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第71話 私にくださらない?

 そんな私の様子が面白くなかったのか、マルティは不機嫌そうに眉根を寄せながら口を開く。


「それにしてもそのお姿……見れば見るほどお姉さまに似合っていませんわね? 特にそのネックレスなんて、お姉さまには分不相応ですわ」


 ねちっこく私の格好を否定しつつも、彼女の瞳は、婚約者の証であるフォレスティの星がちりばめられたネックレスに釘付けだ。


 それもそうだろう。

 マルティは、宝飾品に目がない。お義父さんやリズリー殿下にねだり、かなりの宝飾品を贈って貰っていた記憶がある。


 だけど、今私が身につけているほどの品はもっていなかったはず。


 ネックレスを注視していたマルティが小首を傾げながら、媚びるような甘ったるい声色でアレを口にする。


「お姉さま、そのネックレス、私にくださらない? お姉さまには全く似合っていないんですもの」

 

(ほら、出た)


 この台詞とともに、亡きお父様から頂いた物がどれだけ奪われたか分からない。

 最終的には奪うものがなくなって、耳にする機会もなくなったけれど。


 マルティは、早くそれを寄こせと言わんばかりに、私に向かって右手を差しだしている。


 かつての私は、どうせ拒否しても、最終的にお義父さんの手によって奪われると分かっていたから、マルティの要求に素直に従ってきた。


 そういう経緯があるせいで、マルティは私が素直にネックレスを渡すと、微塵も疑っていないみたい。


 残念だけれど。


「それは無理だわ。このネックレスは、婚約者の証として贈られた物なのだから」

「え?」


 首を横に振って丁重にお断りをすると、マルティの顔がみるみるうちに赤くなった。差し出された右手も、プルプルと震えている。


 私に拒絶されて怒っていると思いきや、


「こ、婚約者? や、やはりさっきの話は、本当だったの⁉ お姉さまが、アラン殿下と婚約を結んだというお話は!」


 ダンッとテーブルを叩きながら、マルティが立ち上がった。

 どうやら、要求が通らなかったことではなく、アランと婚約したことに対して怒っているみたい。


 不思議に思いつつも平然を装い、できるだけ表情を変えないまま、左手の薬指をマルティに向けた。


「ええ、そうよ。こちらも、婚約者の証としてアラン殿下から贈られた物なのだけれど」

「婚約指輪? な、何て大きな宝石なの……?」

「フォレスティの星、と呼ばれる宝石らしいわ。この国でしか採れない、とっても貴重な宝石だそうよ」


 指輪を見つめるマルティの身体が、前のめりになった。

 まるで、餌を前にして待てをさせられている犬のように、瞳をギラつかせている。


「このネックレスと指輪は、アラン殿下から直々に贈られた物。だから、あなたの頼みとはいえ、あげるわけにはいかないのよ。ごめんなさいね?」

「あ、アラン殿下から、直々に……」


 アランの名を聞いたマルティの表情が、憎しみに染まる。


 それを見て、疑惑が確信へと変わった。


 マリアの話を聞いたとき、自分よりも劣っていると見下していた私が幸せに暮らしていることに、腹を立てているだけかと思っていた。


 もちろんそれもあるだろうけれど、


(マルティはアランを狙っているんだわ。だから嫉妬を……)


 自分にはすでに、私から奪った婚約者がいるというのに。

 まだ奪い足りないの?


 底知れぬマルティの強欲さに、怒りがふつふつとこみ上げると同時に、クロージック家にいたアランが、地味な男性を演じていてくれて本当に良かったと思う。


 その時、


「私、良いことを思いつきましたわ」


 私を睨みつけていたマルティの表情が、急に明るくなった。胸の前で両手を合わせると、少し首を傾け、ねだるように瞳を細めながら口を開く。


「お姉さまに、リズリー殿下をお返しいたしますわ。だから――」


 嫌な予感がする。 

 初めて表情を強張らせた私を見つめるマルティの口角が、思いっきりあがった。


「あなたの婚約者であるアラン殿下を、私にくださらない?」

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