VSイギライア戦Ⅱ
ショートソードがイギライアに届く寸前に俺もショートソードに追い付き、その柄を水の腕で握ってショートソードで斬り掛かる。
当然それを彼女の力で防がれるが、それを意に返さず今度はトラトトで突きを放つ。
突き、薙ぎ払い、斬り上げ、柄尻で殴る。
とにかく戦闘慣れしていないであろうイギライアから余裕を失くす為に攻撃の手を一切緩めない。なんなら身体強化で肉体が強化されるのと比例してより速度を増して、更に攻撃を繰り出す。
必死に空間を操り俺の攻撃を寸でのところで防いだり、大袈裟に避けたり、時には頭を抱えてその場に丸まるなんて幼稚な防御をしながらもイギライアは俺の攻撃を堪え続けた。
堪えられるもんだから、ショートソードやトラトトへと送る魔力も当然増していき、次第にイギライアに斬り傷が出来始める。
あまりそういった怪我とは無縁だったのだろう、イギライアは傷が出来る度に瞳に涙を浮かべ、それはもう痛そうにしていた。
流石にそこまで追い込んで、やり過ぎだったかと攻撃の手を1度止める。
「『どうだ、調子の確認は出来たか?』」
『貴方って怖い人間だったんだね』
『あんなに獰猛な笑みを浮かべながら攻撃されて怖かった』
『でも』
『確かに確認は十分に出来た』
『ありがとう』
水帝を送る際にした俺のお辞儀を真似たのか、イギライアは頭を下げてきた。
それで俺も終わりだと判断し、鞘を拾って左腕の短剣を納めてショートソード、トラトトの順に宝物庫へと収納した。収納したことで水の腕は形を維持出来なくなったが、左腕の問題はその内また追々解決すれば良いだろう。
『貴方って強いんだね』
『魔力が少な過ぎるから弱いかと思っちゃった』
『ごめんなさい』
「『魔力が少なくてナメられるのには慣れてるから気にするな。それより、貴女はこれからどうするつもりなんだ?』」
『んー』
『どうしよっか』
『このままここに閉じ籠もり続ける気はもう無い』
『でも』
『だからって行く宛ても無い』
『どうしたら良いかな』
イギライアの質問に、思わず唸る。
もし仮に人界や別の世界へと連れて行くとしたら、やっぱりどうしても魔王のことについては彼女に伝えないとならない。今や俺にとって魔王の存在は切っても切り離せないものだから。
だから、まずは魔王のことについて触れて、その反応でどう答えるか決めよう。
そう思い口を開こうとした瞬間だった。
この空間がまるで悲鳴を挙げるかのように軋み始めた。
その音は次第に大きくなっていき、治まった途端、俺達の前に黒い線が宙空に出現した。
その線から、まるで両開きの扉を開けるかのように開き、中からはよく見知った奴が出てきた。
「やぁサース。1ヶ月振りだね」




