デザイン⑤
「私はシャワーを浴びて寝る準備をしますね」
「わかった。じゃあ俺はこのおにぎりをいただこうかな」
「はい。お召し上がりください。全部どうぞ」
「リアの分はいいのか?」
「私はお腹が空いたら作ります」
「そうか、じゃあ遠慮なくいただく」
「はい。どうぞ」
席を立ちお風呂場へ向かう。
散歩に行く前にお湯を沸かしておいて正解だった。
一番風呂を勇者様ではなく私がもらっていいのかという罪悪感はあるが、いつも泊まりに来るときに、気にしなくていいと言ってくれているので、今日は先に入らせていただくことにする。
湯に浸かりながら普段味わえない、つかの間のひと時を噛み締める。
ドアの向こうからおにぎりが美味しいと言っている勇者様の声が聞こえる。新婚のような感覚だ。ただ単にうれしい。
そんな充足感で満たされる。この時間がずっと続けばいい。
ふとレスティさんとトリストちゃんの顔が浮かんだ。あの二人は今はいい関係といってもいいかもしれないけれど、やはりライバルだ。勇者様を巡っては負けられない。この幸せは私のものだ。
顔を洗うと気持ちを入れ替える。とにかく今はこの時間を楽しもう。
お風呂から上がると、次は勇者様のお風呂の晩。一緒に入ってもよかったのにな。そんなことは言えず。
「いいお湯でした。勇者様もごゆっくり」
「ありがとう。リアもゆっくりして」
勇者様がお風呂に入ると、リアは髪の毛をタオルで拭きながらベッドに腰を掛ける。髪を乾かしながら、勇者様のお風呂を待つ。お風呂場から気持ちがいいと声が漏れている。
勇者様がお風呂から上がってくる頃になると眠たくなってきた。
「いいお湯だったよ。沸かしておいてくれてありがとう、リア」
頭をふきながら上半身裸の勇者様がお風呂場から戻ってきた。
「あれ? リア、眠たいのか?」
「そ、そうですね。少し眠たくなってきました」
家に泊まりに来るとき、勇者様はいつもお風呂上りは裸だけれど、一向に見慣れない。何度肌を重ねてもだ。
「今日は俺の看病もしてもらったし、おにぎりも急遽作ってくれたしな。ゆっくり休んでくれ」
勇者様が服を着る。
「なんか目が覚めちゃったな」
「はい。じゃあ勇者様も夜更かししないようにしてくださいね」
「ああ、少しだけ村を見てから寝ることにするよ」
「ではおやすみなさい」
勇者様がおやすみなさいと言い、明かりを消して外へ出て行った。




