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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第一章
35/141

現地調査①

  □◇■◆(幸助)



 お昼過ぎ、幸助はトリストの家にいた。


 調査中はみんなとのランチを中止にしているため、リアの家にから直接トリストの家に来ていた。


 トリストは現地調査のため不在。その帰りを待っている。


 トリストは幸助から頼まれていたチェック表に沿って状況を把握する役割をこなすため、朝イチでクラトゥ村に向かってもらっていた。


 本人曰く、片道一時間くらいとのことだが、幸助は半信半疑だった。



「ただいまだにゃ」



 トリストが帰ってきたようだ。少し息が上がっているようだ。



「おかえり」

 幸助がトリストを出迎える。


「こんにゃことして本当に役に立つのかにゃ?」

 トリストは無造作に靴を脱ぐ。


「ああ。情報は多いことに損はない」



 テーブルには幸助が用意した食事が並んでいた。



「このまま突っ込んで魔物を倒したかったにゃ」

 トリストが肉をつまみ早速ほおばる。


「無鉄砲な行動はだめだ。ちゃんと考えて行動しなければ余計な被害が出るかもしれない」

 幸助も食事をつまむ。

「というより、シーフがそんな特攻的でいいのか?」


「さ、さすが勇者様だにゃ。冷静だにゃ」



 素直なトリストはすぐに納得してくれたが、理解しているかは不明だ。


 幸助はトリストを席に着かせ、ナイフとフォークを手渡す。いただきますと声を合わせ、二人は食事を始める。



「それじゃあ食べながらでいいから、クラトゥ村の様子の報告をしてくれ」


「そう……もぐもぐ……だにゃ……ごっくん……村の人たちは……もぐもぐ」


「ごめんトリスト。確かに食べながらでいいって言ったけど、しゃべるときは口を空にしてくれ」



 伝えるときはちゃんと考えてからにしようと幸助は決意した。



「わ、わかったにゃ……ごっくん」

 口を広げ中は空ですよと幸助にアピールしてから、トリストは話し始める。

「村の人たちは、大変そうだったにゃ」



 言葉が続くかと思ったがそれだけだった。全くもって中身のない報告だ。口の中と同時に報告の中身も空にしたのだろうか。



「それじゃわからないよ……。もっと詳しく教えてくれ。チェック項目に沿って言ってくれればいい」



 やはりトリストにチェック項目を渡しておいてよかった。



「わかったにゃ。まずは、えーっと……。村の様子について……男の人が数人いたにゃ。村を見回っているようだったにゃ」

 骨付き肉にしゃぶりつき、一旦中断。

「二つ目は、お年寄りや子供について……。家で寝ていたにゃ」



 メモを見ながらまじめに報告をするトリスト。案外しっかりタスクをこなしてくれたようだ。



「あ、そうだったにゃ! ビンに川の水を入れてきたにゃ」

 鞄から水の入ったビンを出し、自慢げに見せてくるトリスト。


「あ、ありがとう、トリスト。この水は毒が入っているから、テーブルの上には置かないでくれ」

 すぐさまビンを没収する。

「後でリアのところに持って行って、リュジーアがこの間持って来てくれたものと同じか調べてもらおう」


「そうだったにゃ! 食べ物にかかったら大変だにゃ!」

 焦るトリスト。

「それにしても水質調査の後の勇者様はふらふらににゃって大変だったにゃ。レス姉も不安だったって言ってたにゃ」


「心配かけたな。もうああいった無茶なことはしないようにする。それじゃあ、お詫びに俺の分の肉をあげよう。食べていいぞ」

 実際はおなかがいっぱいなだけだが、恩着せがましく肉を渡す。

「残りの報告は後で聞こう」


「わーいだにゃー。じゃあ勇者様には僕ちゃんのこの野菜をあげるにゃー」

 トリストが野菜を幸助のお皿に移す。


「おい、トリスト。それは野菜を食べたくないだけだろう。どさくさに紛れて嫌いなものを俺に押し付けるなよ。しかも恩着せがましく……まあそれはいいとしても……」

 幸助にはトリストを咎める権利はなかった。

「とにかく、ちゃんと食べなきゃだめだぞ。そういうことをするから子ども扱いされるんだぞ」


「にゃ! 僕ちゃんは立派な大人の女だにゃ!」



 右手にナイフ、左手にフォークを持ってそれを振り回しながらにゃーにゃー言っている。言葉に行動が伴っていない。



「落ち着いて食べろよ、トリスト。美味しいご飯が冷めるぞ」


「にゃ!? それは困るにゃ」

 トリストは目の色を変えてばくばく食べ始めた。

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