傷神鬼 3
歯車
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底冷えのする牢の中でコタは煎餅布団の中に潜り、寒さに耐えていた。
まるで見世物するように開けた場所に設けられたこの檻の向こうには人々が行き交い、時折こちらを見ては眉を顰めてそそくさと通って行く。
どこか近くで桜が咲いてるらしく、檻の前の地面は桜の花びらで埋め尽くされている。風で花びらが舞って檻の中に入ってきて髪の毛や布団の上にはらはら落ちる。
ふとこうもやることがなく、いつもと変わらぬ同じ場所に居ると何のために生きているのか分からなくなってくる。
やっと外へ出してもらえたかと思えば、好奇や汚物でも見るような目に晒され、『仕事』と称した罪人の処刑──所謂人殺しをさせられる。
流石、化け物。
看守にもそう嘲笑われコタは人間不信に陥っていた。
これなら牢の中に引き籠もっている方がましだ。
(いや、もういっそのこと死んでしまった方が楽かもしれないな)
そんな風に考えていると。
「やあ」
不意に人の声が聞こえた。
布団の中から顔を上げ見ると見知らぬ少年が格子の向こう側から顔を覗かせてこちらを見下ろしていた。
「こんにちは」
(……?誰だ)
この牢に近づく者などかなり限られている。ましてやコタに挨拶する者など皆無だ。