一夜明け
「解消されたなら良かったわ。じゃあ今夜は泊まって行って。この後精霊エルフの技術を色々と仕込めるだけ仕込むから」
頷くとそう切り出された。
あまりにも脈略が無さ過ぎるため流石に聞き返したら、「知りたいんでしょ、エルフの郷の技術を」と言われ、それ以上は何も話さなかった。
色々と聞きたいが、折角の機会を失うというのも損だと判断し、大人しく彼女からもたらされる情報を吸収することに専念した。
「この行程はなんでこうやるんだ?」
「ここはここがこう変化するから先にこの処理をしないとダメなんだよ。その処理にも時間の問題が有るの」
「なるほどだからこのタイミングでやるとちょうど良くなるわけか」
「そういうこと」
「ここはこうした方が良いんじゃないのか?」
「あー、確かにここはそう処理した方がその後の行程もいくつか省けるね……。無い着眼点だった」
「ちょっ、なんでそこそんな粗いのさ!そこはペースト状にしないと効能が」
「ここはこうした方が良いって魔王から借りた本に書いてたんだよ。こう処理するのが1番こいつの効能を上げられるみたいなんだよ。実際このやり方に変えてから良くなった」
「その話詳しく」
「ハザード君寝なくて大丈夫なの?」
「元々寝かせるつもり無いだろアンタ。それにこの程度寝なくても1週間は活動出来る」
「……それ、人間としてどうなのさ?」
「さぁな。復讐を完遂出来たらそれで良いからな俺は」
「シレッと闇を吐かないでくれるかな?」
「えっと、そろそろ寝たいかなー、なんて……」
「寝かさないぞ」
「その言葉はもっと雰囲気有る時に言って欲しかったかなー」
「? なんの話だ?」
「あっ……。あー、なんでも無いよ。うん。忘れて」
「……?あぁ」
夜が明け、集合の約束をした時間が近付いて来る。
ガレリアは既に寝た。どうやらここ数日の疲れに根を詰めた俺への詰め込みに体の限界が来たらしく、最後に「もう無理」と言ってソファへと落ちた。
そんな彼女に、不躾とは思ったが軽く部屋内を漁って毛布を掛けて、置き手紙をしてから店から出た。
待ち合わせ場所に行ったらエンラジーが既に待っていた。
「サース君、昨日アレから何してたんですか?その、臭いがキツいですよ?」
「あー、少し待て」
心当たりしかなかったため、指輪から自作の清涼剤とミントの香油を取り出して水球を作り出して混ぜ、水球で体を覆う。そして水球を操って体を服ごと洗って、水分まで飛ばして、汚水となった水球を北門の外へと放って捨てた。
「これでどうだ?」
「確かにマシになりましたね。それに、相変わらず操作が繊細で正確ですね」
「俺はこれしか出来ないからな」
「それにしてもですよ」
それからエンラジーと駄弁っていたら水帝も来て、全員が集まったため、ダンジョンの許へと転移して昨日の続きを開始した。




