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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第四章:強化期間・前編
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第5層:ボス戦・VS始原の巨人


 「なんだ、ここは……」



 巨大な十字架に磔にされた巨人。それ以外は他に何も無い場所、それがこの第5層と言える場所だった。


 これまでのダンジョンの傾向を思えば、ここは階層事態がボス部屋で、これまで通りなのであれば目の前の巨人がボスだ。

 しかしそのボスは磔にされているし、それ以外に何の取っ掛かりもない。

 少し移動し、磔の巨人の後ろの壁を見ても何の代わり映えの無い壁だった。


 つまり必然的に目の前の巨人をどうにかすることこそがこの階層の攻略方法なのだろうが本当にどうすれば良いかが皆目検討が付かない。


 …………いや、まぁ、1つだけ可能性は考えられるが、それは『そうであってほしくない』という願望から考えないようにしていることだ。


 何度も言うが、目の前の巨人は磔にされている。

 右手、右肘、左手、左肘には槍にも見える大きな杭が刺さっており、心臓部分には一際大きい明確に槍とわかる物が刺さっていた。

 下半身は無い。人族で言う肋骨の中には内臓と呼べる物は心臓と肺しか見当たらず、その下の胃や肝臓などの肋骨から下の内臓は一切無かった。

 そしてその心臓には大きな槍がしっかりと突き刺さっており、抜けばこれが生きてる頃に近い新鮮な肉体なのであれば血が噴き出していたことだろう。


 普通に考えれば絶対に死んでいる巨人だ。

 しかし耳を澄ませば、微かに呼吸音に似た空気の通る音が聴こえる。加えて、下からその肋骨の内部を覗き見れば、槍に突き刺されてはいるもののその心臓はしっかりと動いているようだった。


 つまり、だ。

 ………………。


 エンラジーと水帝の顔を見る。その顔には俺と同じ結論に至ったのか、明らかに『やりたくない』と書かれていた。

 しかしそれ以外にここを攻略する方法は存在しないだろうと言えた。なら、やるしかないだろう。


 肩を落とし、仕方がないとアピールしたあと、俺は巨人の右肘の杭から抜いた。

 抜いたその杭には血糊が付いていて粘性の高い糸を引いており、尚且つ血が溢れて噎せ返るほどの悪臭が鼻腔を刺激した。

 何より嫌悪感を抱いたのは、抜いた際にわずかに巨人が呻いたように聴こえたことだ。そして抜いた直後にはその傷口は脈動に合わせ塞がっていき、終いには杭が刺さっていたなど考えられないほど綺麗な腕へと生まれ変わっていた。


 片方の肘の杭を抜いてこれだ、残り5本の杭を抜くとどうなるかと考えると嫌になる。


 抜いたことで変わった変化は傷口が塞がったことだけではなかった。

 明らかに心臓の鼓動音が力強くなったのだ。つまり杭を抜いたことで生命力を取り戻したとも言える。


 その後の展開を考え、エンラジーに残る肘の杭を、そして2本の手に刺さる杭は同時に抜くぞと指示を飛ばす。

 エンラジーもエンラジーでその方が良いと考えていたのか、俺の指示通りにまずは左肘の杭を抜いた。


 するとまた一段と心臓の鼓動音は増した。

 最初はその胸の高さまで行かなければ聴こえなかった鼓動音が、今では恐らく離れた所で身構えてもらっている水帝にも聴こえていることだろう。


 変わらず俺が巨人の右手側に、エンラジーは左手側に巨人の腕を伝って移動し、その杭を抱えるようにして巨人の手を足場に構える。



 「3つ数える」


 「わかりました」



 一言ずつの短い会話で合図を決め、深呼吸をする。

 そして合図の数字を叫ぶ。



 「行くぞ!3、2、1!!」



 1の直後、俺とエンラジーは思いっきり力の限り踏ん張り杭を抜いた。


 当然空中に居るのだ、自然と体は地面へと落ちる。


 その時に俺達は巨人の腕が動き、胸に刺さる槍を掴む所をしっかりこの目で認識した。


 巨人は腕が自由になったと同時にその腕を動かし、槍を掴んでその槍を抜いたのだ。


 その直後、巨人の体が瞬く間に再生していき、最終的には脚まで完全に再生してみせた。


 最初は胴体の内臓からだった。

 脈動に合わせ、胃、肝臓、胆嚢、腸、腎臓、膀胱と再生していき、大腿骨、脛骨、足と再生した。


 立てばこの空間の天井が目の前の巨人の膝下辺りになるだろう巨体。それ故に巨人は四つん這いになり、俺達を睨んだあと大きく吼えた。


 咆哮は質量を持っており、未だ空中に居た俺達は踏ん張ること叶わず壁際まで押し戻される。


 咆哮が止むと、続いてその手に持つ槍を、まるではたきでも振るかのうように横薙ぎに奮われた。



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