第1層:続・探索
話はそこで終わり、俺達は探索を再開した。
風帝は炎帝が背負うこととなった。
どうせなんだからそのまま連れ帰れよと思ったが、どうやらそれはそれこれはこれということらしい。
何故女の水帝ではなく男の炎帝が背負うことになったかと言えば答えは簡単で、単純に属性相性と実力、そして危険度の3つの理由から彼が背負うことになった。
炎帝がお荷物を背負い、俺、エンラジー、炎帝、ガレリア、水帝の隊列でこの森の中を進む。
途中蛇や熊やホーンラビットなんかの魔物が襲って来たが、それ等全部を片手間に処理してその戦利品を回収した。
そんなことを永遠と続けて行けば、この場所の構造というか性質というものが見えてくる。
この森は円形型で出来ていて、壁と言える場所まで行きその壁を越えると、越えた壁の場所と正反対の壁に出る。つまり実質的に永遠とこの森は続いているらしい。
この森にも宝箱は有った。ただそれはホーンラビットの巣穴の中や、天然の落とし穴の底だとか、低木系の植物の群集地その草の中に周囲の色に溶け込むような色の宝箱として存在していたり、しっかり探さないと見付からないような場所に隠されていた。
見つけた宝箱の中からは様々な装飾品や素材と言えるものが出てきた。
ポーションの材料となる薬草から、透明なガラス板、恐らく何かしらの能力が有るだろう指輪に、宝石類。時には普通に鉄が出てきた。まぁこの鉄は完全に酸化していて真っ赤だったが。
ボスの居そうな場所は無かった。そして最初、ガレリアが斥候で前を歩いてる時に始めに逸れたあの場所の先に進んだが、その時ガレリアが感じたらしい悪寒はその後向かった時には何も感じなかったようだ。
この事から、この森の王とも言えるだろうボスは、この森を徘徊している可能性が出てきた。
その可能性を共有し、もしかしたら襲撃が有るかもしれないと伝え、各々に襲撃への警戒もするように伝えた。
そうして散策すること体感3時間。ボスと呼べる魔物とすれ違うことなくこの森を探索しつくした俺達は途方に暮れていた。
宝箱は目に付く物は全て開けた。当然中の物も回収した。
魔物とも何度か戦闘を行ったが、むしろそれだけで、それ以上何かが起こることはなかった。
風帝も2度ほど目を覚ましたが、その度に水帝が気絶させていた。
魔王から借りて読ませてもらった書物には気絶する度に脳がダメになるとか書かれていた気がするが、まぁ鬱陶しい相手の脳がどうなろうが俺からすれば至極どうでも良い話だった。
そんな探索を一通り終え、これ以上ここの攻略をどう行えば良いのかわからない。そんな状況に陥ったから途方に暮れていた。
当然これでこのダンジョンは終わりと言われればそれまでだが、実際ボスらしき気配はしているのだ。ならばそいつを殺らない限りこのダンジョンはこれ以上の攻略が出来ないということだった。
しかしボスと出会えない。
だから俺達は困り果てていた。
「なぁガレリアさん、最初危ないと思った時の気配がどんな気配だったのか、改めて教えてくれないか?」
「最初に話した通りだよ。それ以上近付いたら殺されると思った。そうだな、頑張れば逃げることは出来そうだけど戦ったら絶対に敗けると確信するような相手と相対したみたいな感覚かな」
「……そうか」
俺で言えば魔王と初めて会ったあの時の感覚に近いのだろうか。いや、俺はあの時死を覚悟した。というか生きることを諦めた。それを思うと彼女のその感覚は正直わからない感覚だ。
しかし他の奴等はその感覚がわかったらしい。何も言わないか「なるほど」と漏らしていた。
仕方がないため状況を整理し直す。ガレリアが危機感を覚えた時とそれ以外の時の違いをだ。
そうして考えていると1つの可能性とそれに対応した作戦を思い付いた。
だがそれは、正直推奨することが出来ない。確実に1歩間違えればエンラジーかガレリアの命が危ないからだ。
しかし考える限りでは思い付いた作戦以外可能性は極めて低い。
なら、
「なぁ、1つボスと出会えない可能性の理由とその解決策を思い付いたんだが」
一応共有するしかないだろう。どんな結論が出るにせよ。




