表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボツBL小説集  作者: 高遠
4/7

……for you(共通話)

あなたの為ならば、私が(つるぎ)になりましょう



あなたの為ならば、私が盾になりましょう



あなたを邪魔するもの全てを切り裂き



あなたを害するものから全てを守り抜くと誓う



そうそれは間違いなく神からの贈り物



────全ては“あなたのために”




***

 1年。365日ある中でこの日は彼にとってトラウマだった。



本宮(もとみや)、」

「ゲンジ、」

「「「「「お誕生日、おめでとう」」」」」

「…………」


彼らから一斉に祝いの言葉を掛けられた彼──本宮(もとみや) 言司(げんじ)はちっとも嬉しそうではない様子だった。

その顔の下半分は縁に装飾が施された黒いマスクに覆われ、首の後ろには、大きく開かれた唇の前に二つの手がバッテンになっているのが描かれた不思議な(しるし)がある。

声を発しない──否、彼は声を封じられていて発することが“出来ない”のだ。それは彼のある特殊な事情によるものだが。



(ようや)くか、待ちくたびれたよ」

「ねーゲンジ、俺を選んでくれるよねっ」

「やっとだね」

「……抜け駆けはなし」

「君達は一旦外に出てて」

「えー!?何でですかっ!」

「いいから」



本宮を除き、彼らは白いフード付きのマントを羽織っていた。

話すことが出来ない本宮を置き去りにして会話が進められていく。

 金髪の派手な男子が不満を洩らすが、それをこの学園の生徒会長で三年生である安藤が窘める。

金髪男子は納得がいかない顔をしていたが退室を促され、渋々他の者と一緒に出て行った。 


部屋にはどこか緊張した面持ちでソファに腰掛け下を俯く本宮とテーブルを隔てて同じく向かい側のソファに座った安藤だけが残る。



「本宮」

「……っ」



名を呼ばれた彼がびくりと肩を揺らす。



「大丈夫?少し休もうか」



安藤の気遣いは彼にとっては有り難かったものの、今はそれどころではないのが本音だった。



──早く用を済ませてこの重くのし掛かる責任感から解放されたい。



そんな一心で本宮が首を横に振ると安藤はそっか、と呟き、「……覚悟は出来てる?」とだけ問うてきた。


覚悟も何も、そもそもここから逃れる選択肢なんて始めから用意されていない。


こくり、と本宮が頷く。



「分かった。では今から準備するから少し待ってて──愛斗(まなと)

「はーい」



安藤が背後に声を掛けると、別室に繋がる奥の扉から副会長で二年生の芽野(めの) 愛斗(まなと)がワゴンを手押ししながら現れた。

芽野もまた白いマントを羽織っている。


ワゴンの上には黒地にキラキラのホログラムが施された包装紙に包まれた、手のひらサイズの小さな箱が全部で三つ載せられている。


それを芽野は一つ一つテーブルの上に並べていくとまたワゴンを押して奥の扉の中に戻っていった。



「……大丈夫だよ。すぐに終わるから」



安藤が本宮を気遣ってそっと声を掛けてくれる。

本宮はそれに小さく頷いた。

芽野が戻ってきて安藤が座っているソファの斜め後ろに立つ。



──もう、後戻りは出来ない。失敗は許されない。



「さあ、神(我らが主)からの贈り物……君はどれを選ぶ?」



 安藤に問われ、本宮はテーブルの上に並べられた三つの箱をじっと見つめる。


 先ず最初に目についたのは左の箱。

見えない何かに手招かれているような感覚が──けれどそれと同時に心臓をぎゅっと握られるような得体の知れない、ぞわっとした謎の恐怖感を感じた。


 次に真ん中の箱を見やる。

何となく見ていて軽やかに心躍り出しそうな感覚が湧き起こる。でもすぐにどこかに行ってしまいそうな、けれど無闇矢鱈に近付いたら踏み潰されそうなそんな感じを抱いた。


 最後に右の箱を見てみる。

見ているとまるでどこか寄り添い全て受け入れてくれるような優しさと癒やしの雰囲気が感じられてほっとする。けれど何故だろう、矛盾しているかもしれないが何となく(がん)として受け入れない、反発するような雰囲気も(あわ)せ持っているような気がするのだ。


 同じ箱なのに見ただけでこうも感覚が違うというのは不思議で変な話だが。


本宮は目を閉じ、深呼吸をする。



──これで、自分の運命が決まる。



そして安藤を見た。



「決まったかな?」



こくりと頷く。

そうして本宮が手を伸ばしたのは────。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