夢の世界で暮らさせて
夢
僕は夢をみる
夜 夜にだ
夜に見る夢は真っ黒であることが多いが、そのぶん、大冒険を引き連れてやってくる。
あるとき、わたしは全長500mに及ぶガラスのような巨大生物で
体はステンドグラスのようなキラキラした色のつく薄膜でできていた。空を飛んで移動すると、地面の人間がワーワーまくしたてる。
私は森から注ぐ光を体に受けて、体の枠の中のガラスの色を変えた。この世界は美しい光で満たされている!それが私の食事のようなものであった。
色とりどりの光は私のエネルギー源!
いや、食事とでも言うべきか?
ごう、とその薄膜の透けた体をねじり飛翔する。海の反射光がわたしの色を変えていった。
美しいロックミュージックが聞こえる。わたしは金属の鼻先を岩の塊へ向ける。
岩の塊……その中にはロック・バンドのステージがあったのだ。
私は、その岩の上をふよふよと飛び、浮かんでいた。
聞かせろ。その音楽を。
くりぬいた岩の中は黄色く光っている。わたしの体はひとかけら、黄色になった。
男が歌い始めて、周りの岩が跳ね、削れ、礫となり、それが歌を纏って私の体を、私のガラス質のきれいな薄膜を貫通してバラバラのガラスの破片にする。薄い薄い破片。無限の色を映し。
わたしの体はすぐ再生した。たくさんの光を浴びた。光じゃないものも浴びた。粉々になったガラス質たちは集まってぶくぶく熱され、また薄膜となって、私の金属の骨格にぺたりとへばりつく。
より多くの色を吸収したわたしの体は重くなって 、黒くて煮えたぎったその翼で、音を乗せて、この、漆黒の夜の世界をまた駆けていくのだろう。ふらふら、くらくらしながら。柱にぶつかりながら、よろけて。狭いあの窓から飛んでゆくのだろう。
夜が明けるまでの、暗い空を。