いつもの3人+α
しっかり睡眠を摂り、十分に体の疲れが取れて起きたのは2日後の夕方だった。
丸々2日間寝ていたことになる。
流石に寝過ぎなような気もするが、それだけ肉体的・精神的に疲れていたということだ。その事をいちいち気にする必要は無いだろう。
いつでも戦闘が出来る、しかし革防具なんかは身につけない軽装に着替えて廊下に出る。
周囲に生物の気配は無い。だから当然給仕の姿も無い。
流石に2日間も寝ていたからか腹が減っているため食堂へと向かう。
すると生物の気配をいくつも感じるようになり、人の喋り声なんかも聞こえ始めた。
食堂の中に入ると、確かベルフェゴールと言ったか、学園の授業でギルドの依頼を請ける実習当日に到るまでの1ヶ月間、嫌々魔王に言われたからと俺の相手をしてくれていた男が、ルシファーとサタン、それにレヴィアタンの3人に囲まれる形でその口へと無理矢理食べ物を口の中へと入れられていた。
「……何をやっているんだ?」
近くまで行き、声を掛けると、ベルフェゴールを除く3人が一斉にこちらを見た。
そしてベルフェゴールの口へと食べ物を実際に突っ込んでいたレヴィアタンは、その匙をベルフェゴールの口へと突っ込み、まるで蛇のように俺の全身に巻き付くようにして首元へと抱き付いて来た。
「サースぅー、また男を上げたのね。あぁ、なんて力強いの。本当に嫉妬しちゃうわ」
耳元でハァハァと息を荒らげながらそんなことをレヴィアタンは宣う。
一瞥だけして視線を残る3人の方へと戻せば、ベルフェゴールは白目を剥いて力無く椅子の上で気絶していた。
それをルシファーとサタンが頬を叩き、肩を竦め、口に突っ込まれた匙を抜いたあと立ち上がり、こちらを見た。
「よぉ人間、また強くなったみてぇだな?」
「人間よ、魔王様から聞いている。またも死闘を潜り抜けたそうだな」
それぞれ言葉は違うが、その言葉の声色からして純粋に関心してくれていることが感じ取れた。
それを肩を竦めることで流し、「魔王は?」と彼の居場所を聞く。
「大将なら地下だ。お前が連れて来たらしいあの骨、大将も気に入ったみたいでな。お前の持って帰ってきた物の鑑定が終わってからは俺達が使う時以外ずっと戦ってるぜ」
「珍しいことに、肉弾戦でな。
人間、あの骨は良いな。近接戦闘しか出来ないことには一言言いたいが、それを補うほどの圧倒的な強さが有る。
俺達も一時魔王からあの骨を借りて死合ったが、アレは良い。
だからこそお前があの骨に、例え弱体化を喰らっている状態でも打倒しえたというのは正直信じ難い。
故に、だ人間よ。この後俺と」
「『俺から離れろ』」
一瞬で強化出来るだけ身体強化の魔法で肉体を強化し、奥の手を使ってレヴィアタンに命令する。
そして俺から離れた一瞬で彼等から離れて食堂を後にする。
追い付いては来ない。奴等は面白い玩具が目の前に有っても、それが魔王に関連したモノなら深追いはしない。
俺が魔王の居場所を聞いたんだ、この後俺が魔王の所へ行くのはわかりきったことだし、どうせ彼等が戦うのは今向かっている所だ。彼等の認識なら、俺が先に向かったと最初は考えるだろう。
彼等と相対すればまだ蹂躙されることは目に見えている。自分から死にに行くような馬鹿はしたくない。
何より、魔王が止めない限り奴等は際限無く俺を玩具に遊ぶ。だからこういう時は、例え一瞬でも逃げるが勝ちだ。




