大山ダンジョンⅧ
感触から見えない犬科の手だとわかった。そのままその手に体を握られ拘束され、湖の上、空中へと持ち上げられる。
「話をしたいのになんで攻撃しようとしてくるのか教えてくれるかな?」
抵抗しなければ簡単に全身の骨を折られてそうな力で握り締めながらスァールァドークがそんなことを言って来た。
その言葉でスァールァドークの他との関わり方というのが察せられ、呆れると共にその身勝手さが頭に来る。
「対話したいなら最初から意識誘導なのか洗脳なのかは知らないが、明らかな攻撃をするな。それで思い通りに動かないからと殺そうとするな。
お前がこんな所で独り居る理由がよくわかる。可哀想な奴なんだなお前は」
言い終えるかその前には俺の体を握る力が増した。
「おいおい図星だからって感情のまま暴力を奮うなよ。自分の感情の制御も出来ないとか物事を知らないガキかよ」
言えば、握る力が更に増したが、すぐにその力が弱まり、かと思えばまた強くなったりと、俺を握る力でスァールァドークの心情が読み解ける。もしかしたらこの見えない奴というのはスァールァドークの精神と強い結び付きが有るのかもしれない。
「……定命の子、最近の人間は君のような生意気な者ばかりなのかい?」
「俺が生意気ならお前は暴君か構ってちゃんか?
どうせお前、アレだろ。自分は誰にも理解されないとか、自分は何をやっても許されるとか、そんな小便臭いこと考えてこれまで生きて来たんだろ。
だからこんな他との関わり方しか出来ないんだろ。
そんな関わり方してたら一生独りだぜ」
「……………………」
握る力がこれまでの中で1番強くなった。
しかし長くは続かず、自然と拘束する力は弱くなっていき、最後にはスァールァドークの前に落とされた。
「なんだ、癇癪はもう終わりか?散々図星を突かれて何も言い返すこともやり返すことも出来なくて拗ねたか?」
「君が他人を煽りたい構ってちゃんって奴なのはよくわかったよ」
「そうそう、他と話したいとか黙らせたいならそうやって言葉で相手を黙らせないとな。暴力に訴えるのは小者のすることだぜ」
「…………」
言葉にした通り、スァールァドークの中では本当に俺に対して何も出来ない状態になったらしい。
まぁそれも、スァールァドークが根本からは他と関わりたいと思っていると判断出来たから出来た言葉での攻撃だった訳だが。




