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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第一章:彼との馴れ初め
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それは──


 さて、色々書いたが、何故今回俺ことサース・ハザードがこうやって自伝を書こうと思ったのか、それは



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 「サー君なに書いてんの?」


 ふと、声を掛けられた。声の主はよく聞き馴染んだ親友のもので、呼び方からも彼以外ではないとわかる。


 「あ、マー君。いやさ、ほら、俺が本格的にコッチに住み始めてもうすぐ1年が経つじゃん?だからなんとなく俺という人間の軌跡みたいなのを遺してみようかなって思ってさ。


 俺が如何にして魔界に身を置くことにしたのかってのをさ」


 「……サー君さ」

 「良いんだって」


 俺を慮って言ってくれようとした言葉を遮る。

 表情を見なくてもわかる。今マー君の表情は物凄く哀しそうなカオをしてることだろう。それをわかった上で次の言葉を口にする。


 「良いんだよマー君。これは俺が選んだことで、その結果予想外のことが起こったってだけなんだから。それに俺、嬉しいんだぜ?これで今まで以上にマー君と一緒に居れる」


 そう言って指輪の嵌まった右手を掴む。今はグローブで覆われたその下の皮膚は、第三関節の辺りまで金属系の光沢の有る紫色へと変色していた。

 魔界に本格的に住むようになって1年、俺の体はどんどんこの魔界に適応しようと日々、少しずつだが日々変化していた。


 基本人族と獣人族以外の人類は長命で、逆に人族や獣人族は長くても70年ほどしか生きられない。その上自由に身動き出来る自由な時間は、長く見積もっても50年がやっとだ。そんな短い間しか楽しめないなんてマー君が可哀想だし、俺だってもっと楽しくマー君や俺に好意的な魔界の人達と一緒に居たい。


 だから、


 「良いんだよ。これは俺が決めたことだ。例え魔王や神がなんと言おうと決めたのは俺だ。


 だからほら、そんなカオしてないで、またいつも通りどうやってあのユーシャサマに嫌がらせするか考えようぜ!」


 ペンを置いて立ち上がりマー君の肩をパンパンと叩く。

 より一層哀しそうなカオするマー君だったけど、すぐに「そうだね」と小さく呟きその後すぐにいつも通りのニヤニヤした楽しそうなカオを見せてくれた。


 「よし!じゃあ次何やる?確か前は勇者の股間を執拗に狙ってお漏らししたみたいに見せる嫌がらせやったよね!次はどうする?」


 「そうだなぁ…、あそうだ!手の届かない背中の部分が異様に痒くて仕方ない呪いを掛けるとかどうよ?痒くて痒くて他のことに気が回らなくなりそうじゃない?」


 「良いねぇ!あ、じゃあさじゃあさ、勇者が魔法を使おうとする度に奴の尻から───」


 「それも良いね!でもこんなのも良くない?奴が喋ろうとする度にその声を───」


 「じゃあこんなのも良いんじゃない!勇者が何か重要な会議をするために会議室に入った時にさ───」


 「会議と言えばさ!なんならこのまま会議開かない?魔界の俺達に賛同してくれる人達集めてさ」


 「良いね良いね!よしやっちゃおう!!


 おい!誰か居ないか!!今すぐ会議室に集まるよう伝えろ!!勇者に対する対策会議だと伝えれば勘の良い奴は来るだろう!」



 やっぱりマー君や魔界の人達とこうやってバカやるのは楽しい。

 それを再確認して、俺に割り当てられた部屋から出ていくマー君を見送りつつ置いたペンをまた手に取った。


 そんで続きを書く。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 それは例え魔族だろうと、魔界の人達だろうと、その在り方は結局のところ人間と変わらない。例えこの身が魔族へ転じようと俺は変わらない。皆々、俺達は等しくヒトなんだ。

 そういうことを俺とマー君の仲の良さ、そして人類の希望とか言われてる勇者達の裏のカオなど、良い人悪い人なんてのは種族に関係無く居て、魔族だから魔界の住人だからと根拠の無い陰謀論を唱える馬鹿共に「テメー等の方がよっぽど悪性強いぜクソ野郎」と後世の人達にだけはわかってもらいたくて筆を取った。


 ここからは如何にしてサース・ハザードという男が人界を離れることを決意したか、まずはその事から語ろうと思う。

 そして語り終えた後、この自伝の時間が今これを書く俺に追い付いた時からは日記となるだろう。


 もう1度言おう。種族に良い種族も悪い種族も無い。有るのは良い奴か悪い奴かだ。その人を全く知りもせずに勝手なレッテルを押し付けるのは、それこそそれを言ってるソイツこそが悪い奴だと言って良いだろう。


 これを読む後世の人。願わくば、アナタにこの俺の想いが伝わり、そしてこれを広め、魔族も天族も竜人族もエルフ族も獣人族も、そして人族も関係無くみんなが笑い合える世界になっていることを。そんな素敵な世界になるよう動いてくれることを。この自伝が少しでもそんな素敵な世界になることの一助とならんことを願う。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 「サー君!もうみんな集まってるみたいだよ!サー君も早く!」


 「わかった!今行く!」


 ペンを再び置き、部屋の外で待つマー君と一緒に会議室へと向かう。

 さて、じゃあ次は、あのユーシャサマにどんなイタズラをしてやろうかな?




 この時点で敢えて言いましょう。バチバチしてるのは人界側それも人族達側なだけで、当の魔界側の主要魔族達は如何に総帝や王族皇族達お偉い様方のシリアスな雰囲気をぶち壊そうかと模索してるだけであると。



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