葉のうらに
[chapter:設定・説明]
pixivにも掲載。
プラトニックBL。切ない→終盤イチャイチャバカップルに。一応ケンカップルのつもり。
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呪いをかけられた訳有りクール×一途で健気なツンデレ
キーワード:ハッピーエンド 切ない 同級生 ケンカップル 呪い クール ツンデレ 健気 幼い頃にある事件によって両親を失った高木。その時犯人である謎の男から、今後の人生を狂わされるある厄介な呪いを掛けられてしまう。男曰くそれは「人を愛せない呪い」……?
・高木 優樹
主人公。高2。訳有りなクール攻め。小学生の時にとある事件によって両親を失う。その時犯人の男から掛けられた「呪い」により、自身の意思に反して他人を拒絶してしまうようになった。人に好意を伝える事が出来ない。呪いのせいで周りから孤立し一匹狼状態。現在は母方の祖父母の家に暮らしている。首周りに蔓模様の黒い「呪い」のあざがある。あざは年々濃くなりつつある。普段はネックカバーで隠している。
・若葉 奏音
高2。一途で健気なツンデレ受け。
最初は高木と仲良くしていたものの、「呪い」のせいで高木に密かに片想いしている事がバレてしまう。以来喧嘩別れしてギクシャクし二人の関係は冷え切ったまま……。
友達はそこそこ多く、たまに遊ばれている。
[chapter:未だ見えぬ迷路の先]
人に想いを伝えられるのが
こんなにも幸せで尊いもので でもどれだけ難しい事か
あの頃までは考えた事もなかった
――同時に
意図せず大切な人を傷つけてしまう事が、
こんなにも辛くて 悲しくて 苦しくて 怖いだなんて
知らなかった ――知りたく、なかった
胸が張り裂けて 心をすり減らしていく
これは一体 何の地獄だろう
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[chapter:枯れ落ちた日常]
目の前の光景に現実が飲み込めない。
「人を捨てておいて自分達だけ幸せになろうだなんて都合が良すぎるだろう?」
見上げればよく見慣れた我が家の天井と血走った目の見知らぬ男。
その右手にはナイフが握られていて目の前に切っ先を突きつけられる。左手で首を絞められそうになり、俺はそいつの手を剥がそうとじたばた藻掻いた。
「っ……」
すると更にギリギリと首を絞められ、その苦しさに涙目になる。
「絶対に許さない――俺はお前らを絶対に許さない」
男がナイフを振り上げる。
もう駄目だ。
俺はぎゅっと目を瞑り、次に来るであろう衝撃に身構える。
次の瞬間、扉がばん、と音を立てて開かれた。
「動くな!警察だ」
次々人がわらわらと入ってくる。
瞬く間に数人掛かりで男を羽交い締めにした。男の手からナイフが落ちる。
男は離せ、と狂ったように喚いて暴れた。
「お前らを呪ってやる!死んでも呪ってやる!二度と人を愛せないようにっ!お前らが幸せになる資格なんてねぇんだよ!!!」
男が血走った目でそう吐き捨てたのを見たのが最後、俺は意識を失った。
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*****
この世界には誰一人として俺を理解する者も愛する者もいない。
――いや、居たか。唯一俺を見てくる、物好き
が。
「邪魔なんだけど」
自身の荷物を取る為に席を立って後ろのロッカーまでつかつかと歩いて行った高木 優樹は、先程からこちらの姿を目で追っていては、目的の棚の前を立ち塞いでいる人物に言った。
「な、何だよ」
「荷物取るのにそんな所に突っ立ってたら邪魔だろうが」
「っ、……」
彼――若葉 奏音はそれよりも高木の姿を目で追っていたのがばれてないかを気にしているようだった。動揺しつつ気まずそうに顔ごと視線を逸らしてさっと退く。
先程まで彼の周りに居た友人達は高木が近付いた時点でそそくさと逃げていた。関わり合いになりたくないのだろう。
教室内のクラスメイト達は緊張した雰囲気で遠巻きに二人の様子を見守っている。
高木は無言でロッカーから荷物を取ると、何か言いたげな若葉を冷たく一瞥した。
「……ずっと人の事見てきてきめぇんだよ」
「っ、な……っ!」
「若葉、やめとけって」
気にしていた事を言われ若葉は思わずカッとなるも、友人の育田に窘められて何とか感情を抑えた。
