トレーニング②
「いやあ、ほら、トリストってスタミナも素早さもあるだろ? だからシーフより狙撃手っていうのかな――遠距離攻撃の方が向いているんじゃないかなって思ったから、聞いてみたんだよ」
「遠距離? にゃんでそうにゃるんだにゃ?」
「だって相手の攻撃範囲より自分の攻撃範囲のほうが大きいと、相手の攻撃を受けずに、自分の攻撃を与えられるだろ?」
「そうだにゃ」
「だとしたら、相手は攻撃範囲に自分を入れようと、近づいてくるよな」
「そうだにゃ」
「だけど、相手が近づく速度より、こちらの逃げる速度が速ければ、その差は縮められないよな」
「そうだにゃ」
トリストは同じ相槌しかしないので、ちゃんと聞いているのかわからないが、幸助は続ける。
「つまりスタミナと素早さが高いトリストが遠距離攻撃をした場合、相手から攻撃を一切受けずに勝てるという算段だ。実際戦闘もしたことないし、そういうゲームをしたわけではないからシュミレーションもできていない。机上の空論と言われればその通りとしか言いようがないんだけど……どうだろう? 間違っているか?」
「……」
黙るトリスト。
「なんか言ってくれよ」
「め、命中率が必要だにゃ! 高い攻撃精度がにゃいと成り立たにゃいにゃ!」
「確かにそうだな……。トリストって命中率なさそうだしな」
「そんにゃことにゃいにゃ! ただ近くで攻撃したほうが確実性があるから接近戦をしているにゃ!それに回避も得意だにゃ!」
トリストが必死に訴える。
「まあそれもそうか。シーフとしては盗むことを主とするからな。遠くにいてはそれが発揮できないか」
「そ、そうだにゃ! 盗めないシーフにゃんてシーフじゃにゃいにゃ」
「じゃあいっそのことシーフやめるか?」
「やめにゃいにゃ! これでもちゃんと誇りを持っているにゃ!」
「ごめんごめん。冗談だよ。冗談。【窃盗】が意外に難しくってね、ちょっと諦めたくなりそうになっちゃたんだ。トリストみたいに俺は素早く動けないみたいだ」
「まあ、僕ちゃんのすごさをわかってくれたにゃらそれでいいにゃ」
トリストが自慢げな表情をしている。




