打ち上げ①
□◇■◆(幸助)
クルミカフェのいつもの席に、いつものメンバーで、いつもと違う時間に集まっている。
「それでは、かんぱーい」
幸助がジョッキを上げる。
「「「かんぱーい」」」
合図に合わせて四人はジョッキをぶつけ合う。合が三つ。
王様から報酬の金貨を受け取ったばかりだ。お金を気にせず好き好きに注文をする。
しばらくわいわい飲んでいると今回の依頼の反省会が始まった。
「それにして勇者様、今回は完全にしてやられたわ」
レスティが片肘を立ててだらしなく飲んでいる。
「私の出番はほとんどなかったわね」
「そんなことはないだろう。印刷会社への手続きはかなり重要だったぞ」
それなりに過ごしてきたが、四人でお酒を飲むのは初めてだった。
レスティは絡み酒なのだろうか。
「そうだとしても地味じゃない。めちゃくちゃ地味だったじゃない」
唇を尖らせて拗ねている。
「い、いやぁ……地味ではなかったんじゃなかったかなぁ……」
「その言い方は認めているわよ。地味だったねって言っているのと同じ意味よ」
「そ、そんなことないぞ……」
申し訳ないが、地味だったと心の中では思っている。
「あの、ほら、そうそう。レスティのアパートに盗賊の被害にあった情勢がいただろう? 彼女のところに行ったとき、いろいろ聞けたんだよ。盗賊の手口とか時間帯とか。うん、それは結構ためになったぞ」
「それは私の手柄ではないわ」
「まあまあレスティさん、そんなに不貞腐れないでください。私だって絵を描いて結界を張っただけです」
見ていられなくなったのか、リアがレスティをたしなめる。
ちなみにトリストはガツガツとひたすらに肉を喰らっている。
「活躍しているじゃない。全然地味じゃないわよ。それに勇者様と小旅行みたいなことしたじゃない」
「それは僕ちゃんも気になるにゃ」
トリストの食事の手が止まる。
「出かけはしましたが、私がお起きているときは勇者様が寝ていて、私が寝ているときに勇者様が起きていたので、残念ながら二人での行動はほとんどありませんでした」
「あっそ。それでも私よりはましだわ」
レスティは酔うと面倒なタイプのようだ。大分ストレスが溜まっていると見受けられる。そっとしておこう。
「それにしても、今回の一番の手柄はトリストかしらね」
「そうですよね。トリストちゃんが私たちの中では一番目立っていましたね。花形を持っていかれた感じがします」
「そうかにゃ? ほめてくれてありがとにゃ」
トリスト本人はその自覚がないようで、きょとんとしている。
「ほめてないわよ」
「ええ、ほめてないです」
こういう女性陣の話のときは幸助は基本的に黙っている。それにみんな酔っていて変な絡みも避けたいので、ちびちびしっぽりお酒を楽しむことにしている。
「トリストは勇者様と個人レッスンをしていたし、番兵への援軍要請もしてたじゃない? 王様へのアピールもできたのではないかしら」
「確かにそうですね。それは思ってもいませんでした」
「リア、覚えておきなさい。勇者様へのアピールだけでは足りないわ。王様へのアピールも忘れないように」
幸助はレスティの言葉に肘を打つ。意図しなかったがトリストにアシストしたことになったようだ。
「わかりました。でもそれを私に教えるのは、敵に塩を送る形になっていませんか?」
「いいのよ。今回の一件で私のあなたに対する評価は少し上がっているから」
「そ、そうなのですね。理由はわかりませんが、ありがとうございます」
よくわからないけれど、二人の間に小さな友情的なものが生まれたようだ。平和ならそれでいい。




