第5層:ボス戦・VS始原の巨人Ⅲ
運良く、魔力の壁が壊れた最初の一撃は振り下ろしだった。そのため斜めに構えた大楯を支えに大槍を滑らせ、俺の真横の地面へと振り下ろすように誘導した。
地面に振り下ろす。その威力は人族の俺達がやるのと巨人がやるのとでは当然だが全く違う。それだけでまるで地震が起きたかのようで、その震源地とも言える場所の真横に居た俺は同然だが足場が不安定になった。
それを強化した肉体でなんとか堪えて、大楯を退かしてその大槍の刀身に抱き付く。当然切れ味が有るわけだが、それは巨人基準。俺達人族基準ではこの大槍の刃の部分は剣の腹ほども有る。だからそれを抱え抑え、持ち上げられないようしっかり足を地面に固定するように踏ん張る。
「エンラジー、今だ!!」
「わかっていますよ!」
俺の後ろからその声と共に、身を焼くような高熱を己が得物に纏わせたエンラジーが躍り出る。
俺の位置から数メートル先、大槍の金属部分と持ち手である恐らく材質が岩と思われる柄の部分、その繋ぎ目とも言える場所目掛けて炎を纏った剣を上段から真っ直ぐ振り下ろした。
「ッ!すみませんッ!!」
しかしそれは失敗に終わる。
エンラジーの振り下ろした炎の剣は狙い違わずしっかりと振り下ろされたが、その柄には振った衝撃で付いた程度の小さな凹みだけが残った。
「ッ、離れろッ!!」
「すみませんッ!!」
「水帝ッ!1秒でも良いから足止めを頼む!!」
「無茶言わないで!こんなデカブツ相手に後衛が時間稼ぎなんて普通出来る筈無いでしょ!!」
「帝だろ!だったらつべこべ言わずやれ!出来ないなら帝なんか止めてしまえ!!」
「アンタねぇ!わかったわよ、やれば良いんでしょ!」
エンラジーが離脱したと同時に水帝へ足止めを頼む。
水帝は水球を1つ生み出すと、それに魔力を際限無く籠めて行ってるのか、その水球はみるみる内に大きくなり、その規模はこの空間の三分の一を埋めるほどになった。
「溺れなさい!!」
その言葉と共に大質量となった水が巨人の顔面を覆う。
それを受け巨人は大槍を手放し、自身の顔を覆う水を払おうと顔の周りで手を振り始めた。
「1秒と言わず、このままアンタなんかぶっ殺してやるんだから!」
水帝が腕を前へと出し、手を握るような動きをする。それと連動しているかのように水はその体積を狭め、より巨人の頭を圧縮するように纏わり付いた。
時間が経つに連れ、次第に巨人の動きが鈍くなる。
それを横目に見ながら巨人が手放した大槍を指輪へと仕舞い、エンラジーに声を掛ける。
「敢えて言うが、恐らく炎帝なら出来てただろうな」
その言葉でエンラジーのカオが歪んだ。その表情が悔しさからなのか、俺に指摘を受けた怒りなのかはわからなかったが、剣を握る力が強くなったことだけはわかった。
それを認識しつつ、言葉を続ける。
「まだ成人したばかりだから。まだ父親が炎帝になった年齢より下だから。
それは甘えだ。
今回お前は強くなる為に俺に着いて来たんだろ。だったら死に物狂いで自分の魔力体力技術身体能力、ありとあらゆる持てる力の全てを使って抗え。
少なくとも炎帝のことを魔王は認めた。そして辛うじてお前も。
ならそれは、魔王に評価される程度には足掻いているからだ。お前の父親が炎帝に成れたのは、恐らく死に物狂いで足掻いて強くなったからだ。
もしもお前が父親に憧れているなら、もしも本当に強くなりたいと思うなら、他の全てを捨ててでもぐらいの意気で全力を尽くせ。
この事について俺はもうこれ以上言わない。
後はお前次第だ。
まぁ、年下の俺にそんなこと言われた所で納得出来るかどうかは別だがな。
やれると思ったタイミングで参戦しろ。たぶんあの巨人は窒息死程度じゃ止まらん」
言いたいことだけを言ってエンラジーに背を向ける。
長々と説教を垂れたが、エンラジーは魔王に評価される程度には魔王基準だがしっかりと人間扱いされてる。
もしここで折れたらそれまでだが、未来の炎帝になるのか水帝になるのかは知らないが、未来の帝候補だ。なら糧になりそうなことは1番聞き入れられる時に言っておかねば意味がない。
エンラジーに高説垂れてる横で、巨人はいよいよ窒息死間近なのか倒れ痙攣していた。
そのまま水帝が巨人の頭を潰そうと圧縮しているが、難しいらしい。手を握りきるのに苦戦していた。
それを視界に収めながら、巨人から抜いた杭を1つずつ確認する。
俺の仮説だが、恐らくあの巨人は普通に生物的には殺せない。何かしらの殺し方か封印のし方が有る筈だ。
だから水帝が時間を稼いでる間に、俺は攻略の糸口を探す。




