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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第四章:強化期間・前編
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第1層:ボス遭遇


 共有する前にいくつか現在の状況とガレリアが1人で斥候してくれた時の状況の整理を口にした。その後ボスの特性や何故見付からないかの推測を話し、その推測を基に考え付いた作戦を口にする。


 作戦を聞いて、当然だが帝の2人は難色を示した。

 水帝はわざわざ危険を冒すようなことはしなくて良いんじゃないかと。炎帝は親として息子の身を案じて。


 しかしガレリアと、何よりエンラジーが俺の考えに賛同した。

 ガレリアの理由を聞けば、単純に俺の推測を基にした場合に限るらしいが、相手の魔物に心当たりが有るからとのこと。エンラジーについては、まぁ、彼の真面目が故の理由だった。


 要するに、エンラジーは移動の時から自分と俺との差をひしひしと感じていたらしく、さっきの2本の角の生えた馬との戦闘を見てもこの先更に足を引っ張るかもしれないと考えているらしい。だから少しでも役に立てるなら、頼んで連れて来てもらったのは自分なのだからと彼は俺の作戦に賛同したようだ。


 エンラジーの理由を聞いて、炎帝のカオは益々懊悩するカオになった。しかし即座に否定するつもりは無いようだった。

 反対に水帝は全面否定。許可出来ないとのことだった。理由も明白で、上に立つ者として、現場に居るのに下の者に無茶はさせられないという人道的な支配者層なんて呼ばれる者達の目線での責任感からだった。


 4者主張は当然のものと言えた。しかし他に案が思い浮かばないならと、結局は俺の作戦が決行されることとなった。



 俺の作戦とは、発想事態は単純で、要するに囮作戦だった。


 俺の推測は、つまりボスの魔物にとって己より弱い個体を強襲する。そんな小賢しい魔物がボス魔物だという推測だ。


 合流する前と後での明確な違いは1人かそうじゃないかだ。

 合流する前、ガレリアは1人だった。そのガレリアが、逃げるだけなら出来ると言ったということは、ボス魔物の強さとしてはガレリア以上で俺を除けば風帝以下ぐらいだろう。


 1人の時に、ガレリアの実力で、ガレリアが逃げられる程度の強さで、現時点では1人でなければ気配さえ発しない。それがボス魔物の特徴と言える。

 つまりこのボス魔物は弱い者を獲物とする小者ということが察せられた。だから考え付いた作戦は囮作戦だった。


 姿を見せないのなら釣れば良いのだ。

 2人には悪いが、姿を見せない魔物や動物はエサで釣れば良いのだ。




 囮となるのはガレリアということになった。

 単純にこれは先程の状況の再現の為と、本人の言葉通りならボス魔物がなんの魔物かある程度の予測が出来ていることと、実力も含め以上の理由からエンラジーよりは生存確率が格段に上だろうからと判断されたためだった。


 エンラジーは最後まで「この場では役立たずの自分が」とか「女性を危ない目に遭わせる訳には」とか色々ゴネていたが、前者には「お前の主戦場は戦闘だろ」と、後者には「そこの水女とお荷物の風女相手でも同じことが言えるのか」と言えば流石に黙った。


 何やら「水女って……」とか怒気を孕んだような声が聞こえた気がしたし、水帝から若干魔力が一瞬漏れたが無視した。例え偽名だったとしても親好が有る訳でもない相手の名前を呼ぶ気は無い。呼ぶなら役職名と一緒にだ。



 そんなこんなで作戦は実行された。

 戦う場所は馬と戦った所だ。ここは広く見通しも良いため遠距離で攻撃されれば一方的に殺られる場所でも有るが、死角からの攻撃でも対処しやすいのは視界が開けている此処の方が良かった。


 この空間へと転移してきたあそこもある程度の広さは有る。

 最初ガレリアが身の危険を感じたのも最初の洞穴の有る場所の方が近かった。だがあそこには本当にもしもの場合のダンジョンからの離脱用である転移魔法陣が有る。戦闘でもしその魔法陣が壊れでもすれば、俺達は此処を攻略しない限り一生閉じ込められることとなる。それだけは避けたかった。だから馬と戦ったこの場所をボス戦の地と定めた。


 作戦はいたって単純だ。

 ガレリアがこの森を歩き回り危機感を覚える方へと進んで魔物と遭遇し、そのままその魔物をこの場へと誘導してくる。たったこれだけだ。


 この作戦を成功させる為に、俺とガレリアの合作で、手持ちの薬草やら香草やらを使って魔物が興奮する香を即席で作りあげた。

 それに火を点けガレリアに持たせ歩き回らせる。こうすることでボス魔物が興奮して冷静さを失い、誘導するガレリアを追って来なくなるという可能性を排除した。

 あとついでに魔物誘引の香もガレリアに教えてもらい作り、これはすぐにその場で焚いた。これで更にボス魔物が此処に訪れる可能性を上げる。


 懸念点は、ガレリアがこの場へと誘導してくる前にボス魔物に殺られないかということ。そして復活しているかもしれない他の魔物に襲われたりしないかという2つの懸念点が有った。

 しかし香の件もそうだが、そもそも普通の魔物ではなくダンジョンの魔物に今回の作戦が通用するのかというそもそもの問題が有る。だがこればかりは試すことでしか解決出来ない問題だ。


 俺達は行き詰まったんだ。なら、今出来ること出来そうなことは試さなければ生き残れない。



 ガレリアを待つ間、俺達の間に会話は無かった。

 風帝と彼女を背負っていた炎帝はこの場には居ない。2人は入口である魔法陣の有る洞穴の前で待機してもらっている。

 彼等が居ない理由は簡単だ。足手纏いとそれの一応の護衛及び監視の為だ。

 流石に無いとは思いたいが、もしもボス魔物との戦闘中やその戦闘直後に奇襲でもされれば堪ったもんじゃない。そうなれば俺は確実に風帝を殺す。

 そう強く宣言した結果、水帝と炎帝は話し合い、こういう形になった。


 残った水帝にはエンラジーの補助を任せた。本人達曰く、エンラジーの火属性の師匠は当然炎帝らしいが、水属性の師匠は水帝らしい。だから普段から彼等はよく組んで修行をしているらしい。形態としては、ギルドの高ランク依頼をこなす時の俺と魔王のような形態だ。



 会話の無いまま体感30分前後が経った頃、洞穴を背にした時の西北西の方角から、木々が割れるような音と何か大きなものが走っているような地響きが聴こえて来て、そのすぐ後にはガレリアが姿を現した。



 「釣れたよ!!」



 言葉とそいつの姿を認識したのはほぼ同時だった。


 全身をピンク色へと染め上げ、目は赤く充血し、舌と涎をだらしなく撒き散らしながら木々を割りながら現れたそいつを、俺は魔王から借りた書物で知っていた。



 「トランレオンか!!」



 そう叫んだ直後、全身を周囲の景色融け込ませることで姿を隠し奇襲するカメレオンの魔物の舌がガレリアを捕まえようと伸びた。



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