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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第四章:強化期間・前編
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人界のエルフとエルフの郷のエルフ


 要するにナディア・ガレリアはエルフ族だったということだ。


 しかし彼女がその事を隠す理由が、昔の俺ならわからなかったことだろう。


 エルフ族の彼女が己がエルフだということを隠すのは、つまり他の人間にその事を知られたくなかったということだ。


 彼女が正体を隠していた理由。彼女が俺にその正体を現した理由。何故今このタイミングで正体を現したかの理由。


 様々なことに考えを巡らせ、様々な可能性を検討し、そして最後に残った最も高い可能性を考え口を開く。



 「いつ帰るんだ?」


 「……もう少し、驚かれると思ってたんだけどなー?」


 「アンタの知識はその見た目の年齢にしては多く深過ぎる。マンドラゴラやソーマに関しては余りにも事情に精通し過ぎてる。なら考えられる答えは1つだろう?」


 「その理由だとハザード君も当て嵌まらないかな?君も十分年齢の割には強さも知識も逸脱してるみたいだけど?」


 「俺の同盟者は魔界の魔王だ」


 「………………考えてた中で、1番のビッグネームが出てきたね……。

 まさかあの方だったのね……」



 魔王のことを口にした途端、ガレリアは近くに有ったソファへと倒れるように座り込み、そのままソファに寝そべり完全に脱力した。



 「確かにあの方なら好きにマンドラゴラもソーマも供給出来るだろうし、あの方が指導してるならその強さにも納得だねー。


 なぁーんでよりにもよって天魔の魔王殿に気に入られてるんだろうねーサース・ハザードくーん?」


 「それは知らん。初めて会った時に何故か気に入られた。

 と言うか、アンタは魔王のことを知ってるのか?」


 「知ってるも何も、人界含め本当の長命種でしっかりとした思考能力を持つ全ての存在の中であの方は有名だよ。

 大袈裟に言えば、どの世界の住人も、そこに住む支配者層も、あの方の言葉には絶対に耳を傾けるし、もしあの方がこの人界を滅ぼすなんて言ったのなら、全世界がこの人界を滅ぼす為に動く。


 何故そんな偉大な方を同盟者なんてまるで対等みたいな言い方をハザード君がしているのか甚だ疑問だけど、そのぐらいあの方を知らない者は居ないよ。

 むしろこの人界に生きる人間達は物を知らな過ぎると言って良いね」



 言って、近くに生えていた観葉植物と思われる物を操り机に置いた飲み物を取って口へと運ぶ。


 植物を操っていることからもわかる通り、ナディア・ガレリアはエルフの郷出身のエルフだ。俺も詳しくは知らないが、アカバ王国でのエルフの郷出身のエルフは迫害を受けるらしい。理由は定かじゃないが、噂ではより自然に近い存在を妬んで迫害しているというのが市井での噂だ。


 しかし、彼女の過ごし方を考えれば、恐らくその噂も嘘ではないのだろう。



 「だったら物を知らない人族の俺に2つ教えてくれ。何故正体を現した?エルフの郷は実際はどういう所なんだ?」


 「前者はともかく……、エルフの郷についてってなんで知りたいのかな?」


 「単純に知らないことを知りたいだけだが?

 魔王のおかげで魔界という別の世界が在ることがわかった。魔王の出生から天界が在ることもわかった。竜人族は実際に存在していたし、もしかしたら俺の知らない世界や種族がまだまだ在るかもしれない。


 その中で、知ってはいるが存在しているかわからない場所や種族が有る。それがエルフの郷とそこに住むエルフについてだ。

 何故人界出身のエルフは木属性の魔法が使えずエルフの郷出身のエルフは木属性の魔法が使えるのか、エルフの郷側でその理由は判明しているのか、判明しているのならそれは何故なのか、そして彼等特有の技術は有るのか、有るのなら可能であればその技術や知識を学びたい。


 知りたい理由はこんなところだな」


 「…………その先に君は何を望むのかな?」


 「喫緊の目標は幼馴染みという名の腐れ縁であり現総帝であるフォルティス・サクリフィスと俺を見下してきた全ての奴等への復讐だ」


 「復讐って……」


 「あぁ復讐だ。ちなみにこれを話して魔王と今の関係になった」


 「…………その話を詳しく話してくれるかな?」


 「良いぞ」



 それからこれまでの話を掻い摘んで話した。

 話を進めるほどガレリアの表情が無になっていき、全てを話し終える頃には無表情で目を瞑って、操る植物で薬品を混ぜたり煮詰めたりといったポーションを作る作業を行っていた。


 そして全てを話し終えた時、俺の話したことへの反応を一切せず、淡々とした口調で語り始めた。



 「エルフの郷のエルフは人界のエルフとは違う。エルフの郷には世界樹と呼ばれる大きな樹を中心に広がる世界がエルフの郷なの。


 エルフの郷のエルフはこの世界樹から生まれたエルフなの。

 敢えて人界のエルフと差別化するなら、人界のエルフを人エルフ、私たちエルフの郷のエルフは精霊エルフと言える。


 元々人エルフはこの精霊エルフと人族が結ばれて生まれた種族なの。

 精霊……自然の力が意思を持った存在で、世界樹から生まれたから私たちは木属性魔法が使えるの。人エルフが木属性魔法を使えないのは、その存在が人に近付き自然から離れたから彼等は木属性魔法が使えない。


 人エルフが精霊エルフを求めるのは研究のため、子孫繁栄のため、より濃い精霊エルフの血を入れるために彼等は私たちを見つけ次第拉致してやりたい放題する。だからエルフの郷出身のエルフは人界ではエルフであること事態を隠すの。


 技術はポーション系や香なんかの植物を基にした物を加工する技術が主で、基本的に金属はエルフの郷には存在しない。


 私が貴方に正体を見せたのは今のダンジョンを攻略したらエルフの郷に1度来て欲しかったから。貴方のその技術を見込んで、故郷で色々と仕込みたかったから。


 どう?疑問は解消されたかしら?」



 語られた内容はしっかりと頭の中へと入った。

 しかし、彼女から感じる圧に更に浮かんだ疑問を投げ掛けることは出来ず、仕方なく頭を縦に振った。



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