VS土帝Ⅰ
激突したとは言ったが、正直肉体へのダメージは皆無だった。身体強化をしていたし、そもそも拳に力が入ってなかったからだ。
そう、殴られた。壁まで吹っ飛びながら見た土帝は、向こうも俺と似たように吹っ飛んでいた。俺が殴ったからだ。
要するに俺達は、互いに互いの顔面を殴って吹っ飛んだという訳だ。
そしてどうやら、俺と土帝の戦い方というのはかなり似てることが改めてわかった。
土帝は攻撃は最大の防御であり防御は最大の攻撃であると言う男だ。その戦い方はとてもわかりやすく、土属性の特性を活かして身体強化を行い、直接殴るというものだ。
しかも土帝はそれをしながら地中で土を操作して、時には地割れを作り出し、時には極太の土を固めて作られた槍を作り出して攻撃したり、ある時は地面から迫り上がった土壁で攻撃を防いだりと、やってることが完全に俺の上位互換みたいな戦い方をする人物だった。
だから、案の定、土帝も何事も無かったかのように俺とは反対側の壁に着地して、頭を掴んで首を鳴らしながら獰猛な笑みを浮かべていた。
「聞いてた話と違うな!いやある意味聞いてた通りか?なんにせよ殴り甲斐が有りそうだ!!」
その言葉と共に俺達との距離は無くなり、目の前に土帝が迫る。
「殺れるもんなら殺ってみやがれ」
土帝から繰り出されようとしていた拳を手首を内側から叩くことで外側へと反らし、逆にこちら側の拳を突き出す。
そうすれば俺がしたように土帝も俺の拳を外側へと反らして、今度は手を開いて胸倉を掴もうと手を伸ばしてくる。
それを握って拘束して、逆に引き寄せ、土帝の首を掴んで後ろの壁へと投げる。
至近距離での投げだ。すぐに土帝は背中から壁に激突した。
それを好機と手と首を握る手を離し殴ろうとすれば、握っていた手をそのまま握られ、力任せに外へと振られて俺の体は土帝の隣の壁へと叩き付けられる。
そこで今度こそ俺達は互いの手から手を離して、俺達に重力なんて関係無いとばかりに壁に立ち、その場で殴る蹴るの押収を見舞い合う。
「ンだよ!骨が有るじゃないか!」
「お世辞をどうも!」
「いやいや、俺は本心から言ってるぜ?」
「だとしたら単純にあんたに骨が無いだけじゃないか?」
「言うねぇ!」
殴り合いながら、蹴り合いながら、顔に獰猛な笑みを浮かべながら、俺達は相手に己の四肢を叩き込む。
時間は俺の味方だ。
時間が経てば経つほど俺の身体強化は完成する。
次第に、徐々に土帝は防御することが増えていき、最終的には顔面を腕で隠して体を丸めて、完全に防御の姿勢を取っていた。
戦場も壁から普通の地面へと移行し、俺の殴る蹴るが土帝の体を叩き潰そうと唸りを上げる。
「どん、だけ、強く、なって、行く、んだよ?!」
「俺の目標は学生の間にあのクソ野郎を負かすことだ。クソ野郎より弱いあんたに俺が敗けるわけにはいかない」
「クソッ、タレめ!埒が、明かねぇ、なァ!」
土帝はそう言うと、久し振りに俺へと脚を向けて来る。
それを軽く脛で受けてみれば、どうやら蹴る為ではなく離れる為の脚だったらしく、簡単に俺から離れることを許してしまった。
そして離れた直後に俺の視界は暗くなり、背中を何かで刺された。
それでどういう状況か察した俺は、更に身体強化を行い、魔力を外へと漏らす。
そうして突き出される槍の射出地点を感知して先にそこへと拳を置いておく。
それだけで突き出された槍は砕けた。
そうやって、そこからは逆に俺の耐久が始まった。
迫り来る土の槍の刺突や槌の攻撃のような打撃を攻撃される前に潰す。
それを繰り返していてすぐには気付かなかったが、地面が迫り上がって来ていた。
「本当に殺す気かよ!」
悪態吐いて、自分の周りに水の膜を張り、閉じ込められたこの空間の壁を殴る。
水の膜を張ったのは少しでも刺突や打撃の衝撃を和らげるためだ。




