第5層:ボス戦・VS始原の巨人Ⅴ
「水帝!腕の拘束は可能か?!」
「無茶ばっかり言わないで!しばらく私はただの案山子よ!」
「お前それでも帝かよ自分の持久力ぐらい計算に入れて戦え!!
エンラジー!そこの馬鹿のことは任せる!!」
「了解しました!」
これで実質的にエンラジーと水帝の2人が脱落、つまりいつも通りの1人だ。
水帝がもう少し使えたら楽が出来たが、そうはいかないらしい。
この戦闘とは直接的には関係無い話だが、結局俺はどれだけ無限のように思える魔力回復速度を持っていようと、所詮俺の魔法的な強さは現総魔力量830程度だ。
そもそもこの魔法的な強さとは何を指すかという話になるが、これは保有魔力量・魔法出力・魔力操作力・魔法操作力・魔力回復力の5つの項目の合計値を指す。
保有魔力量はそのまま保有している総魔力量のことだ。
魔法出力とは1度の魔法に籠められる魔力の総量のことだ。
魔力操作力はそのまま魔法化していない純粋な魔力の操作力のことだ。
魔法操作力とは魔法として放った魔法をどれだけ操作出来るかという力のことだ。
魔力回復力はそのまま消費した魔力の回復速度のことだ。
それぞれに得意不得意が有る。
例えば水帝であれば、保有魔力量・魔法出力・魔力操作力・魔法操作力・魔力回復力このどれもが高い水準だろう。いや、魔力回復力だけはわからないか。
エンラジーであれば、保有魔力量も魔法操作力もそこそこ高いだろう。だが魔力操作力と魔力回復力は平均的で、魔法出力は恐らく苦手だ。
では俺はどうかと言えば、魔法出力も魔力操作力も魔法操作力も帝クラスかそれ以上で、魔力回復力については前代未聞の化け物だろう。魔王との修行でその自信と自負が有る。
だがここに保有魔力の話が入ってくれば俺のこの自信という自負は陳腐になる。
俺の魔法出力は完全に全魔力を使いたいのなら綺麗に全魔力を出力出来る。だが俺の保有魔力量は830。どれだけ出力したくとも830規模までの魔法しか使えないわけだ。
化け物級の魔力回復力を備えていたところで、それを溜めておける器が小さくて規模の大きい魔法を使えないわけだ。だから俺は常に自分より保有魔力が多い奴等を妬んでいる訳だが、まぁ今はこの話は良いだろう。
言いたいことは、つまりこの巨人を相手に830の出力で対抗出来るのかということだ。
魔法出力が保有魔力量と最終的には変わらない基本である水球などの球系統や身体強化ならいくらでも対抗出来る。だがその規模に到るまでには相応の時間が掛かる。
その時間までこの巨人を相手に時間を稼げるか。これが俺の今回の課題だった。
まぁ、何をどう言おうとやるしかないんだが。
今の身体強化はおよそ415000規模。つまりSSランククラスが身体強化した時と同じだけの出力だ。
スケルトンと殴り合ってる時はこれの更に数百倍である4150000規模。あのクソ野郎の約4倍だ。
であれば、またあの時と同じレベルに達さなければ目の前の巨人を倒すのは難しいかもしれないということだ。
迫る手を、腕を、頭を、強化し続ける体で時には避け、時には殴って軌道を逸らし、時には蹴って返り討ちにして望むレベルに達するのを待つ。
避けたりいなしたりしてる時に、既に左肘はタイミングが有ったため既に刺し終えた。
あとは右肘にブッ刺し、トドメに心臓に大槍をブッ刺すだけだ。
およそ800000規模になった頃には巨人を速度だけで翻弄出来るようになっていた。
故に、右肘に杭を刺した直後、背後へと回る。
そしてがら空きの背中へ指輪から取り出した大槍をブッ刺した。
「終われ!このデカブツ!!」
大槍は巨人の心臓を貫き、巨人は絶命の咆哮を上げる。
そしてその声が枯れるまで叫んだあと、巨人は地面へと沈んだ。
「ま、1人でやればこんなもんだ」
煽るように水帝へ向け言う。
特に意味は無い。ただの持つ者への嫌がらせだ。
しかし、俺の挑発も水帝には嫌がらせにも聞こえなかったらしい。「貴方の強さにはもう何も言えないわね」とむしろ呆れられたしまった。
エンラジーには「お疲れ様です」とだけ返された。その表情は何かを堪えるようなカオだったためある程度の察しは付いたが、軽く「エンラジーもお疲れ」とだけ返して流した。
さぁ巨人を倒した戦利品を指輪へ仕舞おう。
そう思い振り返ろうとしたその時だった。
突如体を圧迫感が襲い、感じた直後には強く体の側面から壁へとぶつかっていた。
サースが解読した「●●に●せ」の答え合わせ。
右手に刺さっていた杭:左肘に刺せ
右肘:右手に刺せ
左手:右肘に刺せ
左肘:左手に刺せ
大槍:顔面に刺せ




