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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第二章
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確保⑨

「気配があるぞ。向こうの建物の中だ」


「わかったわ」

 レスティは勇者様を守る形で前に立つ。



 精神を集中させて問題の建物の前まで移動する。


 勇者様がドアの前に立ち建物の中の気配を察知する。



「鍵は開いているようだ」

 ドアを指さし勇者様が言う。



 勇者様の【解錠】の腕前を見てみたいと思ったが、またの機会となった。



「それなら私が突っ込むわ」

 レスティは剣を構えながらドアを開け飛び込む。

「うりゃああああああ」


「にゃ?」


「うりゃああああああ、あ、あ、あれぇええ?」

 振りかぶった剣をレスティは体ごと方向を変える。

「ぎゃああああああ」



 がしゃんと音を立ててレスティが戸棚に突っ込み倒れこむ。本日二度目だ。いや、人生においても二度目だ。


 なぜかトリストがいた。



「あれ? トリスト、街に行ったんじゃなかったのか?」


「あ、勇者様だにゃ。それとそこで倒れているのはレス姉かにゃ?」


「なんであんたがいるのよ!」

 レスティは立ち上がるが、剣は戸棚に突き刺さってしまった。


「何も考えずに街まで行こうと思ったんだけどにゃ、勇者様の【トラップセット】の腕前を見てみたくにゃって、こうやって侵入してみたんだにゃ」



 トリストの周りには解除されたトラップが散らばっていた。



「お、おう、そうだったのか、トリスト」

 トリスト師匠の抜き打ちチェックに勇者様は動揺しているようだ。

「それで師匠、俺の腕前はどうだ?」


「うーんそうだにゃ……まあまあといったところかにゃ。僕ちゃんの【トラップ察知】で見破れるし、【トラップキャンセル】ですぐに解除できるにゃ。僕ちゃんのほうがもっとうまくできるにゃ。今度はリア姉じゃなくて僕ちゃんと二人でここに来るにゃ」


「ちょっと何言っているのよ。次は私が剣の稽古をつけるんだから、私と二人でここに来るわ」


「にゃに!? シーフの稽古はまだまだだにゃ!」


「あの、ちょっといい? ここにはもう罠を仕掛けには来ないし、稽古はそれぞれの家でやればいいと思っている」


「リア姉だけずるいにゃ」


「本当にそうよね」


「急な意気投合やめろよ。それにリアとここに来たのは事実だけど、ほとんどは別行動だったぞ」


「リアもそう言っていたわね」


「そうだったにゃ……とりあえず信じるにゃ」


「信用しろよ」

 困惑した表情の勇者様。

「ってかトリスト! 早く街に行ってきてくれよ!」


「あ! そうだったにゃ!」

 トリストは役割を忘れていたようだ。

「にゃにゃにゃ!? これはにゃんだ!?」



 トリストが何かに気が付いたようだ。トラップを解除しながら部屋の奥へと移動する。



「にゃにゃ! にゃにかあるにゃ!」



 おそらくトリストの【アイテム察知】に反応があったのだろう。

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