勇者とレスティと海水浴~エピソード・レスティ~②
浮かれている。うん、浮かれている。
接続詞で遊んじゃうほど浮かれている。
それもそのはず、明日は勇者様との初めてのデート。しかも海水浴だ。
浮かれないわけがない。浮かれて当然。浮かれないほうがおかしい。
ゆえに、浮きたい。
および、浮かれたい。
ともあれ、浮かれてほしい。
この接続詞は適切でない。
ふわふわ、ぷかぷか、ひらひら、ぽあぽあ、ふぁふぃふぁふぃ、うきうき、浮き浮き……オノマトペでも浮いている。
浮かない、浮きます、浮く、浮くとき、浮けば、浮け。
未然、連用、終止、連体、仮定、命令。「浮く」の活用は、かきくくけけ。
こんなこといつもは思いつかないのにいろんなことが頭に浮かんでくる。だからこそ浮かれているというのだろう。
自覚症状のある浮かれ具合だ。無自覚よりはましだろう。
このまま浮かれ続けていたい。
上空三千メートルまで浮かび上がりたい。
夏なんて嫌いだったのに、こんな浮かれ気分になれるのならずっと夏でいい。
太陽デバフ、かかってこい。
恋のバフで跳ね除けてやる。
ああこれは浮かれすぎ。調子に乗りすぎ。
後で思い返して顔を真っ赤して、闇へ葬り去りたくなるのだろう。なるほど、赤面は黒歴史へと変色するのか。
いったい「浮く」という言葉を何回使ったのだろうか。
今日一日単位で計算した場合、「浮く」という言葉の世界最多使用者であると自負している。
人生単位で見たら、一生を終えるまでの「浮く」の使用容量を超えているかもしれない。
そろそろ「浮」のゲシュタルトが崩壊してきたので、もう寝よう。




