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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第一章:彼との馴れ初め
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「ッハッ!」


 ライフスタイルが変わった関係で正午更新が難しくなりました。

 ですので明日からの定時更新は18時とさせていただきます。




 午後から俺は、ギルドでポーションを卸してから軽く依頼を請け、依頼達成をした後転移で魔王の待つあの廃城へと転移した。


 本来であれば今の俺の魔力量では転移は出来ないが、幸い腕輪が俺には有るためその魔力で転移した。



 「やぁサース。お疲れ」



 場所は初めて魔王と会った時の玉座の間。そこにあの時と同じ格好で座る魔王に出迎えられながら、俺は魔王に向かってただ属性の魔力を球状にして放つだけの魔法である属性弾を放った。


 魔法は真っ直ぐ綺麗に飛んでいき、魔王の顔面に当たるというところで壁に当たったかのように潰れた。


 それを認識すると同時、魔王の拳が己の視界を埋めていた。

 すんでのところで上体を反らして避け、その腕を掴んで巻き込み地面へと倒す。しかしそれを読んでいたかのように魔王は俺に掴まれる腕ごと床へと叩き付けた。



 「ッハッ!」



 肺から空気が無理矢理押し出される。このままだとそのまま地面に何度も叩き付けられることは経験で既に学んでいるためすぐに魔王の腕から手を押し返すように離し、その反動を利用して魔王から離れて起き上がる。


 「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」


 「反応速度が上がってるね。流石サース。じゃあ次はこんなのはどうだい?」


 言葉と同時、大きくバックステップした魔王の後ろにいくつもの属性弾が生成される。

 この腐れ魔王は、その魔力量と創造属性という稀有な属性によるゴリ押しで着けてるだけで対応した属性を扱えるようになる指輪をこうやって俺に消し掛ける為だけに創りやがって、こうして放って来やがる。

 本人曰く通常の属性弾でも必要とされる魔力量は10倍とかなんとか言ってたが、それをこうやって惜し気もなく使える魔力量が有る時点で俺からすればクソッタレだ。



 一斉に飛んでくるそれぞれの属性弾を時には回避し、時には手や腕に魔力を纏って弾いたりしながら魔王との距離を詰める。途中何度か回避またはいなしただけでまだ生きてる属性弾が戻って来て背中側から奇襲されることも有るが、それもまた回避したりいなしたりで防ぐ。


 「そらそら、避けたりいなしたりだけじゃ俺の許まで辿り着けないぜ」


 魔王の言葉通り、属性弾を避けたりいなしたりだけでは反撃なんて夢のまた夢、このままでは魔王をぶん殴ることなんて出来ない。

 だから俺は、全身に魔力を行き渡らせながら、特に脚に魔力を集めた。そして十分に溜まったと判断したその次に魔王と向かい合う形に脚を止めたとき、魔王側から飛んでくる属性弾の弾幕が一段落したと同時に地面を蹴って一息に魔王との距離を詰めた。


 魔王はそれも読んでいたのか普通にまた1歩大きくバックステップをして俺から距離を置き、先程まで自分が居た辺りにそれぞれの属性の属性弾の数々を配置した。

 それを認識しながら俺は、魔王目掛けてドロップキックの要領で跳び上がり、勢いそのまま足から魔王に突っ込む。

 属性弾と接触すると同時に脚から凄い衝撃が伝わるが、幸い着弾したのは足の裏のみ。着弾により勢いは少し削がれたが、そのまま魔王に脚から突っ込んだ。


 これを魔王は横に避けながら俺の足首を掴み、俺の勢いを利用してその場で半回転し、この玉座の間の入口、俺が来た方を向いたと同時に手を離した。


 勢いをむしろ増して俺は玉座の間の入口方面へと飛んでいき、扉横の壁に激突する。

 飛ばされた時に姿勢を立たせてなんとか頭から突っ込むことは阻止したが、それでも背中から伝わる衝撃はそれだけで俺の口から血を吐かせるには十分な破壊力が有った。


 俺がそんな状態だが、そんなことは関係無いと、地面に落ちた俺目掛けてまたも属性弾が飛んで来る。


 防御姿勢を取り回復したなけなしの魔力でまたも全身に魔力を行き渡らせ、今度はよりその魔力の浸透を速めて純度を上げる。


 俺の準備が終わると同時、俺を覆うようにして属性弾が俺の体を襲った。

 火によって体の表面を少し焼かれ、水によって腕に水膨れが出来、風によって所々切り傷が出来、土によって体中のあちこちに痣が出来た。



 属性弾の雨が止むまでなんとか堪え、しかし止んだと同時に体が限界だと悲鳴を上げて体は前のめりに顔面から倒れた。


 痛む体とは別に顔面が痛い。


 そうやって痛みに喘ぎながら痛みに堪えていると、少しだけ体が楽になった。

 顔を上げて見てみれば、魔王が俺に手を翳しながら白い魔力──恐らく光属性による治療──を放っていた。



 「ジャスト1分。1ヶ月前を思うとたった1ヶ月でかなり延びたなサース」



 その言葉を聞いて、俺は少し回復したことで動かせるようになった右腕を動かし右手を握った。中指だけを立てて。



 「ガラ悪いな……。まぁでもその下剋上上等みたいな反骨精神がサースの強みでもあるよね」



 今度は親指だけを立てて下に向けた。



 「はいはい悔しいのはわかったから。そろそろ起き上がれるでしょ。さっさと起き上がって今の振り返りをしよう」



 そう、これは俺と魔王との模擬戦。本気の殺し合いを想定した模擬戦だった。

 開始の合図は俺から魔王への攻撃。魔王はそれを喰らっても良いし、避けたり防いだりしても良い。それから俺が行動不能になるまで容赦なく攻め続けるってのが俺と魔王との間で決めた模擬戦のルールだった。

 そして終われば今度はその内容を振り返って次に活かす。俺達の……というか、魔王の課した俺の修行の内容はこれだけだった。



 魔王の言葉と共に、腕立て伏せのように腕を立て、その腕の床を押す力だけで上体を起こしその場に座り込む。そして頭を掻いた。


 「だぁ゛ーークソッ!また1発も入れられなかった!!」


 「そう簡単に魔王が1発貰ってやるかっての。てか今回は手加減してるとはいえ1発当たりそうだったんだけど俺。そこんとこ天魔の魔王としては物凄く驚いてるんだけど?」


 「当たんなきゃ意味無ぇよ。どんな鋭い刃も、どんな破壊力の有る一撃も、触れたものを即殺する力の有る攻撃も、全部当たんなきゃ意味無ぇよ」


 「もし当たっても、そもそも相手に効くかどうかはそれもまた別だしね~」


 「そういうことだ。あ゛ークソッ、負けた!!


 あー、で、今回はどうよ?」


 「攻めの姿勢は良かったよ。相手の攻撃への対処も物凄くマシになった。でもまだまだかなぁ。具体的には───」


 「あー、そこはまぁ確かに、自覚は有る。そうだ、最後ドロップキックしたあの場面って───」


 「あぁ、あそこは難しいよな。俺も同じ場面なら悩む。俺だったらそうだな、───」


 「なるほど…。じゃあまぁもう少し考えてみる。あと個人的に気になるのはさ、───」



 魔王との模擬戦は本当に為になる。何が良くて何がダメだったかよくわかるし、魔王なりに俺ならどうしたら良いかをちゃんと考えてくれてるのがわかる。それを実践すれば、ちゃんと次へ繋がったなんてことはこの1ヶ月で散々経験した。


 学園でしか学べない知識は確かに有るが、やっぱり実戦訓練は魔王とやるに限る。着々と伸びていくのが一戦一戦自覚出来るなんて、充実してる処の話じゃないからな。



 これが今の俺の日常だ。



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