現地調査②
「それにしてもトリストは小さい身体なのに本当にスタミナがあるよな」
クラトゥ村までは普通、馬車で片道四時間だ。しかしトリストは現地調査込みの往復を約二時間半で済ませてしまった。
「小さい身体は余計だにゃ」
トリストは口より大きい肉にかじりつきながら反抗してきた。
「それじゃあ、かわいい顔して、のほうが良かったか?」
「か、からかうにゃ!」
冗談を交えながら食事をする。
みんなでランチをしているときは、女性陣だけが主にしゃべっていて、幸助は相槌とたまのツッコミくらいしか発言がないので、自分でも珍しいお昼だと感じている。
「シーフってどんな戦い方をするんだ?」
「勇者様はシーフに興味があるのかにゃ?」
「興味……まあそうだな。知的好奇心ってやつだな」
「まあいいにゃ。シーフのことを教えるにゃ」
自慢げに腕を組むトリスト。
「シーフは接近戦を得意とするにゃ。それで戦闘をしにゃがら相手のアイテムを奪うにゃ」
「それがシーフといわれる所以か」
「そうだにゃ」
「でも戦闘中に奪う必要ってあるのか?」
「どういうことにゃ?」
「わざわざ戦闘中に盗らなくても、相手を倒してから懐を探ればいいんじゃないかってことだよ。リスクを犯してまで盗ることないだろ。それとも相手が生きているうちじゃないと手に入らないものとかがあるのか? そういったものはちょっと思いつかないけど」
「べ、別にいいにゃ!」
トリストが大きい声を出す。
「倒せそうにない相手からアイテムだけを奪いたい時があるにゃ!」
「そんな時があるのか?」
「あるにゃ! お金に困っているときとかだにゃ!」
「なるほど……胸を張って言うことでもないと思うが……まあそれなら理由はわかった」
理由はわかったが、疑問も出てくる。
「ってことはお金に困らなくなったらシーフでいる理由がなくなるな」
「そんなことにゃいにゃ! 他にもたくさんいいところがあるんだにゃ! いっぱい理由があるんだにゃ!」
「そうなのか。教えてくれ」
「トラップを設置したり解除したり、アイテムや敵の気配を察知したり、色々スキルがあるにゃ!」
「スキル? そんなのがあるのか」
よくわからない言葉だ。スキルという言葉と意味は知っているが、この世界におけるスキルという概念がわからない。
「勇者様はスキルも知らにゃいのか」
「ああ。初めて聞いた」
「簡単に言えば技だにゃ」
「……簡単にっていうか、それはただ言い換えただけだよな」
これだけの情報では幸助の知っているスキルの概念だ。
「うるさいにゃ! 黙って説明を聞くにゃ!」
「ごめんごめん」
「説明するにゃ!」
トリストが仕切り直して説明する。
「スキルは職業ごとにあるにゃ。たとえばシーフは、【気配察知】や【セットトラップ】にゃんかがあるにゃ」
さっき言っていたことをそれっぽく言い換えただけだが……まあいい。
「シーフもなかなかすごいじゃないか。それを覚えるためにはどうしたらいいんだ?」
「実践を積むか、トレーニングするにゃ」
「ふむふむ。勉強になるな。トリストもなんだかんだちゃんと冒険者としてやっているんだな」
「わ、わかってくれたらそれでいいにゃ」
トリストが照れている。




