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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第四章:強化期間・前編
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一時帰還


 魔石と皮と目玉を指輪へと回収して炎帝の言葉の真偽を確認するために最初の洞穴へと戻る。


 戻るとそこには炎帝の言葉通り帰りの魔法陣の手前にもう1つ魔法陣が出来ていた。

 魔法陣の行き先まではわからないが、まず間違いなく次の階層とでも言える場所に通じているだろう。


 そこでエンラジーやガレリア、何より帝達に向き直り彼等の目を真っ直ぐ見る。



 「とまぁ、ダンジョンというのはこういう場所だ。俺はこれから長期休暇が終わるまでの間、可能な限りこういう場所を回る。


 エンラジーの元々の目的である俺の修行を1度生で見てみたいという要望もこれで叶ったと思う。


 だから聞こう。これ以上着いて来るか、それともここで終わって普段の生活に戻るか。好きな方を選べ。

 言わなくてもわかるだろうが、俺はこのまま進む」



 ガレリアだけは俺が呼んだ訳だから彼女が帰る場合は首都まで転移で送るが、それをいちいち言う気は無い。

 此処に居る奴等はガレリアを除き全員が頼まれた訳でもないのに己の意思で俺に着いて来た奴等だ。各々が何かしら目的が有ったことだろうが、事前に把握している理由を考えれば目的は達成されたことだろう。


 なら、此処から先は完全に余分だ。これ以上着いて来るなら相応の覚悟を持ってもらわないと俺の目覚めが悪くなりそうだ。

 だから確認を取った。そして返ってきた返事は、エンラジーと水帝の2人がこのまま着いて来る。炎帝とガレリアは帰るという返事だった。


 それぞれに理由を聞けば、エンラジーは俺との差の自覚と自分の今の限界を知るためという理由だった。

 自分の限界を知るのなら何が起こるかわからない、もしもの時に転移で逃げることも出来ないダンジョン以外でやれよと思ったし、俺との差なんか知ってどうするんだとも思ったが、一言「そうか」とだけ返しておいた。


 水帝は引き続き俺の監視だと言った。それに風帝の件が有るから自分より発言力の有る炎帝に風帝解任の件の根回しを頼みたいとのことだった。

 これには「好きにしろ」と返した。俺を監視するとかほざいているが、本人の認識が正しく事実を口にしたのなら、俺は水帝より強いことになる。ならもしも俺を仕留めるなどの理由で着いて来るのなら戦闘終了直後などだろう。不意討ちであれば対処は難しいかもしれないが、そうでないのならいくらでもどうとでもなるだろう。それなら水帝にいちいち意識を割く必要も無いだろうと考えた為だ。


 先の2人と違い戻ると言った2人の内炎帝の方は、水帝の言った根回しの件や風帝の醜態やその実家への説明などで戻るためだそうだ。

 どうやら風帝は、あのクソ野郎よりも更に甘やかされて育ったギルドに様々な支援をしている大商会の商会長の娘らしく、その帝という地位も彼女の我が儘で前風帝である彼女の叔父であり商会長の兄のコネを使い手にした地位らしい。

 実際当時次期風帝候補が居なかったことと、彼女に少なからず戦闘の才能と風属性の適性が当時の冒険者を含めた人達の中では1番だったらしい。だから風帝としての地位を手に入れたらしいのだが、元から冒険者としての活動を一切していなかったことは問題視されていた。

 それが今回の件で致命的と判断したため感化出来ないと判断したため、彼女を安全な所に送り届けると頭を痛そうにしながら炎帝は語った。

 どうやら現炎帝は帝達の中で1番の歳上らしく、意外なことに、だから纏め役的な位置付けらしい。クソ野郎を見出だしたのは目の前の水帝らしいが、クソ野郎を育てたのは炎帝と前総帝らしい。だから現帝達の中ではかなりの発言力が有るらしい。


 ガレリアは単純に店の問題だった。

 この数日間は仕入れの為に現地に行くという理由で着いて来てくれていたらしいが、これ以上は流石に体力的にも精神的にもキツいらしい。

 それと実際に口にはしなかったが、俺を除いた時の完全な部外者である彼女が居るのに、ほぼバレてるとはいえ隠しもせず帝達が帝達の事情を話した彼等に対して目が完全に白けたと言っていた。呆れたのか、国のトップの実情に危機感を覚えたのか、店の理由を話した最後に「色々準備もしたいしね」とも漏らしていたため、言葉通り色々と準備をするのだろう。

 何の準備をするのかはわからないが、聞くのは野暮だろう。


 話している途中に風帝が起きた。しかしすぐに水帝によって気絶させられていたため、連続して呼吸困難による気絶で彼女の脳に問題が起きそうだが、それは些事というヤツだろう。



 確認を終えたため、そしてガレリアが帰ると言ったため、俺達は1度ダンジョンを出た。

 挑んだダンジョンから途中で脱出するというのは初めての経験だったため色々と好奇心を駆り立てられたが、ガレリアから「あの程度なら、次入ったら続きから挑戦出来ると思うわよ」と言外に『それ以上の詮索はやめておけ』と釘を刺された。


 一旦そこは彼女の言葉を聞いて、俺達は首都へと転移で戻った。

 空は太陽が空の1番上から沈む方へと傾き始めたぐらいで、お昼時ということもあり、そして1度戻ったのだからということもあり、結局半日しか経っていないにも関わらずその日は解散することになった。


 エンラジーと水帝を放っておいてそのままダンジョンに挑もうかとも思ったが、転移した直後にガレリアに「少しお店まで付き合って」と耳打ちされたため、仕方なく翌朝に再び挑むという運びになった。



 移動し、店に着き、ガレリア曰く工房兼事務所の有る奥へと通される。

 そこで適当にお茶を出されて今回の件のダンジョンでのことや報酬について話した後、彼女から本題を話された。



 「さて、ハザード君。君を引き留めたのは他でもない。君に見せたくなった物が有って引き留めたんだよ」



 そう言って彼女は指を鳴らす。

 すると途端に彼女の、特に頭部周りの空間が歪んで行き、落ち着いた頃には尖った綺麗な耳がそこには在った。



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