高木は特に気にした様子も無く元の席に着く。
事の次第を見守っていたクラスメイト達から張り詰めた空気が掻き消え、元のざわめきが戻ってくる。
それを見た育田が溜め息を吐いてもう一度若葉に向き直った。
「何でお前らこうなったの。前は仲良かったじゃん。どうした?」
「……」
育田に小声で問われたが何も答えられなかった。若葉には心当たりがある。あの日の出来事を境に二人が距離を置いたのは事実だ。
「……分からないよ」
消え入りそうな声でやっとそれだけ嘘付いて答えた。
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***
まだ肌寒さの残る四月。クラス替えが発表されてから半月程度経つが、もう既に皆それぞれグループを作り始めているようだった。
高木は一人席でポツンと佇んでいた。誰も話しかけようとはしない。そりゃそうだ。誰が好んで人嫌いしてる一匹狼な奴と友達になるものか。それも一年の時にクラスで騒ぎを起こした奴を。事件を知る同じクラスだった人なら尚更だろう。
――もう、慣れた事だ。
人に嫌われるのも。このネックカバーの下に隠れた首に広がる忌々しい、「呪い」の痣も。――自分の本当の気持ちを誰にも言えず胸の内の引き出しにそっとしまう日々も。
「なあ」
「……。……?」
呑気な声が、自分に向けられたものだと頭で理解するのに数秒遅れた。
見上げるとそこには柔らかい毛質の髪を掻き上げ、人好きしそうな笑顔をこちらに向けた男子生徒がいた。
「俺、育田って言うんだ。そんでこっちは若葉」
「……」
「ちょ、ちょと待てって、育田」
育田と名乗った男子は後ろを指差す。指されたもう一人の彼は顔面蒼白になり、慌てて声を上げた。
怖いもの知らずな相手の行動に周囲がざわめく。そこには好奇の目も入り混じっていた。
若葉と呼ばれた彼は恥ずかしがり屋なのか、高木と目が合った途端反射的に目を背けて頬を掻いた。
「……よ、よろしく、」
「……」
そこで思わず高木はふっ、と笑みをこぼした。
「な、に笑ってんだよ……っ!」
「お前ほんとツンデレだよなー。少しも萌えねぇけど」
「はっ?!」
とうとう高木は耐えられなくなって思い切り声を上げて笑ってしまった。目の前の二人は勿論の事、周囲のクラスメイト達が高木の珍しい姿に呆気に取られていた。
これが高木と育田、そして若葉の三人の出会いとなった。
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***
育田と若葉に出会ってからというもの、高木の日常は一変した。
いつも一人で居るのが当たり前だった高木に、高校で初めて友人が二人も出来た為だ。次第に休み時間も放課後の帰り道もいつも三人一緒に居るのが当たり前の流れになってきた。
とはいっても育田が一方的に喋り、二人がそれに受け答えするというパターンが多かったが。
「次、数学だってだるくね?」
「俺的には育田のノリがしんどい」
「俺も」
「二人ともひどくね?」
育田は何が面白いのかけらけら笑いながらそういえば昨日のTV見た?、なんて話題を変えて質問してくる。切り替えの早い奴だ。
以前はスマホゲーム等の一人で遊べるものしか知らなかったが、育田のお陰で他人との交流の深め方や遊び方を沢山覚えた。
カラオケ、ボーリング、映画、ファミレスで食事……。昔小学生の時にやったTVゲームやトランプも久々にやってみると相手がいるというだけで楽しさが全然違う。高木にとってはそのどれもが新鮮に見えて楽しかった。
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***
そんなある日の放課後。
「今日は育田が居ないんだな」
若葉が嗚呼、と頷く。
いつもなら帰り道に誘ってくれる育田が、他の用事があるとかで先に帰ってしまったのだ。
教室内には目の前の若葉一人しか居ない。
ふと、そういえば若葉と二人きりで面と向かって話すのはこれが初めてではないかと思い至った。いつもなら育田が勝手に話を盛り上げて二人の仲も取り持ってくれていたのだ。
「あ、あのさ」
勇気を持って話しかけてみる。すると向こうも何となくぎこちない感じになった。
「……帰るか」
主語のない言葉に意図を理解した若葉がこくり、と頷いた。
***
二人きりの帰り道は暫く無言だった。
