。

 昨日の件を早速学園側と帝様方へお知らせしたのさ。

 そうして返って来たのは、『班の解散は無し』『そのままその班で続行するように』『彼女達へのお咎めは無し』というものだったそうだ。しかも今回のこの決定は、新しい総帝様直々にお決めになったそうだよ」



 思わず手を強く握ってしまう。またかと。他人の目が無ければクソ野郎のことを睨んでいたことだろう。


 要するに隣に居るクソ野郎は、自分をチヤホヤするアバズレ共を私利私欲のために他国様に決定の権が有るにも関わらずそれを無視して「今回の件は無かったことにしろ」って言った訳だ。

 本当になんでこんな自分の都合しか考えないクソガキを国のトップに置いたんだよ今の帝共は。無能の集まりか。


 そんなクソ野郎への怒りや今の帝達への呆れを覚えつつ、じゃあ何故アバズレ共がこの場に居ないのかとか、昨日の魔王との会話のことを思い出した。

 だから意識を頑張って落ち着かせ、一呼吸したあと質問する。



 「アバズレ共は?」


 「彼女達へのお咎めも無し、というのが総帝様からのお達しだ。だけど流石に問題の有る生徒を野放しにするのは教育の場である学園としてもよろしくない。だから」

 「だから今回の行事は不参加。当然単位は無し。この1ヶ月の間は寮からは出ずに謹慎。もし脱走した場合、更に重い罰を与える……とか、そんなところかな?」


 「…………人の言葉に被せるのは関心しないよハザード君」


 「それについては失礼しました。

 でも良かったです。どうやら学園はまだマトモそうだ」


 「……もしかして帝様方の事かな?」


 「他に誰が?特に新しい総帝。無能の象徴みたいな奴ですね、アバズレ共への対応を聞く限り。

 権力が力を持つのは、その権力者が定めたルールがその権力者までもを縛るから効果が有るんだ。それを自ら破るような決定を強権で決めるのなんて無能以外の何者でもないでしょう。


 もしも俺が総帝なら、例え自分が該当するとわかっててもしっかり罰則を与えますよ。私利私欲の為に権力使って好き勝手する奴はただの暴君ですからね」



 バカにも聞こえるようにハッキリと言う。 大声ではないが、普通に話すよりは少し大きめに話す。隣に居るのに、これでも聞こえてなかったり理解してなければ本当にゴミだぞお前はって意味で話す。


 隣から感じる圧で俺とチャーラルとのやり取りで怒りを覚えているのを犇々と感じていたが、俺の発言でその圧は少し落ち着いた。


 本当に、なんでこんな感情で動くクソガキが国のトップなんだろうな。



 「……まるで総帝がこの学園の生徒みたいな言い方をするな?お前は総帝の正体を知っているのかサース・ハザード」



 これまで自己紹介以外では言葉を発さなかったイリコスが口を開く。

 カオは、まぁ、それはもう好戦的な笑みを浮かべていた。


 彼はマハラ帝国の人間だ。だからもし学生であるのなら戦いたいのだろう。マハラ帝国の国風はそういうものだ。だけどいくら戦いたいだけとはいえイリコスは他国の人間だ。例えクソ野郎の事とは言え、他国の人間に総帝の正体を話すわけにはいかない。

 だから当然誤魔化す。



 「いえ別に。ただほら、今の総帝ってかなり若いんでしょう。だからもしかしたら学生の可能性も有るんじゃないかと思いましてね。だからこんな幼稚で無能な決定が出来るんだろうなって思いましてね。だからもし俺が総帝の立場ならって思っての言葉を言ったんですよ。

 だって俺達の班の件に全く関係の無い総帝が口を出して来るんだ、俺達の誰かと繋がってる可能性も有るかと思いましてね。


 帝についてはエンラジーセンパイに聞けばわかるんじゃないですか?

 確エンラジーセンパイって帝の親族でしたよね確か」



 無理矢理話題をエンラジーへと振る。当然エンラジーがどう答えるかわかった上でだ。


 当たり前というか当然と言うか、案の定エンラジーは「答えはわかっているよねウィンターにグリーラン。仮に知ってようが知っていまいが答えられないよ」と答えた。


 流石に理解はしていたのだろう。いや、もしかしたら駄目元というヤツだったのか、すぐにイリコスは「話を遮って悪いな。続けてくれ」と言って黙った。



 「ふむ。確かに気になる話題ではあるが……、確かに国家機密だ。そう易々と話してはならない案件を簡単に話すとは思わないさ。

 なんせ帝は基本的にその正体が判明していない。ウォイムは自分を帝の親族とは名乗っているが、その事実がどうかは当然わからない。そう簡単に話しては国家機密は機密じゃ無くなるからね。総帝様についてはまたの機会にしよう。


 話が大きく横に反れたが、ハザード君。君の言う通りだ。学園側は教育者という立場から彼女達へ自主的に処分を降した。先程のハザード君の推察には入っていなかったが、当然それぞれのご実家には書簡を送った。流石にそれぞれの皇族や歴史有る家の出の者が居るため今後学園に対して何か有るかもしれないが、学園はその責任も負うと答えた。


 そもそもの話だが、学園の問題について帝様方へお伺いを立てること事態が間違っている。間違っているが、流石に国と国とのやり取りだから話を通さないわけにもいかなかった。


 結論を言おう。来月の上級生下級生合同の班はここに居る5人で行う事が教師達の職員会議で正式に決定した。今日はその説明と、今後の僕達の連携練習について話したくて呼んだんだ」



 それから俺達は話を詰めた。

 俺個人としても、そして恐らくだがクソ野郎にしても、放課後は好きに動けるようにしておきたい。だからなるべく学園の時間の中で時間が取れないかと交渉した。


 俺は当然魔王との修行が有るためで、クソ野郎はクソガキでクソ野郎だが一応総帝だ。だからいつでも動けるようにしておかないとダメらしい。半年前に総帝告白と同時に色々話された。


 当然それをそのまま口走ったりはしなかったが、クソ野郎はなんだか意気消沈したみたいに物静かで不気味だった。

 先の交渉については口を開いたが、その他の決め事についてはずっと頷くか肯定の返事しかしなかった。

 昔からのコイツを知るだけに、本当に不気味だった。



 そうして以下の事を決めた。


 1、昼休憩の時か放課後に闘技場のどれかを借りて軽く組手をする。(互いの実力確認や動きを把握するため)

 1、週に1度の休暇の内2回はこのメンツでギルドの依頼を請ける。(連携の為の実戦を経験するため)

 1、ギルド依頼を請ける際、ポーションや飲み物などの消耗品は自分の分は自分で用意する。忘れた場合、無しで行動する。周りは忘れた奴を助けない。(当然の事だが念のため無理矢理捩じ込んだ)


 どうしても放課後や休日の集まりを無しにすることは出来なかった。だから代わりに最後のヤツを条件に捩じ込めた。

 言ってることは当然だが、十中八九クソ野郎がその辺忘れるのが目に見えてわかっていたため、「自分の尻も拭けない奴の尻拭いなんてしてたらコッチが危なくなります。なので忘れたバカは自業自得として見棄てる方向で行きましょう。それに加えて依頼中に不測の事態が起きたら、足を引っ張る奴は見棄てましょう。当然俺がその時足を引っ張っていたら遠慮無く見棄ててください」って無理矢理通した。


 流石に依頼中に見棄てるって部分には難色を示されたが、俺も見棄ててくれて良いってのが効いたのかチャーラルとエンラジーは渋いカオをしながら見棄てる許可をもぎ取った。


 この事で意外だったのはクソ野郎で、見棄てる云々言えば必ず「そんなことは出来ない!」とかどういう意味かもわからず喚き散らしていただろうフォルティス・サクリファイスは、本当に何故か静かに「それでいいです」と答えてた。

 マトモに話の内容を理解せずに頷いたのかと思い風紀会室から教室に戻る際に確認したら、なんとちゃんと理解していた。


 それを見て俺は、経験則から来る勘が警笛を鳴らし始めたのを感じた。


 どうやら今回の行事は無事に終わることは無いらしい。



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