確保④
「レス姉、この先に誰かいるにゃ。それも数人だにゃ」
「わかったわ。そのまま【気配察知】でどこにいるか絞ってちょうだい」
レス姉が剣を構えなおしている。
「了解だにゃ」
精神を研ぎ澄まして集中力を高める。
「あの建物だにゃ」
自然とレス姉と目が合い、お互いにうなずく。ここから戦闘になるだろう。
今思えば勇者様とパーティを組んでから初めての戦闘かもしれない。
スライム状の魔物と戦ったことはあるが、あれは戦闘だったのかと言われると疑問があった。
気配を感じる建物の前に着く。鍵はかかっていないようだ。【解錠】は使わなくてよさそうだ。
「トリスト、【隠密】で中の様子をうかがってちょうだい」
レス姉が耳元で指示を出す。
「任せるにゃ」
親指を立ててレス姉に応える。
気配を消し扉をゆっくり開ける。
まだ時刻は夕方だが、建物の中は暗かった。明かりを消しているようだ。
注意して見渡すが、この部屋には誰もいない。
奥の部屋の扉が少し空いている。そしてその隙間から光が漏れている。どうやら奥の部屋に何者かがいるようだ。
ゆっくり建物に入り、音を立てずにゆっくり進む。
奥の部屋に近づくにつれ何かが聞こえてくる。
「うおぉぉぉぉぉぉおおお」
おそらく人の声だ。言葉にならない声。
何か相当まずいことをやっているのではないか? 薬でイカれているのだろうか。それとも人ではなく魔物だろうか。
不安が過ぎる。
とりあえず部屋の中を確認しよう。それからレス姉のところへ戻り、状況を説明し、作戦を立てよう。
息を殺し、明りの漏れるドアの隙間から中を覗く。
「にゃぁぁぁあああ!? にゃんだこりゃぁぁぁぁあああ!」
どうしてこんなことになっているのだ? 何が起きている? 何が起きてこうなった? 何なんだ? わからないことが多すぎる。
「どうした! トリスト!」
レス姉が叫び声を聞き、駆けつけたようだ。
「大丈夫? ってなによこれぇぇぇぇえええええ!?」
レス姉もこの状況を見て混乱している様子だ。混乱しないほうがおかしい。
「え、ちょっとまって。何なの!? どういうことなの!?」
「ぼ、僕ちゃんもわからにゃいにゃ」




