表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第一章
43/141

出発②

「今日は曇りですね」

 リアが外を見て言った。


「本当だったらきれいな山々が見えるのよね」


「そうなのか」

 幸助は横になってから少しくらいは話ができるようにはなった。



 馬車は標高の高いところを通っている。その先に見える景色のことを言っているのだろう。確かに曇ってる。景色がいいとは言えない。



「残念だにゃ」


「残念ではないだろう。本来なら見える景色を思うことも一興だぞ」


「どういうことだにゃ?」


「花は咲くのを待っているときも美しいものだ」

 幸助がしみじみと言う。


「わかります。咲いているときはもちろんですが、きれいに咲くことを思うときも愛くるしく美しいです」

 目を輝かせるリア。



 リアは植物を栽培しているからそういう気持ちもあるのだろう。



「そうかにゃ?」


「というより、そういう想像ができる人類の思考が美しいと思う」


「なんだか詩的で哲学的ね。まさか勇者様からそんな話が聞けるとは思わなかったわ」


「こういうのも一興だろ?」


「よくわからにゃいにゃ」


「目に見えているものだけが全てじゃない。それだけで判断してはいけない。ちゃんと本質を見極める必要があるってことだ」


「そうね、それは大事ね」


「本質を見るのですね。勉強になります」


「にゃんでもいいにゃ」



 結局最後までトリストには伝わらなかったが、わからないままの方がトリストらしくていいのかもしれない。



「それじゃあここで少し休憩にしよう」


 馬車酔いする幸助の要望に応え、途中に十五分の休憩を五回入れたため、予定より大幅に遅れてクラトゥ村に到着した。


 幸助以外の三人は休憩で昼食を摂っていたが、幸助は吐いてしまう恐れがあったので、何も食べなかった。


 馬車が村のアーチを抜け村の中に入る。停車場に馬車を停め幸助一行は村の土に足をつけた。


 クラトゥ村は入り口にアーチはあるものの、キュオヘルムのように壁はおろか柵ですら囲まれてはいなかった。



「レスティ、この村はキュオブルクと違って壁に囲まれていないようだけど、魔物に襲われないのか?」


「そんなことはあり得ないわ。あれを見て」

 レスティが指をさして言った。

「あの木に紫に光っている石がぶら下がっているでしょ? 魔法石といって、あれがこの村を囲って結界を張っているのよ」



 よく見ると、等間隔で木に紫に光る石がぶら下がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