謎かけ歌(あるいは妄執)
「パセリ、セージ、ローズマリー&タイム」という言葉を聞いて、あの歌を思い浮かべられた方は、ご容赦ください。この詩の着想の一端は、その歌にあります。歌のイメージが崩れると仰られても責任は持てません。
でも、この「パセリ、セージ、ローズマリー&タイム」ですが、魔よけの呪文とも捉えられているようです。もちろん、詩の中で呪文として盗用するような失礼なことはしていません。オリジナリティを重視して、一応、日本で呪文に使えそうなものを考えたのですが、その時に浮かんできたのは「七草」で流石に悩みましたが、つい、使ってしまいました。
七草は日本のハーブだと書いていらっしゃる方もありますし、邪気を払うという呪術的意味合いもあるとのことですが、何やら、どこかが違う気がします。
哀しけれども、別たれた 想いは時に魔を誘い
あろうはずなき、誘いの 百花に紛れ、死は香る
・・・御形、繁縷、芹、薺 菘、蘿蔔、仏の座・・・
去にし昔の謎かけに 重ね、あなたを祓えども
変わらぬ笑みの胸を打つ
あなたが、もしも、まだ僕を 愛するならば、不織布の
ボタンダウンのこのシャツを 解いた糸で、あらためて
ドレスを織ってくれますか
できたら、僕のこの愛は いまもあなたのものでしょう
あなたが、もしも、まだ僕を 愛するならば、僕の手が
あなたを抱く、その後で 僕らが好きなあの歌を
また、流行らせてくれますか
できたら、僕のこの愛は あなたのものになりましょう
あなたが、もしも、まだ僕を 愛するならば、ひとりきり
過ぎた時間の砂粒を あなたの尽きた器へと
注いで、時の天秤が
釣り合うならば、僕たちは また、ひとつにもなりましょう
あなたが、もしも、まだ僕を 愛するならば、血の通う
あなたの腕の温もりで 僕に応えてくれますか
互いを温めあえますか
できたら、僕はこの愛で あなたを抱き続けましょう
あなたが、もしも、まだ僕を 愛するならば、その愛が
綺麗に咲いた花びらの 中から「別の花びら」を
「愛」をみつけてくれますか
できたら、僕は、この愛は もはや意味などありません
魔を祓い終え、また、ひとり 遠き昔を懐かしむ
いっそ祓わず、ふたりして あなたと共に堕ちようか
・・・御形、繁縷、芹、薺 菘、蘿蔔、仏の座・・・
何処なりとも歩みゆき
この魂の塵となり 消ゆる旅へと出向こうか
かねがね、謎かけ歌をつくってみたいと思っていました。
理由は単純です。サイモン&ガーファンクルというフォーク・デュオの「スカボロー・フェア/詠唱」が好きだからです(と言っても、興味を持った時は、解散後の再結成も終わっていましたからリアルタイムではないのですが)。「スカボロー・フェア」自体はオリジナルではなく、イギリス(と言いますかケルト人)の伝承歌のひとつバラッドなのですが、そのさらに源流にある歌がそう呼ばれる類のものだからです。
その「エルフィンナイト(妖精の騎士)」という伝承歌では、女性が騎士に求愛し、騎士がその求愛を、やんわりと「謎かけ=実現不可能な条件」で断ると、女性が、その「不可能な条件」を達成するから、「あなたも、私がだす不可能な条件を達成してね」と謎かけで切り返し、騎士を困らせるストーリーです。
その根幹には、「謎かけ=実現不可能な条件をつきつけて、近づく魔を祓う」という意味合いもあるようです。
ということで、亡くなり、亡霊となって現れた恋人の求愛(妄執)を、謎かけを駆使して逃れながらも、逃れたことを後悔をしている男性というものをイメージしてみました。
設定した謎かけが、本当に「実現不可能な条件」になっているかどうか自信はありませんが、いまは、これで・・・というレベルです。
その内、さらに手を加えてみようかと思います。
ちなみに、この詩は純粋に想像の産物です。普段は体験を基にすることがほとんどなのですが、さすがに、謎かけの体験はありませんし、謎かけをしたい人もいませんし(叶うなら逢いたい人はいますけど)・・・です。
そういうえば、ここでは本題ではないのですが、「スカボロー・フェア/詠唱」のほうには、反戦歌の意味もあります。ベトナム戦争と時代的にも重なっていますよね。