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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第四章:強化期間・前編
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夜営準備にて


 身体強化で走り、誰か1人の魔力が切れれば普通に歩き、魔力が回復すればまた身体強化で走る。これを何度も繰り返し空が紅くなって来た頃、拓けた場所を探してそこで1泊することにした。


 移動中に会話はしなかった。というか、俺と帝達以外の2人が息も絶え絶えといった様子で余裕が無さそうだったためだ。


 身体強化をするだけなら魔力は使わない。魔力を練り、体内で循環させる。身体強化の魔法はたったそれだけで肉体を強化する魔法なのか技術なのか微妙な魔力の使い方だ。だから身体強化で魔力が切れるというのは強化の段階を上げる為に使う。つまりエンラジーとガレリアは俺の身体強化に着いて来れなかったというわけだ。まぁ、恐らく、強化の仕方に問題が有るんだろうな。夕飯の準備中に指摘しようと思う。


 最初にエンラジーの魔力が切れ、エンラジーの魔力が回復するまで歩いてる時にガレリアの体力が無くなった。

 ガレリアは俺が同行を頼んだため、途中からは背中に背負い走った。


 そうして拓けた場所に着き、ガレリアを降ろす。



 「今日はここで1泊する。帰りたい奴は一旦帰っても良いぞ」



 言うだけ言って、近くの木の枝を適当に折って、折った枝に魔力を流して枝の中の水分に干渉して水分を抜いて枯れ枝にしていく。そしてある程度溜まったところで枯れ木を組んで火打ち石を……、取り出して火打ち石を打とうとしたところで良いことを考えた。


 火打ち石だけでなく鉄と魔石、またも近くの木の枝が太い部分を魔力で強化したナイフで切り落とし、これも水分を抜いて、これ等の材料を基に魔道具を作る。


 作るのはただ火を簡単に着けるだけの生活が楽になるためだけの道具。魔王の城に有る電灯を点けるスイッチのような物で火が出る、そんな道具を。魔石に蓄えられた魔力が無くなれば使えなくなり、補充すれば使えるようになる、そんな道具を。


 製作はすぐ終わり、想像通りの物が出来た。

 それでスイッチを押せば、簡単に火が点く。


 火が点いたことで一段落と顔を上げれば、他の4人が俺のことをジッと見ていた。



 「なんだ?」


 「なんだって……」


 「ハザード君ハザード君、私は君が何をしたのかわかるけど、それでも驚きなんだけど。

 便利な物作ったね」


 「学ぶ機会が有ったからな、俺的には久し振りの1人行動で必要になったから作っただけだ」


 「そっか……」



 話はそこで終わり、夜営の準備の続きを再開した。


 この中で唯一ガレリアだけが冒険者じゃないため夜営の準備が出来るかどうか心配だったが、どうやら彼女は普段から自分で森などに入り採取をしていて夜営事態の経験はそこそこ有るらしく、手際が良かった。


 逆に風帝である女はずっとその場で突っ立ってるだけだった。

 気になり聞いてみたい気もしたが、ここまでのことが有るため話すのが面倒臭いため無視した。


 そして森へと入り動物を狩って戻ると他の面々は各々が何処かへ行ってるみたいだったが、火を興したそこには未だに風帝は突っ立ってるだけだった。

 それがどういうことなのか悟り、呆れながら言うことにした。



 「もうお前帰れ。邪魔だ」


 「何。とても失礼」


 「どういう意味かはわかってるだろ。お前、どうやって帝になったんだ?世間知らずの小娘は家のベッドで寝てろ」


 「帝ということを除いても失礼極まりない。貴方は学園で何を学んでいるの」


 「……何処かの富豪の商家の出か?手が綺麗だ。それに身なりもよく見れば手入れが行き届いてる。お前、そもそも夜営どころか普通の冒険者みたいに冒険に出たこと無いだろ」



 指摘すれば風帝は手を隠して睨んできた。

 呆れて言葉が出ない。炎帝の言っていた通り、どうやら本当に精神がガキらしい。


 そんな話をしていたら炎帝とエンラジーが帰ってきた。2人の腕には木の実と血濡れた兎が抱えられていて、今夜の飯の調達に行っていたことは明白だった。

 それでより一層目の前の女に呆れ返り、炎帝へと言葉を投げた。



 「炎帝……、いや、今はエンラジーの父親か。アンタからもこのガキに帰るように言ってくれないか?それと出来ればコイツを風帝から降ろすことを強く推奨する。

 どれだけ強かろうが、どれだけ風属性に優れていようが、コイツは何処まで行っても冒険者ではないただの小娘だ」



 俺の言葉に怪訝なカオをする炎帝だったが、この場の状態と風帝の様子に全てを察したのだろう、顔を隠して天を仰ぎ、そして大きく溜め息を吐いた。



 「ここまで……、ここまでだったのか……。これがもし他の帝達も……、だとしたら……、ハァ……。仕事がまた増えそうだ……。


 ハザード、コイツと一緒にこれの下処理していてくれ。なんなら俺等は無視してくれて良い」



 そう言うと炎帝は抱えていた兎を地面へと置き、何も言わずに風帝へと近付いた後、その肩に手を置いて転移で何処かへと飛んで行った。


 残された俺とエンラジーはお互いに顔を見合わせ、捕らえた獲物がダメになる前にと狩って来た肉の処理に移行した。


 エンラジーがどうかはわからないが、少なくとも俺は風帝の存在を完全に忘れて。



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