そもそも何を話していいか分からない。
若葉は育田と自分以外にも友人が多く居て、よく他のクラスメイトにイジられているのを見かける。若葉はどちらかといえば不器用であまり交友関係に積極的でない性格だが、意外に愛されキャラなのかもしれない。
「若葉って友達多いよな」
「あ、あれは何ていうか遊ばれてるっていうか……」
ごにょごにょと言い訳するも完全否定はしない。
そんな姿を見てふと内心、自分と比べてしまう。
――本当の気持ちを伝えられず愛されない自分。本当の気持ちを伝える手段が有るのに、伝えなくても愛される人間。
「高木?」
はっと我に返る。今、何を考えた。
これではまるっきり彼に対する嫉妬ではないか。
「……何でもない」
平静を装って答えたが、訝しがられただろうか。
「……」
「……」
再び二人の間に沈黙が落ちたその時、若葉が何かに気付いた。
「……レイン君」
「え」
「それ」
若葉がちらりと目をやったのが、高木の鞄についていたカエルを模したキャラクターのキーホルダーだった。
「ああ、お菓子のおまけについてたんだ。何。好きなの?」
「まあ、集めてるし」
「へえ……あ、そしたらこれいる?」
「いいのか?」
「別に。適当につけてただけだから」
若葉が目を輝かせてありがとう、と言ってそれを受け取る。
若葉が言うにはこのキーホルダーは全7種でそれぞれレイン君が別々の格好をしているらしい。残りの一種が全然当たらなくて困っていたところ、偶々高木が持っていたわけだ。
今度何かお礼する、と言われたが別にいいと断った。
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若葉の意外な一面を知ってから、二人は徐々に打ち解け合っていった。育田を交えた三人の時は勿論、二人だけの交流の場面も増えていった。育田と若葉を介してその他の友人も少しずつ出来た。
ある日の放課後だった。
いつも通り教室で待っていると、スマホに『ごめん、今日は一緒に帰れない』と育田から連絡があった。他の連中も用事で来られないとかで断られ結局若葉と二人きりになってしまった。
「仕方ねぇなあいつら」
「こんなに揃わないの珍しいよな」
「今日二人でどっか寄ってく?」
いつものように他愛のない話をしていたその時だった。
「きめぇんだよ、お前」
「え……」
(えっ……)
それは突然の事だった。
自ら口をついて出た言葉に高木自身耳を疑う。
それは大分前に忘れたはずの久々の「現象」だった。
嘘。嘘だろ。
この「現象」が出るという事は、つまり。
「――お前さぁ、男のクセに男が好きとかマジで?不毛だよなあ」
若葉が、俺を。
次いで出てきた言葉に俺は内心頭が真っ白になった。
若葉に至っては目を見張り、顔面蒼白になっていた。
「な、何言って」
「とぼけてんなよ。好きなんだろ俺の事が」
俺の心情を無視して口が勝手に言葉を紡いでいく。
「バレてねぇとでも思ったのかよ。ほんとキモ」
違う、違う。
こんな事を言いたいんじゃない。若葉の事は正直驚いたけど、でも。
「俺の前に二度と出てくるな」
「……っ、誰がお前なんか好きになるかよっ馬鹿!」
扉にバンと音を立てて若葉は教室から出て行った。
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あの出来事以降、高木と若葉は段々距離を置くようになり、
育田含めその他友人達とも仲違いしてしまった。
――結局一人か。なにをやっているんだ俺は。この「呪い」が有る限り上手くいくはずがないのに。
自嘲的な笑みが込み上げる。
結局、孤独な日常を抜け出すことは出来なかった。
そしてこれからも絶望的な気持ちを抱えて生きていくのであろうことは容易に想像がついた。
あの日から二人は険悪なまま、今日まで至るのである。
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[chapter:芽吹いた感情 1]
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「えー、もうすぐ〇〇祭があります。残り一週間気を引き締めて頑張りましょう」
担任の教師の一言でホームルームが締め括られる。
一週間後に控えた文化祭を前に、校内外で慌ただしく準備が進められていく。




