王への報告②
レスティの御礼を聞くと、王様は奥の間へ引っ込んでしまった。
幸助一行も使用人に移動を促されたので、素直に従う。レスティは村という報酬に驚きを隠せないようだが、幸助を引きずり城からクルミカフェへ移動する。
「そんなに……急ぐなよ……」
幸助の訴えは届いているはずだ。しかし誰も気を使うことはない。
城を出たところでずうずうしくも馬車でクルミカフェに移動する気でいるようだ。そんなに急ぎたいのか。距離があるわけでもないのに。
そもそもこの馬車はクラトゥ村との往復のために王様が用意してくれたものだ。使わせてもらえるわけが……。
「使っていいらしいにゃ」
あったようだ。
せっかく頭がすっきりしそうだったのに、ここでまた酔いの補填が行われることになった。打ち上げが早くできるのであれば、女性陣は幸助に対しての配慮はないようだ。普段は「勇者様」と色目を使ってくるのに。
「打ち上げだにゃ。早くクルミカフェに行きたいにゃ」
「楽しみです」
城を出るとリアとトリストは緊張感が解けたのか、饒舌になっている。饒舌になるのはいいが、トリストは話すたびに幸助の肩を揺らす。酔っている幸助にはダメージになる。しかし抵抗する気力もない。ノーガード。
クルミカフェに着くころには幸助の酔い最高潮に達していた。距離があれば馬車の中で眠ってやり過ごすことができたのに。
席に着き飲み物を各々注文するが、幸助は冷水にした。本当は頭にぶっ掛けたい気分だ。
「それじゃあ」
「「「かんぱーい」」」
レスティの掛け声にあわせ、三人はグラスをぶつけ合う。
いつもマウントを取り合っている女性陣だが、今はかなり団結しているようだ。みんな笑顔で楽しそうだ。
「勇者様、一緒に乾杯しませんか?」
リアが優しく声をかけてくれるが、幸助はそんな気分になれない。
「いや……今は無理だ……。代金は報酬から払えばいい……。俺のことはいいからみんなで楽しんでくれ……。使いすぎるなよ……」
それだけ言うと幸助は力尽きる。
「それじゃあ遠慮にゃくいただくにゃ」
「申し訳ありませんが、そうさせていただきます」
「勇者様の分は今度ってことでいいわね」
幸助はがやがや打ち上げを楽しむ女性陣の中、一人眠りについた。




