出発③
「勇者様は知らなかったのですね。人以外の生き物は通れないようになっています」
「そうなのか。魔法で守られているのか……」
幸助が眉をひそめる。
「じゃあ何で馬車は通れた?」
「ど、どうしてでしょうか……」
リアが口ごもる。
「人間の俺とリアは通れるだろう。トリストは猫族であるが猫ではなく猫に近い人間ということで人に該当するだろう。ハーフエルフのレスティも容姿は同じようなものだから通れても疑問は抱かない。だがなぜ馬が通れた?」
「そうね、不思議ね」
レスティも首をかしげている。
「本当に魔物を通さないのか?」
「それは保障できるわ。今まで結界が魔物に破られたことはないもの」
「それじゃあ信用するほか無いか」
魔法とは都合のいいものだ。よくわからないことは「魔法だから」で済ませられる。
「そういえば、リアの家にもついているよな、この魔法石」
「え、あ、は、はい。そうですね。気がついていたのですか?」
「あれが魔法石だとは今まで知らなかったから飾りだと思っていたけど」
「そうなの? 珍しいわね、家に魔法石で結界を張っているなんて」
「わ、私は冒険者ではありますが、攻撃魔法は使えません。万が一のときに弟を守るために用心して結界を張っているのです」
「そうにゃのか。それはすごいにゃ」
「確かにすごいわ」
トリストとレスティがリアの結界魔法に感心している。
「それはすごいことなのか?」
「ええ。結界魔法を使えることがすごいのよ。あまり実践向きじゃないから覚える人も少ないけど、簡単な魔法ではないわ」
「そうなのか。リア、すごいじゃないか」
「あ、ありがとうございます」
リアが照れているのか節目がちにお礼を言う。
「じゃあこの村の結界は誰が張ったんだ?」
「ルビィ王女よ。王家は領地下の住人を守るから王家なのよ。結界魔法は王家の得意分野よ」
「なるほど。理に敵っているな」
幸助は大きくうなずく。
「レスティ、それは王様から預かった資料に載ってたのか?」
「ええ載ってたわ。なんていう名前の資料だったかは忘れたけど、あったはずよ」
幸助の目の通していない資料に記載があったようだ。一応全部チェックしておけばよかった。
「ありがとう。帰ったら勉強しておく」
「勉強だにゃんてえらいにゃ」
そんな話をしながら歩いていると、村の真ん中に到着したようだ。寂れた噴水が申し訳ない程度に水を流している。
この水も汚染されているのだろうか。むやみに近づけない。
準備はしてきた。後は実践あるのみ。




