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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第二章
68/141

デザイン①

  □◇■◆(幸助)



 幸助にデザインのセンスはない。


 学生時代、美術の成績はそんなに良くなかった。「そんなに」というのがせめてもの見栄だ。ちなみに字も汚い。


 今日はリアの家に泊まる日。デザインを見せてもらう。お昼前に顔を出し、ランチもいただくという算段だ。



「いらっしゃいませ、勇者様」

 玄関から出てきたリアが、頭を下げ幸助を迎える。


「余所余所しいな」


「何度来ていただいても緊張します」


「本来緊張しなくちゃいけないのは俺のほうだけどな。図々しくて悪いな」


「こんなことありません。だって勇者様ですから」



 そんな会話をしながらリビングへ向かう。リアの弟と目が合うと、黙って自室へ入っていった。今日も一段と調子が悪そうだ。ご自愛ください。



「それでは勇者様、そちらに座ってください」


「ありがとう、リア」

 幸助は椅子を引き腰を掛ける。


「今お茶を淹れますね。お待ちください」



 キッチンへ移動したリアは、しばらくすると二つの湯飲みを持って戻ってくる。



「ありがとう。ああ、そうだ、リア。チラシのデザインはどうなったかな?」


「どうぞ。熱いので気を付けて飲んでください」

 お茶をテーブルに置くと今度は自分の部屋へ向かう。

「今デザイン案を持ってきますね」



 リアは幸助に対して尽くすタイプだ。ヒモタイプの幸助にはありがたい人材だとは思うが、束縛もすごそうなので、自分の時間が無くなるのは嫌だな、なんて妄想をする。



「とりあえず、イメージで描いてみたのですが……」

 リアが湯飲みを移動させ、デザイン案の紙をテーブルに置く。

「どうでしょうか?」


「おお、すごいな」

 幸助は素直に驚く。



 リアの家には絵が飾ってある。小さい頃にリアが描いたものだと言っていた。


 以前そんな話をしたのを覚えていたので、今回リアにチラシのデザインをお願いした。


 今目の前のデザイン案を見て、それが間違いではなかったと改めて思った。


 まだチラシとしては成立していない状態だが、絵が上手い人特有の雰囲気があった。



「大体のイメージは伝わっているでしょうか?」


「ああ、しっかり伝わっているよ。かなりセンスがいいな」



 幸助がそう伝えると、リアが照れる。



「ところでリア、この文字はなんて書いてあるんだ?」


「そうでした。勇者様は文字が読めませんでしたね。『村人募集』と書いてあります」


「なるほど……それじゃあシンプルすぎるかな……?文言を変えたほうがいいかもな」

 幸助はあごに手を当て考える。

「もっとインパクトがある感じ……」


「そうですか……」

 リアが少し残念そうな顔をする。

「なんと変更しましょうか?」


「そうだな……。『無人村! 今なら自由に使えます!』とかはどうかな?」


「確かにインパクトがありますね。それに面白いです」

 幸助が伝えたとおりに書き直す。

「これでどうですか?」


「いいんじゃないか。完璧だ」

 どうですかと言われても文字が読めないので、あまり変わりはわからないが、言ったとおりに書いてくれているのであればそれでいい。

「よし、文言はこれでいい」


「文言については……ですか?」

 リアが心配そうにこちらを見ている。

「全体的なデザインはどうでしょうか?」


「何にも問題ない。最初から信用しているから、俺から何か言うことはない」


「あ、ありがとうございます」

 リアが嬉しそうに幸助の湯飲みにおかわりのお茶を注ぐ。


「そうだ、リア。これからクラトゥ村に行かないか? もしかしたらさらいイメージが浮かんでくるかもしれない。片道四時間かかるから、向こうで一泊することになるけど」


「い、今からですか?」

 急な提案に驚き戸惑うリア。


「急な話だから別日でもいい。弟と妹のこともあるだろうし。三日後の泊まる日にしようか?」


「い、いえ。今日行きましょう。少し準備に時間をいただきたいですが」


「構わないよ。ありがとう。それじゃあ今日行こう」


「急に楽しみができました」

 リアは早速せかせかと用意を始める。

「二人にこの件を伝えて準備をしてきます」


「それじゃあ俺は馬車を手配してくるよ」



 リアの同意を得ると幸助は家を出た。

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[良い点] 幸助、字汚いのか…意外…
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