資料調査②
「そういえば勇者様、ギルドへの登録は済んだのかしら?」
「ああ、この間言われたとおり行ってきて登録したよ」
幸助はペンを置き、一度伸びをする。
ギルドについてはクルミカフェで三人から聞いていた。
それまで存在を知らなかったので仕方がないことなのに、なぜ登録していないのかと三人から執拗に責め立てられた。
ギルド登録の必要性を説かれたが、勇者として仕事をしなくてはいけなくなりそうだったので、気が進まなかった。
しかし理不尽な糾弾は二度と味わいたくなかったので、渋々登録してきた。
「えらいじゃない。ギルドカード見せてくれる?」
「え、嫌だ」
「なんでよ、いいじゃない。ちょっとくらい」
「え、嫌だ」
「本当に登録したの?」
あまりにも見せるのを拒むので疑い始めたようだ。
「ちゃんと登録したよ。あ、そうそう、職業の欄なんだけど……勇者って入れたけど、レスティは魔法剣士って入っているのか?」
「そうよ。リアは治癒士、トリストはシーフって入っていると思うわ。それがどうしたの?」
「いやあ、職業欄が自己申告制だったから、ギルドに登録って言っても結局自称するのと変わりないなって思ったんだ」
「まあ確かにそうね。ただ冒険者っていうのは実力至上主義だから、詰まるところ強いかどうかで判断されるわね。職種に関してはパーティメンバー同士の相性などの参考資料程度かもしれないわ」
「それじゃあ極論、職業欄に農家って書いても戦闘の実力があれば問題ないってことか」
「理論上はね。ただその場合は冒険者ギルドではなく商業ギルドへ登録するでしょうけど」
「そんなギルドもあるって言ってたな」
自分には関係ないと思って大して気に留めていなかった。
「たとえば冒険者ギルドで勇者として登録しているけど、商業ギルドで農家として登録することも可能なのか?」
「可能よ。私は商業ギルドではアパート管理経営で登録しているわ」
レスティの前の夫は日本ではマンション管理会社の社員だったらしく、こちらの世界でもそのノウハウを活かしていたらしい。今はレスティと息子二人が引き継いでいる。
この街のどこかのアパート数棟がレスティの所有物件で、その家賃収入がレスティの主な収入源となっている、実にうらやましい不労所得だ。これがレスティが上流階級である所以だ。
「なるほど。今は特にないが商業ギルドへの登録も頭に入れておこう」
「うんうん。そのときはぜひお手伝いさせてちょうだい」
レスティはまだまだ儲けたいようだ。
「わかった。ちなみに今までの勇者はどんな職業で商業ギルドに登録しているんだ?」
「そうね……あまり詳しくはないけれど、料理人や卸業者や薬剤師なんかがいたわね。あ、そうそう。一時期多くの勇者様が農家になったことがあったわ」
「そうなのか」
勇者が農家とは意外だ。だからこそさっき例で農家と言ったんだが……。




