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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第五章:強化期間・後編
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渓谷迷路Ⅲ


 ここまで正解だと思い込んだ道を進んできた。だがこれは、ここまで何も無い行き止まりに辿り着いたことが無かったから『俺達は確実に渓谷の底に近付いている』と思い込んでいた。


 だがこれが、もしも全てたまたまで、実際は何も進展していなかったと仮定しよう。


 その場合、今度こそどうしようもなくなり詰む。

 考えられる地下への道として落とし穴の底近くに横穴が開いていたり、底が見えない落とし穴のその底が下へと降りる道という可能性も有る。

 あと考えられる道は1つ有るが、それは今考えた仮定を全てダメだった時に最期の望みとして後回しにしたい選択だ。


 この仮定と可能性を帝2人に共有した。ここまで来れば一蓮托生だ。だからここまで共有しなかった考えを共有した。



 「……だからなんだ?ここから出れるわけではないのだろう?」


 「ちょっ、総帝!」


 「俺は水帝や炎帝がお前を評価していて、フォルティスが異様にお前に執着しているみたいだからこうして知る為にこっちに参加した。

 だが蓋を開けてみればこれだ。ただの狂人の道楽に我々を巻き込むな」



 返って来たのはそんな言葉だった。

 なんと言うか、化けの皮が剥がれて来たって感じだ。



 「あんたは可哀想な奴だったんだな。それはそれは腹が立って仕方ないだろうな」


 「俺が可哀想だと?」


 「だって、そうだろ。あんたは今、その胸に抱えてる苛立ちを水帝や炎帝やクソ野郎に求めた。単純に俺の在り方が気に喰わないとか腹が立つって言葉を発する為に他人を巻き込んだわけだ。


 自分の感情を他人に求めないと発散も出来ない奴は可哀想な奴としか言えないだろ」


 「キサマッ」



 先代総帝が抜剣し俺の胸倉を掴んでその剣先を俺の首元へと添える。


 そこまで近付けばフードに隠された顔も見える。フードの下から覗くその目は明らかに血走っていて、しかし同時にその目は何処か余裕を感じられない。



 「今の俺の動きに反応も出来ない弱者が、俺を哀れむな!弱者は大人しく強者に従っていろ!!」


 「反応出来なかったんじゃなくて、反応する気も起きなかったんだよ。ようやく立てるようになったようなガキが拳を振り被って来たところでそれをいちいち避けるか?避けないだろ。


 それに弱者は強者に大人しく従っていろ?」



 言って胸倉を掴んで来ている手首を身体強化を行って"優しく"握り、首元に添えられた剣先を避けることもせずに逆に先代総帝の首を掴む。



 「その理論で言うなら今この場で1番強いのが誰かこの状況からあんたが望む戦い方で教えてやろうか?

 試合形式じゃない、本当の殺し合い形式で優しく無力化してやろうか?


 心に余裕が無いのは良いが、弱者だとか強者だとか、この後出てくるのは大人とか子供か?そんな言葉を持ち出すなら、自分が上だと思いたいなら、もっと余裕を持てよ」



 突き付けられた剣先は俺の首に触れはしたがそれ以上進むことはなく、その状態のまま先代総帝とキスが出来そうなぐらい顔を近付け静かに言う。


 首に剣先が当たる感触は有るが、それだけだ。


 身体強化は強化されれば強化されるほどその強化具合が優れている方が勝つ。

 この時点である種の格付けは完了した。


 そしてそこまで顔を近付けて、掴んでいた首から手を離して頭を撫でてやれば、簡単に剣を振るってきた。



 パキンッ。カンッ、カランッ。



 音にするとそんな音が静かなこの空間に響く。

 なんてことはない、先代総帝の振るった剣が俺に当たると同時に刃の面から折れ、地面へと落ちただけだ。



 「ほら、どちらが上でどちらが下かなんて話の結論は出ただろ。怒るのも良いが、ここから出ることを考えようぜ」



 何でも無いようにそう言い、落ちた剣を拾って折れた側を先代総帝に向ける形で差し出す。


 それが決定的だったのだろう。先代総帝から魔力が大量に漏れ出し、次々に殺傷能力の高い魔法がいくつも至近距離から叩き込まれた。



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