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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第二章
99/141

打ち上げ①

  □◇■◆(幸助)



 クルミカフェのいつもの席に、いつものメンバーで、いつもと違う時間に集まっている。



「それでは、かんぱーい」

 幸助がジョッキを上げる。


「「「かんぱーい」」」

 合図に合わせて四人はジョッキをぶつけ合う。合が三つ。



 王様から報酬の金貨を受け取ったばかりだ。お金を気にせず好き好きに注文をする。


 しばらくわいわい飲んでいると今回の依頼の反省会が始まった。



「それにして勇者様、今回は完全にしてやられたわ」

 レスティが片肘を立ててだらしなく飲んでいる。

「私の出番はほとんどなかったわね」


「そんなことはないだろう。印刷会社への手続きはかなり重要だったぞ」



 それなりに過ごしてきたが、四人でお酒を飲むのは初めてだった。


 レスティは絡み酒なのだろうか。



「そうだとしても地味じゃない。めちゃくちゃ地味だったじゃない」

 唇を尖らせて拗ねている。


「い、いやぁ……地味ではなかったんじゃなかったかなぁ……」


「その言い方は認めているわよ。地味だったねって言っているのと同じ意味よ」


「そ、そんなことないぞ……」

 申し訳ないが、地味だったと心の中では思っている。

「あの、ほら、そうそう。レスティのアパートに盗賊の被害にあった情勢がいただろう? 彼女のところに行ったとき、いろいろ聞けたんだよ。盗賊の手口とか時間帯とか。うん、それは結構ためになったぞ」


「それは私の手柄ではないわ」


「まあまあレスティさん、そんなに不貞腐れないでください。私だって絵を描いて結界を張っただけです」

 見ていられなくなったのか、リアがレスティをたしなめる。



 ちなみにトリストはガツガツとひたすらに肉を喰らっている。



「活躍しているじゃない。全然地味じゃないわよ。それに勇者様と小旅行みたいなことしたじゃない」


「それは僕ちゃんも気になるにゃ」

 トリストの食事の手が止まる。


「出かけはしましたが、私がお起きているときは勇者様が寝ていて、私が寝ているときに勇者様が起きていたので、残念ながら二人での行動はほとんどありませんでした」


「あっそ。それでも私よりはましだわ」



 レスティは酔うと面倒なタイプのようだ。大分ストレスが溜まっていると見受けられる。そっとしておこう。



「それにしても、今回の一番の手柄はトリストかしらね」


「そうですよね。トリストちゃんが私たちの中では一番目立っていましたね。花形を持っていかれた感じがします」


「そうかにゃ? ほめてくれてありがとにゃ」

 トリスト本人はその自覚がないようで、きょとんとしている。


「ほめてないわよ」


「ええ、ほめてないです」



 こういう女性陣の話のときは幸助は基本的に黙っている。それにみんな酔っていて変な絡みも避けたいので、ちびちびしっぽりお酒を楽しむことにしている。



「トリストは勇者様と個人レッスンをしていたし、番兵への援軍要請もしてたじゃない? 王様へのアピールもできたのではないかしら」


「確かにそうですね。それは思ってもいませんでした」


「リア、覚えておきなさい。勇者様へのアピールだけでは足りないわ。王様へのアピールも忘れないように」



 幸助はレスティの言葉に肘を打つ。意図しなかったがトリストにアシストしたことになったようだ。



「わかりました。でもそれを私に教えるのは、敵に塩を送る形になっていませんか?」


「いいのよ。今回の一件で私のあなたに対する評価は少し上がっているから」


「そ、そうなのですね。理由はわかりませんが、ありがとうございます」



 よくわからないけれど、二人の間に小さな友情的なものが生まれたようだ。平和ならそれでいい。


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