恨むからな。
班決めを行ったのがその日の授業の最後の時間だったため、翌日に上級生との顔合わせを行った。
それぞれの班がそれぞれの上級生の班と合流する。
合流場所は班によって様々だ。合流場所は上級生が決めるみたいで、例年では能力テストを行った第一闘技場だったり、学園の空き教室の1つだったり、学園の図書館だったり、果てには学園外の場所で集まって顔合わせする班も有るらしい。
学園外でする場合は必ず教師の同伴が必要で、これを守らないと上級生がペナルティを負うらしい。
昔学園外で集まって下級生の女グループと上級生の男グループが合わさり……という事件が起きたらしく、それから学園外の場合は必ず教師の同伴が義務付けられたんだとか。
ちなみに当時の上級生達は全員打ち首。家族も打ち首で、中には貴族の嫡男や大商会の御曹子なんかも居たためその貴族家や大商会は今でもそれぞれの界隈で嘲笑されて爪弾き者扱いらしい。名前を聞けば、あぁあの貴族家あの商会かって一般人でもわかるぐらい悪名の方で有名な家だ。
過去にそんな一波乱が有った合流は、俺達は学園の風紀会の拠点である教室を指定された。
そして向かったのはまさかの1人だけ。つまり俺だけだった。
まぁ、本来であれば俺自身も行かない予定だった。というのも指定時間が放課後だった。だから本当は行きたくなかったが、あのクソ野郎とアバズレ達……特にアバズレ達が俺に一言も言わずに学園の門から出て行くのを見てしまった。
流石に指定させた時間に指定場所に下級生が誰も行かないのは不味い。だから渋々俺だけが向かった。
そうして訪れた風紀会の拠点である教室……風紀会室の扉を叩き、入室を促されるまで待つ。
声はすぐに返ってきて、用件を言えばすぐに中へと入れてもらえた。
中に入ると茶髪で赤目の人族の男と灰色の毛並みをした犬系の見た目の獣人族の男と金髪緑眼のエルフ族の男が1人ずつ居て、エルフ族の男が代表して話し掛けて来た。
「やぁ歓迎するよ下級生君……君1人だけかい?」
「1人のヒモとそれに群がるアバズレ共は授業が終わると同時に学園外へと行きやがりましたよ」
「…………まずは君の名前とランクを教えてもらっても良いかい?それと担任の名前も。そこで君の他の班のメンバーの名前とランクを聞くことにしよう」
「素直に『早速問題行動をしたと報告する』って言って良いんですよ。まぁ、約1名を除き、女の全員がこの国以外で出生から高貴な生まれなんでどんな処罰が降せるかはわかりませんが。なんなら処罰は無しになる可能性の方が高いですが」
「なるほど。ちなみにだけど、その中にアカバ王国の人は居るかい?こう見えて僕はアカバ王国の公爵家の出でね、大抵の者達であれば僕と僕の実家が手を回せるよ」
「マハラ帝国であれば俺が請け負おう。俺はマハラ帝国現戦士長の息子だ。相手が例え皇族だったとしてもある程度の処遇は皇帝陛下に俺の父から上申出来る」
「では人族の方はいらっしゃいますか?一応どの帝かは明かせませんが、私の親族はこの国の帝の1人です。であれば、私も親族頼りとなりますが罰則を与えるぐらいは出来るでしょう」
三者三様に自身の実家のことを明かしてくれて、その内容に眩暈がする。
凄いメンツだ。ストゥムのメイドの出身が貴族家なのかそれとも平民の出なのかはどうでも良いが、仮にストゥムのメイドが貴族の出なら何の権力にも守られていない最初に切り捨てられる存在は俺だけってことになる。
つまり、もし緊急で何かが起きれば、俺が殿を務めて魔物の相手をしなきゃいけなくなる。
俺としては修行になるから良いが、それも魔物の強さ次第だ。
そんなことにはならないで欲しいと思うが、可能性が有ると考えると憂鬱になる。本当に勘弁してくれよ……。
「…………ハァ。サース・ハザードです。冒険者のランクはD。属性は水。
センパイ達、最初から俺達の班担当だったでしょ」
タメ息が出る。それぞれの国で発言力の有る身内を持つ3人が纏めて俺の班の担当になるなんて、どんな確率だと言いたい。十中八九学園側で調節されたであろうことが手に取るようにわかる。
「なるほど君がサース・ハザードか。お噂は予々……。
あぁ、自己紹介が遅れたね。僕はウィンター・チャーラル。アカバ王国が誇るありのままの自然を管理するチャーラル家の嫡男だ。冒険者ランクはB。得意な属性は風と水だ」
「ほぅ、お前が殿下の友であり逸脱の人族か!
俺の名はグリーラン・イリコス!代々マハラ帝国の治安と狩りを担当してきた何人もの戦士長を輩出してきた誇り高きイリコスの男だ!!冒険者のランクはB!得意な属性は土と火だ!!」
「私は2人のような仰々しい自己紹介はありませんが……、ウォイム・エンラジー。冒険者ランクはBで、得意な属性は火と水です」
「来なかった彼等彼女等のことは気にしなくて良いハザード君。君の予想通りだ。君の班は教師達から見た1番の問題児達が固められた班だ。そしてそれを担当するのが僕達風紀会員でありこの学園の生徒のトップ3である僕達だ。
賢い君なら何を言いたいかわかるよね?」
「…………ハァ。よろしくお願いしますセンパイ方」
もはや、何も言うまい。
俺は俺で、この行事が終わるまで、終わってからも変わらず放課後は魔王に連れられ高ランクの魔物を狩るだけだ。
それでも、やはり吐き出したくなる。
ハァ……。何故その問題児達の班に俺を入れたんだよ教師共。恨むからな。




