▼side Another act2:ルシファーとサタンの密会
「よォサタン、ちょっとツラ貸せよ」
魔界の魔王城、その食堂と言える場所でルシファーがサタンに話し掛けた。
普段の彼の語気の強さを思えば覇気が無く、いつもの喧嘩売りではないと話し掛けられたサタンは判断した。
いや、もしかしたらルシファーの浮かべる顔を見れば、例え覇気が有り普段の喧嘩腰でも普通に話を聞いていたことだろう。
サタンは無言で隣の席の椅子を指差した。ルシファーはそこへ腰を下ろし、内緒話をするかのようにサタンへと顔を近付ける。
「ぶっちゃけさ、旦那キモくね?」
ルシファーの口は悪い。そして彼が魔王のことを呼ぶ時の呼称はいつも決まったものではない。
だからルシファーの言に触れる必要は無い。触れなければならないのはそのカオだった。
一言で言えば気不味い。そして苦笑い。困り果てたカオと称しても良いかもしれない。
ルシファーのそんなカオを見てサタンも似たカオした。サタンは内心「やっぱりその事か」と胸の中で漏らした。
イギライアを連れて帰って来た魔王は、普段モテないが初めて恋人が出来たことで自分の行動を制御出来ないほどに舞い上がる学生のようだった。
これまでの魔王を知る者ほど今の魔王の様子は別人に見えて、人によればルシファーのように良く思わない者も居るだろう。
そんなルシファーの言葉から、さてどう答えたものかと一瞬逡巡してから口を開く。
「キモいかどうかはともかく、浮かれてはいるな」
「言葉濁すなよ。お前もキモいって思ってるんだろ」
「キモいとまで思ってない。ただ今の彼には近付きたくはないな」
「それ要するにキモいから近付きたくないってことだろ」




