資料調査①
□◇■◆(幸助)
夕方、幸助はレスティの家にいた。
「これ全部覚えるつもりなの?」
レスティとテーブルに向かい合い、王様から借りた資料を見ていた。
資料は城から持ち出せないかと思ったが、融通を利かせてくれ、レスティの家に運んでくれた。
ただし、何度も持ち出し厳禁の注意を受けた。それくらいはわかっていたし、持ち出すつもりもなかったので、注意だけで貸してくれてた王様には、ただただ感謝だ。
ここ最近の分でいいと王様に伝えていたが、「不備があるといけないのぉ」とか何とか言って一年分の帳簿が届いていた。かなりの量になったが、レスティの家は広いので、問題なかった。
「全部じゃなくていいと思うが、ここ最近の分は覚えるつもりだ」
「いくら私が二人より頭がいいからと言っても、こんなに覚える必要はあるのかしら?」
さり気なくアピールを織り交ぜてくるところがレスティらしい。
「無駄になる部分もあるかもしれないけど、被害を最小に抑えられるかもしれない」
「わかったわよ……。私もただ剣を振るだけじゃないんだから」
レスティは不服そうな顔をしているが、渋々承諾したようだ。
「それじゃあレスティはクラトゥ村の地図を見て、地形とか村の造りとかを覚えておいてくれ」
「はあ……なんだか私の知っている冒険の仕方とは違うのよね……」
「それを覚えるくらいはレスティには簡単だろう」
幸助は立ち上がり、レスティのそばへ移動する。
「わかったわよ……はあ」
「レスティ、君ならできるよ」
ため息をつくレスティの肩に手を乗せる。
「あ、当たり前でしょ。こ、こんなの教養のある私には簡単すぎるわ」
「それなら安心だ。レスティに頼んでよかったよ」
幸助はレスティの肩から手を離し、今度は頭にぽんぽんと乗せた。
「ちょ、ちょっと集中できないじゃない。自分の席に戻ってよ」
「わかったよ」
レスティが照れているので、幸助は自分の席に戻り、再び資料に目を通し始めた。
本のページをめくる音とペンを走らせる音だけが部屋に鳴り響いている。
その沈黙をレスティが破った。




