▼side Another act5:NobodyKnows
「先程も申し上げましたが、報告したいことが2点、お聞きしたいことが1点ございます。
まずは報告の方から。
1400年前に行方を眩ましたイギライア・ガーミシリオンをつい最近発見し、これを我が魔界の城にて保護しました。これが1点目になります。
これに附随して、救世主がが誕生したことを確認いたしました。これが2点目になります」
「イギライア・ガーミシリオンを……。そう……。
世界を形成する自然発生の概念の塊、その象徴たる竜。その発見大儀です。
そして救世主……。
人界は今、それほどまでに困窮しているのですか?」
魔王の報告に、この場に居る魔王以外の全ての天族が息を呑んだ。
魔王がイギライアを見付けたというのは、彼女達にとってそれほど重要で重大な案件なのだ。
「簡潔に申し上げますと、今の人類は一時的な安定に身を委ねた結果堕落し停滞しております。それが人類の生存が難しいほどまでに到っているので世界が救世主を生み出しました」
「そう……ですか……。それは由々しき事態ですね。
魔界の王よ、私達の介入は必要でしょうか?」
「その件に関しては最後のお聞きしたいことと関係して参ります」
「貴方がそう言うのならとても重要な案件なのでしょう。
隠すことなく、我々が答えられることは全て開示しましょう」
「いえ、そこまで大袈裟なことではございません。ただとある者のことについてお聞きしたいのです」
「者……、口振り的に天族のようですね。貴方が聞きたいという者とはどの者のことでしょうか?」
魔王の母親の言葉に天族達も魔王が何を聞きたいのかわからないようで、彼女同様不思議そうなカオを浮かべる。
それを見た魔王はこの後の質問に関する返答がある程度予想が出来たが、確実なものにするために口を開く。
「母上。そして外の天族の皆様。我が愚妹の所在は把握されていますか?」
返ってきたのは「誰だそれは」という実の母からの言葉だった。




