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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第二章
69/141

デザイン②

  □◇■◆(リア)



 勇者様が家に来る日はいつもまったりと過ごしていた。別室とはいえ弟と妹がいたから。それはそれで有意義な時間だと感じていたし、何も不満はなかった。


 弟と妹がいるからって、やることはやっている、ということは内緒。


 しかし今回は完全に勇者様と二人っきりになれる。こんなチャンスはもう来ないかもしれない。


 今日は急なお出かけになり、不安や照れくささ、ちょっとした恐怖などいろいろな感情がごちゃごちゃになっているが、一番強いのは嬉しさだ。


 今は勇者様が馬車を用意しに外に出ている。


 乗り物酔いのひどい勇者様がせっかく誘ってくれたのだから、断るわけにはいかなかった。次があるかはわからないから。


 戸締りをしながら、今回の小旅行に思いを馳せる。



「それじゃあこれが終わったら、家の用意を済まさなくっちゃ」



 一度外に出て結界魔法を家の周囲に置いている魔法石にかける。弟を守るためだ。


 二人も連れていきたいのはやまやまだが、今日は勇者様との時間を大切にしたい。


 家に入り今度は弟の部屋へ移動する。



「そうだ。買ったばかりのかわいい下着を持っていこう」



 弟にお出かけ際の準備をしながらも、やましいことも抜かりなく考える。いや、やましいとは思っていない。勇者様のお相手は私だと確信しているから、当然のことだと思っている。



「あ、そうだ。道中、小腹が空くかもしれない」


 勇者様が帰ってくるまで時間的に余裕も有りそうだし、何か作ることにする。


 トントントンとリズミカルな包丁の音に合わせて、野菜が均等に切られていく。



「誰もいない村に二人きりかぁ……」



 妄想が膨らむ。泊まる場所は勇者様の家だろう。


 村を王様からもらった時、勇者様とトリストちゃんは一軒ずつ自分の家を決めた。クラトゥ村が村として機能してきたとき、移住するつもりらしい。今は誰一人として自分の家としては利用していないが。


 まるで二人っきりの世界だ。楽しみで仕方がない。気が付けば鍋が噴きこぼしていた。


 夕方までに村につけばオレンジに染まった村を見たり、丘から自然を眺めるのもいいかもしれない。


 どんな景色も勇者様と一緒なら素敵なものになると思う。一生の思い出になる。


 そして明日の朝は早くに起きて、私が勇者様を起こそう。勇者様の寝顔と起きた時の瞬間の顔が好きだ。案外かわいい顔をしている。


 その後は朝日の当たる村を二人で散歩をする。出発の時間ぎりぎりまで二人だけの世界を過ごす。そしてついでにチラシの絵になりそうなイメージを一緒に考える。



「あ! いけない! 一番の目的はチラシの絵のイメージだった!」



 料理を急いで終えると、部屋に戻りスケッチブックと画材道具を用意する。



「これを忘れてしまったら、さすがの勇者様も怒るかもしれない」



 それから服やら化粧品やら、あんなものからこんなものまで用意を済ませる。


 準備が完了したとき、玄関から声が聞こえた。



「ただいま。馬車の手配は済んだよ」



 勇者様が戻ってきたようだ。

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