討伐③
「どこから話そうか……そうだな、それじゃあ城で初めてリュジーアに会ったとき、どう思った?」
「変にゃしゃべり方だにゃって思ったにゃ」
それをトリストが言うかと幸助は思ったが、言葉にはしなかった。
「そうだよな。変なしゃべり方だと思うよな。俺もそう思った。そして嫌いになった。人との距離の取り方が間違っているだろう。しゃべり慣れていないのかなって思ったよ」
「そうね。私もあのテンションは苦手かしら」レスティが同意する。
「あと、生活用水が汚染されて、村人が弱っている割に元気な奴だなって思わなかったか?」
「言われてみればそうですね……肌つやもきれいでした」
「そこから俺は、リュジーアは本当に村人なのかと疑問に感じたんだ」
「あの初対面でそんなこと思っていたの?」
「ああ。だから調査をさせてもらったんだ」
「そんにゃこと考えていたにゃんて……」
「この世界は俺の常識が通用しない。だからいろんな可能性を検討しただけだ。魔法が使える時点で何でもありだからな。だから俺あの時、リュジーアが魔物の化けた姿かもしれないと仮定したんだ」
「変身魔法ですか」
リアが反応する。
「そういうのか?」
「はい。私達みたいな人にとっては取得するのが難しい魔法ですが、液状の魔物には簡単に使える魔法です」
「やはりそういった魔法があったか」
幸助は合点がいった。
「要はその変身魔法を使い、リュジーアに化けたのではないかと仮定したんだ」
「だから調査をしたの?」
「そうだ。まずはリア、君とは水質調査をした。実際に飲んでみて、俺は即死したよな? あんな危険な汚染水の村で元気にいられるわけがないと確信した」
「確かにそうだにゃ。水質調査の後の勇者様はへろへろだったにゃ」
思い出しても辛い、嫌な体験だった。死ぬというのは恐ろしい。それを身をもって体験した。しかし貴重な体験であるとは思う。死んだことを語れるなんてありえないのだから。
「トリスト、現地調査をしてもらった理由もあるぞ」
幸助がトリストに目をやる。
「子供とお年寄りについて確認してもらったよな。あれは身体の弱いに人が生きている可能性が低いと見ていたから確認してもらったんだ。しかし報告を聞く限り、何てことなかったようだった。そこから村人全体が魔物の変身という可能性が見えてきた」
「そういうことだったんだにゃ! あのまま突っ込まにゃくてよかったにゃ」
単身で乗り込んだら多勢に無勢、返り討ちにあっていただろう。ちゃんとお使いの調査だけで帰ってきてくれてこちらとしてもよかった。
「そしてレスティ、君と一緒に調べていた資料はこの作戦を行う上で重要だった。まずは最適な場所を見つけるということ。今燃えている教会はレスティが調べてくれたおかげだ」
「あ、ありがとう。まあ私には簡単な調査だったわ」
レスティが両手を腰に当て胸を張る。
「そして俺は住人台帳を見ていただろう? あれは村人が魔物の変身だった場合、台帳とずれが生じる可能性があると思ったから覚えていた。実際、台帳の人数より避難した村人の方が多かった。それなのに俺が祭壇で周りを見て変わったことはないかと聞いても、何も反応はなかった。これで全員が村人に変身した魔物だと確信した」
「王様との謁見のときにここまで考慮していたってこと?」
「ああそうだ。しかしあの時は魔法石の結界のことは知らなかったからな。知っていたら考慮していなかったかも知れない。結界の中に魔物はいないと仮定してしまったら、この答えにはたどり着かなかっただろう。王への報告のときに結界が破られたことは伝えた方がいい」
「そ、そうですね」
「初めてのことでよくわからなかったけど、余計な手間をかけずに最小限のやり方で、且つ安全に魔物の討伐ができてよかった」
「「「……」」」
三人が言葉を失っている。




