第5層:ボス戦・VS始原の巨人Ⅵ
前ページ『第5層:ボス戦・VS始原の巨人Ⅴ』のサースの身体強化を示す魔力量の説明のSランクというのをSSランクに修正しました。
御了承ください。
一体全体どうなったんだ?
そんな言葉を胸の内で吐き出しつつ周囲の状況を確認する。
幸い身体強化はSSランク規模にまで落ちてはいたが強化解除はしていなかった。それに壁にぶつかる直前、一瞬で消えたが粘性の高い水球で激突の衝撃は和らげていたため怪我は無いし、ダメージも軽微だ。
どうやら、巨人は先程の方法では倒せなかったらしい。
刺した杭を抜いて、大槍も抜いて、その辺へと放り投げ、それを終えたと同時に俺の方へと這って来て何度も何度も殴ってきた。
瞬時に身体強化の強化具合を上げ、両手に粘性の高い水球を纏い、奮われる拳1つ1つをこちらも殴って衝撃を相殺することで俺の体の3倍は有る握り拳を防ぐ。
「サース君!」
エンラジーの声が聴こえる。返事をしたかったが、しかしまだ巨人の拳の速度に慣れていないから余裕が無い。そのため無視して目の前の拳に集中した。
巨人からすれば堪ったものじゃないだろう。恐らくこれまで、その図体と力で人族ほどの大きさの生物を蹂躙してきただろうに、その蹂躙してきた奴等と同じ大きさの俺を潰せないのだから。
それを示唆するかのように、巨人は苛立たし気な咆哮を上げたあと、今度は先程放り捨てた杭を拾って俺へと投げてきた。
「それは流石に危ないだろ」
だが投げられたのが物だったため、指輪へと収納。突如杭が消えたことと俺にはなんの被害も無いとわかると更に激昂し、駄々を捏ねる子供のように、またも拳を打って来る。
しかしそれだけの時間的猶予が有れば身体強化も先程巨人を圧倒した次元まで戻っていた。巨人の駄々には付き合わず、俺を殴れてると錯覚させるために水球で俺の人形を作って俺の居る場所に設置し、巨人の傍の大槍へと移動しそれも指輪へと回収する。
そして巨人が騙されてる間の一心地と、エンラジーと水帝の居る場所へと移動した。
「奴が馬鹿で良かった」
「サース君、あのですね……」
「俺1人ならそれこそ身体強化のゴリ押しでやりようはいくらでも有るんだよ。それを今回は部外者が2人も居るからそれに合わせてるだけだ、心配はいらない。
それより水帝、魔力はどれほど回復した?」
「まだまだよ。1割も回復してないわ」
「遅過ぎだろ……」
「おあいにく様、あんな高速戦闘をする総魔力量子供並みの誰かさんと比べたら大量に魔力を持ってるの。回復にも相応に時間が掛かるわよ」
「少なくて悪かったなクソアマ」
「こちらこそ回復が遅くて悪かったわねクソガキ」
軽口を叩いて一息着き、未だに水球を殴る巨人を視界に収めながら奴が磔にされていた十字架に目を向ける。
そういえばまだ十字架事態は調べてなかったな……。
そう思ったためいつでも動けるように警戒はしつつ、十字架を観察する。
軽く見るだけでわかったが、拍子抜けにもほどが有るが大槍が刺さっていた部分に杭や大槍をどう使えば良いかが記されていた。しかも読めない文字ではなく俺どころかエンラジーや水帝ですら読める、人界の文字でだ。
そこにはこう記されていた。
右手に刺さっていた杭は左肘へ。
右肘に刺さっていた杭は右手へ。
左手に刺さっていた杭は右肘へ。
左肘に刺さっていた杭は左手へ。
大槍は顔面へそれぞれ刺せ。
順番はどの順番でも構わないが、槍だけは最後に刺せ。
あまりにもハッキリと記されていたため、これまでの苦労はなんだったのかと自然と眩暈がした。
十字架から離れエンラジー達の許へ移動し、今知ったことを共有すると彼等も目頭を押さえたり頭を抱えたりして呆れていた。
気持ちは物凄くよくわかる。
「で、どうする?」
「なんだかスゴく疲れたわ……。ウォイム君が良いならさっさと貴方が終わらせてくれて良いわよ……」
「だ、そうだが?」
エンラジーは少し考える素振りを見せたあと、「左手に刺す物だけは任せてください」と言ったためそういう運びになった。
そしてそのすぐあと、俺達の方針が決定してもまだ殴っていた馬鹿巨人を、エンラジーが左手に杭を刺したのを皮切りに俺が残る3ヵ所に杭を刺し、そして最後に顔面へ大槍を刺したことで、今度こそ巨人はその姿を消し脈動する心臓と心臓と同じ大きさの魔石へと姿を換えた。




