確保⑨
「気配があるぞ。向こうの建物の中だ」
「わかったわ」
レスティは勇者様を守る形で前に立つ。
精神を集中させて問題の建物の前まで移動する。
勇者様がドアの前に立ち建物の中の気配を察知する。
「鍵は開いているようだ」
ドアを指さし勇者様が言う。
勇者様の【解錠】の腕前を見てみたいと思ったが、またの機会となった。
「それなら私が突っ込むわ」
レスティは剣を構えながらドアを開け飛び込む。
「うりゃああああああ」
「にゃ?」
「うりゃああああああ、あ、あ、あれぇええ?」
振りかぶった剣をレスティは体ごと方向を変える。
「ぎゃああああああ」
がしゃんと音を立ててレスティが戸棚に突っ込み倒れこむ。本日二度目だ。いや、人生においても二度目だ。
なぜかトリストがいた。
「あれ? トリスト、街に行ったんじゃなかったのか?」
「あ、勇者様だにゃ。それとそこで倒れているのはレス姉かにゃ?」
「なんであんたがいるのよ!」
レスティは立ち上がるが、剣は戸棚に突き刺さってしまった。
「何も考えずに街まで行こうと思ったんだけどにゃ、勇者様の【トラップセット】の腕前を見てみたくにゃって、こうやって侵入してみたんだにゃ」
トリストの周りには解除されたトラップが散らばっていた。
「お、おう、そうだったのか、トリスト」
トリスト師匠の抜き打ちチェックに勇者様は動揺しているようだ。
「それで師匠、俺の腕前はどうだ?」
「うーんそうだにゃ……まあまあといったところかにゃ。僕ちゃんの【トラップ察知】で見破れるし、【トラップキャンセル】ですぐに解除できるにゃ。僕ちゃんのほうがもっとうまくできるにゃ。今度はリア姉じゃなくて僕ちゃんと二人でここに来るにゃ」
「ちょっと何言っているのよ。次は私が剣の稽古をつけるんだから、私と二人でここに来るわ」
「にゃに!? シーフの稽古はまだまだだにゃ!」
「あの、ちょっといい? ここにはもう罠を仕掛けには来ないし、稽古はそれぞれの家でやればいいと思っている」
「リア姉だけずるいにゃ」
「本当にそうよね」
「急な意気投合やめろよ。それにリアとここに来たのは事実だけど、ほとんどは別行動だったぞ」
「リアもそう言っていたわね」
「そうだったにゃ……とりあえず信じるにゃ」
「信用しろよ」
困惑した表情の勇者様。
「ってかトリスト! 早く街に行ってきてくれよ!」
「あ! そうだったにゃ!」
トリストは役割を忘れていたようだ。
「にゃにゃにゃ!? これはにゃんだ!?」
トリストが何かに気が付いたようだ。トラップを解除しながら部屋の奥へと移動する。
「にゃにゃ! にゃにかあるにゃ!」
おそらくトリストの【アイテム察知】に反応があったのだろう。




