デザイン①
□◇■◆(幸助)
幸助にデザインのセンスはない。
学生時代、美術の成績はそんなに良くなかった。「そんなに」というのがせめてもの見栄だ。ちなみに字も汚い。
今日はリアの家に泊まる日。デザインを見せてもらう。お昼前に顔を出し、ランチもいただくという算段だ。
「いらっしゃいませ、勇者様」
玄関から出てきたリアが、頭を下げ幸助を迎える。
「余所余所しいな」
「何度来ていただいても緊張します」
「本来緊張しなくちゃいけないのは俺のほうだけどな。図々しくて悪いな」
「こんなことありません。だって勇者様ですから」
そんな会話をしながらリビングへ向かう。リアの弟と目が合うと、黙って自室へ入っていった。今日も一段と調子が悪そうだ。ご自愛ください。
「それでは勇者様、そちらに座ってください」
「ありがとう、リア」
幸助は椅子を引き腰を掛ける。
「今お茶を淹れますね。お待ちください」
キッチンへ移動したリアは、しばらくすると二つの湯飲みを持って戻ってくる。
「ありがとう。ああ、そうだ、リア。チラシのデザインはどうなったかな?」
「どうぞ。熱いので気を付けて飲んでください」
お茶をテーブルに置くと今度は自分の部屋へ向かう。
「今デザイン案を持ってきますね」
リアは幸助に対して尽くすタイプだ。ヒモタイプの幸助にはありがたい人材だとは思うが、束縛もすごそうなので、自分の時間が無くなるのは嫌だな、なんて妄想をする。
「とりあえず、イメージで描いてみたのですが……」
リアが湯飲みを移動させ、デザイン案の紙をテーブルに置く。
「どうでしょうか?」
「おお、すごいな」
幸助は素直に驚く。
リアの家には絵が飾ってある。小さい頃にリアが描いたものだと言っていた。
以前そんな話をしたのを覚えていたので、今回リアにチラシのデザインをお願いした。
今目の前のデザイン案を見て、それが間違いではなかったと改めて思った。
まだチラシとしては成立していない状態だが、絵が上手い人特有の雰囲気があった。
「大体のイメージは伝わっているでしょうか?」
「ああ、しっかり伝わっているよ。かなりセンスがいいな」
幸助がそう伝えると、リアが照れる。
「ところでリア、この文字はなんて書いてあるんだ?」
「そうでした。勇者様は文字が読めませんでしたね。『村人募集』と書いてあります」
「なるほど……それじゃあシンプルすぎるかな……?文言を変えたほうがいいかもな」
幸助はあごに手を当て考える。
「もっとインパクトがある感じ……」
「そうですか……」
リアが少し残念そうな顔をする。
「なんと変更しましょうか?」
「そうだな……。『無人村! 今なら自由に使えます!』とかはどうかな?」
「確かにインパクトがありますね。それに面白いです」
幸助が伝えたとおりに書き直す。
「これでどうですか?」
「いいんじゃないか。完璧だ」
どうですかと言われても文字が読めないので、あまり変わりはわからないが、言ったとおりに書いてくれているのであればそれでいい。
「よし、文言はこれでいい」
「文言については……ですか?」
リアが心配そうにこちらを見ている。
「全体的なデザインはどうでしょうか?」
「何にも問題ない。最初から信用しているから、俺から何か言うことはない」
「あ、ありがとうございます」
リアが嬉しそうに幸助の湯飲みにおかわりのお茶を注ぐ。
「そうだ、リア。これからクラトゥ村に行かないか? もしかしたらさらいイメージが浮かんでくるかもしれない。片道四時間かかるから、向こうで一泊することになるけど」
「い、今からですか?」
急な提案に驚き戸惑うリア。
「急な話だから別日でもいい。弟と妹のこともあるだろうし。三日後の泊まる日にしようか?」
「い、いえ。今日行きましょう。少し準備に時間をいただきたいですが」
「構わないよ。ありがとう。それじゃあ今日行こう」
「急に楽しみができました」
リアは早速せかせかと用意を始める。
「二人にこの件を伝えて準備をしてきます」
「それじゃあ俺は馬車を手配してくるよ」
リアの同意を得ると幸助は家を出た。




